準備……完了! byロア・グッドール
今回は番外編という位置づけなので読まなくても進行上なんの問題もありません。
それでも読んでほしいな~( ;∀;)
僕はこの世界に来てから自分の価値を完全に見出した。
自分の価値を見出したことで僕はかねてより温めていた事がある。それは人を驚かせる事。以前いた世界ではよく芸能人が騙したり騙されたりするテレビ番組が放送されていて僕も芸能人に憧れがあったため、いわゆる『サプライズ企画』をやってみたいと思っていた。
騙される側というものはある意味では注目を集める役で僕の中では芸能人の一つのステータスであるような気がしていた。この世界でもサプライズ企画の番組はあるがほとんどが女性コメディアンである。それは
『騙される』というのはある意味『恥をかく』ことでもあるし、もしそんな事をして事務所唯一の男性タレントが怒り始めたら痛手を被るのは事務所なのだ。なので男性タレントにそういった企画を仕掛けるのはとても慎重にならざるを得ないのだ。
あらかじめ企画の内容を本人に伝えるいわゆる『ヤラセ』などを行えば許可も出すかもしれないがそれでは番組制作側も面白みに欠けるという事もある。
僕は一度は騙されてみたいと考えているが、周りの大人たちは僕の扱いにとても慎重だ。
だから僕は『騙される側』は無理でも『騙す側』ならいけるだろうと思い今回の企画を持ち込んだ、と言ってもテレビなどで放送するものではなく親しい間柄で行い楽しむ企画だ。
今回の企画の流れは『朝起きると異性が隣で寝ている』というシンプルな形で驚かし、そこに他人が登場することでさらに混乱させるという流れだ。
この企画を面白くするにはターゲットが真面目な人であるのが好ましいと思いソフィアさんを狙う事にした。シンディさんだと開き直って慌てたり驚いたりしないかもしれないと思ったからだ。
そして、シンディさんにこの企画を話し協力をしてもらう事にした。
まず、どうやってソフィアさんにぐっすりと眠ってもらうか考えているとシンディさんが「そう言えばソフィアはあんまり酒に強くないし、酔うと眠りだすよ」と言っていたのでシンディさんにささやかな飲み会を用意してもらった。この飲み会ではソフィアさん以外の人も集め、なるべく怪しまれない様に振る舞った。
僕もこの飲み会に顔を出した。近くのバーに皆を集め賑やかに大人たちはお酒を飲んでいる。
「おや~ロア君も来てくれたんだ~ありがとうね~」
シンディさんが僕に話しかけてきた。勿論シンディさんはこの飲み会に僕が参加するのは解っている。
「ロア君も一杯どうだい~」
「ダメですよ。シンディさん僕はまだ未成年なんですから」
「そんな事言わないでさ~一口だけ!一口だけだから~」
「先輩!ロア君に絡むのは止めてください。ロア君は来てもらうだけでも有り難いのにしつこくしたら可哀想です」
僕とシンディさんのやり取りを隣で見ていたソフィアさんが口を挟む。
「あんだよ~それじゃあソフィアがロア君の分まで飲んでみろや~」
シンディさんがソフィアさんのグラスに少し強いお酒を注ぐ。
「良いでしょう。私がロア君の分まで飲んで見せますよ」
「おいおい、言ってくれるじゃ~ないの」
ソフィアさんは自分のグラスに注がれたお酒を飲み干す。
「お!口先だけじゃないようだな~」
「すごーい。ソフィアさん女らしくてカッコいいです」
僕はシンディさんの言葉に便乗するようにソフィアさんを煽る。すると、ソフィアさんは気を良くしたのか割と速いペースで飲み進める。
飲み進めるソフィアさんを尻目に僕とシンディさんが目を合わせ作戦は順調である事を確認する。
「こんなの余裕ですよ」
ソフィアさんが胸を張り大したことがないというアピールをしている。
「それじゃあ僕もお酒注いでみてもいいですか?」
「勿論良いよ!」
僕はシンディさんから受け取ったボトルを持ってソフィアさんのグラスに傾ける、ソフィアさんは注がれるお酒に笑みを浮かべ口へ運ぶ。
「いやー美味しいなーロア君にお酌してもらうといつもより美味しく感じるよ」
「そんなことないですよー」
僕とシンディさんはさりげなくお酒を勧め続け数時間後、案の定ソフィアさんはウトウトと眠そうな顔をし始めた。
僕とシンディさんは再び目を合わせ作戦を次の段階へと移す。
「あの……そろそろ僕は部屋に帰りますね」
「あ~んもう帰っちゃうの~」
「楽しいですけど、もう眠たくなってきたので」
シンディさんが本心を隠すためいつも通りの反応を示す。勿論これも作戦の内である。
「一人で帰れる?私が送っていくよ~」
「それでしたら私が行きますよぉ。私も眠くなってきたのでぇ」
ソフィアさんが立ち上がる。まるで体の軸が安定していない様にフラフラと左右に揺れている。
「おいおい~大丈夫か?フラフラじゃん。そんなんじゃ途中で倒れるよ~」
「大丈夫ですぅ。こう見えて頭はハッキリしてますからぁ」
「途中で倒れたらロア君が大変だから言ってんの」
「それじゃあソフィアさんが僕を送って、シンディさんがソフィアさんを送ればいいじゃないですか?」
「なるふぉど。素晴らしい提案ですぅロア君」
ソフィアさんは大分出来上がっているようなので、僕たちは宴の席を抜け出す。
僕たちはバーを出てホテルの部屋に向かう。
「ソフィアさん大丈夫ですか?あともう少しですよ」
「そんなにぃ心配しなくても、大丈夫だよぉロア君」
並んで歩くソフィアさんが僕の肩に腕を回す。いつもならこんなスキンシップはしないのにお酒の影響なのかいつもより大胆な行動をとるソフィアさん。
僕たち二人の後ろを歩くシンディさんは拳を握りしめソフィアさんに殴りかかろうとしている。それでは計画に支障が出てしまうので僕はシンディさんを制止させる。
「まあまあ、シンディさん落ち着いて……ね?」
僕は後ろを振り向き軽くウインクをする、するとシンディさんは一瞬固まりニヤニヤとだらしない顔になる。納得してくれたようだ。
「さあ着きましたよソフィアさん。中に入りましょう」
「はーい」
ソフィアさんがカードキーを取り出し部屋のロックを解除し僕たち三人はソフィアさんの部屋へたどり着いた。
「ちゃんとベッドで寝ないと風邪引いちゃいますよ?」
僕とシンディさんはソフィアさんがベッドで寝られるように誘導する。
「ほら~さっさとベッドに行きなさいよ~」
「先輩、すいません。眠気が限界で……」
「しょうがないわね~」
ベッドに倒れ込んだソフィアさんの靴を脱がすシンディさん。
ソフィアさんの意識が遠いていき完全に眠っている。
「眠ったようね」
シンディさんは眠っているソフィアさんの衣服を脱がし始める。僕はソフィアさんが脱がされるのを見るのは何か悪いような気がしたので目を逸らす。
「とほほ~、何で私が女の服を脱がさなきゃいけないのかしら……」
一通り脱がし終えベッドに寝かせ上に掛布団を敷く。
「よしっ!あとは小道具の作成だね」
「え?何を作るんですか?」
「リアリティの追及をするために必要不可欠なモノがあるのよ」
シンディさんは洗面所でコンドームと何やら白い粉の入ったビニール袋をポケットから取り出す。
「あの……それは……」
「ん?これ?これはね片栗粉だよ。このゴムの袋に粉と水を入れてよくかき混ぜると……その……あの……リアリティが増します」
シンディさんは子供の僕に教えるのが気恥ずかしいのか説明を濁しながら疑似使用済みコンドームを作成していた。僕も深くは訊かずシンディさんの説明を受け入れる。
シンディさんはティッシュを二枚ほど取り作成した疑似使用済みコンドームを包み電気スタンドが置いてある寝室の机にそれを置く。
「よしっ!これで完成!こっちは準備オッケーだよ」
「ありがとうございます。僕もカメラのセットが終わりました」
僕はソフィアさんのリアクションを見るための隠しカメラのセッティングをしていた。
シンディさんとカメラの動作確認をチェックしサプライズ企画の準備が一通り終了した。
「あとは僕がベッドの中に入って朝まで待つだけですね」
「でも大丈夫?ソフィアが起きる朝まで結構時間あるから~ひと眠りした方がいいんじゃない?」
「それもそうですね仮眠を取りましょうか」
僕とシンディさんはソフィアさんが寝ている寝室から出てリビングのソファに横になった。
スマートフォンの目覚ましを早朝にセットし音量を消しバイブレーション機能のみ作動するようにした。
数時間後僕たちは仮眠を済ませ最後の準備に取り掛かる。
僕はシンディさんが部屋から出ていくのを確認しチェーンロックをつけソフィアさんの眠る寝室へと向かう。
僕も服を脱いでベッドに入り、最後の一枚は布団の中で脱衣し床に落とした。
別の部屋ではシンディさんが隠しカメラの映像を見ながらソフィアさんが起きるのを待っている。
そういえばソフィアさんは今裸で、僕は裸の女性と同じベッドに寝ているのか。
サプライズ企画を仕掛ける興奮とは別の性的な興奮も湧いてきてしまう。




