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朝起きると大変な事が起こっていました。byソフィア・フランソワーズ

色々あって投稿が遅れて申し訳ございません。


まだ読み続けてくれる人に感謝しています。

午前九時、私はホテルのベッドで目を覚ました。今日はいつもより遅く目覚めたのは束の間の休日だからである。

海外のロケ―ション撮影の合間、天候の関係で丸一日休みになり昨晩はスタッフや出演者で飲み会をして飲み過ぎた事も関係しているのだろう。

私は身体を起こし、まだ少し眠気が残っているがこれ以上寝ていたら折角の休日が寝ているだけになってしまう気がした。それはちょっと勿体ないと思った。


そんな事を考えていると、私は違和感を覚えた。

ベッドに一人で眠っていた筈なのに隣を見ると一人の見覚えのある少年、ロア・グッドール君が眠っていたのだ。一体何が起きているのかと私は考えた。

ロア君は何故私のベッドで眠っているのか?摩訶不思議である。私とロア君は仲が良いのは確かだと思うが『一夜を共に過ごす間柄か?』と訊かれると『そうではない』と断言していいだろう。

では何故となりで眠っているのか?真実は闇の中にあるので引っ張り出さない方向で行きたいところだ。

すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てながら無垢な少年は深い眠りについているようだ。

無垢であるかどうかは昨晩の私の行動で決まってしまうのだが、如何せん記憶がなくこの少年が無垢なのかどうかは解らない。

目の前の状況を見る限りこの少年は無垢ではない可能性が高く、先ほど「無垢な少年」と決めつけたのは私の希望的観測が言わせてしまった事例で真実を知る事に恐怖を感じている。

何故なら隣で眠っている少年は少なくとも上半身が裸であり、ベッドの脇には脱ぎ散らかした衣服が落ちている。その中には私の衣服も混じっている。

私はベッドに入るときは裸で入る事も多いのだが今回ばかりは意味合いが違ってくる。

この状況を打開するには冷静さと慎重さが求められる。私はとりあえず行動に移る。


まず、顔を洗おう。話はそれからだ。私はベッドの脇に落ちている自分の下着を手に取り、身に着けてから洗面所に向かう。

顔にかかる水は冷たく、私の頭に冷静さが取り戻されていくような感覚を得る。


「よしっ!」


私は鏡に向き合い自分に活を入れこの状況を整理しはじめる。そして三つの可能性があることに気がついた。

一つ目は私がロア君を合意のもと部屋へ連れ込んだ可能性。私の中の獣が我慢できずにロア君に襲い掛かり己の欲望を解放させてしまった。

それでもロア君との間に合意があれば私はロア君と結ばれ、警察に逮捕され役者人生が終わる。

二つ目はロア君との合意もなく無理やり襲ってしまった可能性。これは出来るなら考えたくはないが、私はロア君に嫌われ警察に逮捕され最終的にロア君の母親の手によって人生が終わる。

三つめは全て夢だった可能性。私の中にいる獣が見せた夢である。

私の第一希望としては三つめであって欲しい。ロア君をものに出来ればそれこそ奇跡。神の御業。女として最大の功績である。

だが、それは余りに危険でいくつもの障害を乗り越えた先にある栄光だ。

いずれは目指すべき山ではあるが今は違う気がする。もっと何というか順序というものが必要だ。

私に今できる事はまずは状況の確認だ。一体どんな経緯でこうなったかを確かめなければならない。

まずは、ロア君が本当に私のベッドで寝ているのか確認せねばなるまい。

どうか幻であってくれと願いながら私はもう一度自分のベッドに戻る。

間違いなくいます、ぐっすりと眠っている可愛い男の子が。

夢では無い事が判明しました。後は『した』のか『してない』のかである。『何を?』は言葉にするのも恐ろしい。

私はロア君の枕元に近づき相手の出方を窺う。起こして訊いたほうが確実ではあるが怖くて中々踏ん切りがつかない。

ふと枕元の机に気になるモノを見つけた。電気スタンドと一緒に机に置いてあるそれは、丸めたティッシュのようでティッシュの中から半透明の薄いゴムのようなものが見えていた。

私はそのティッシュを恐る恐る広げると中に入っていたのは使用済みのコンドームであった。中には白濁した液体が入っておりコンドームの口は中身が出ないよう結んである。

私は開いた口が塞がらず、そのコンドームを人差し指と親指で摘み中の液体を観察した。初めて見るその液体があまりに神秘的で目が離せなかった。


これはゴミ箱に捨てていいものかどうか私は悩んだ。ホテルのゴミ箱に捨てて万が一誰かの目に着いたら一体どうなるのか解らなかったからだ。

だがこのコンドームを処分しなければ証拠が残ってしまう。一体どうすればいいのか、あたふたしていると部屋のドアをノックする音が木霊する。乱暴なノックの仕方で叩いた人物がどんな感情なのか予想してしまう。恐らく好意的な感情ではないだろう。

威圧的なノックの仕方に聞こえた。私の心臓は跳ね上がり急激に心拍数が上昇する。


「一体誰がノックしている?まさか警察?だれかに通報された?誰に?」


私は色々な疑問を頭の中で思いついたが一目散に部屋のドアへ向かう、それは私がドアのカギを閉めたかどうか記憶がないからだ。

カギを掛けてなければドアの向こうの人物が扉を開けるよりも速くカギを掛けなくてはならない。

案の定カギは掛かっておらずドアが開き始めるが幸運なことにチェーンロックはしており、ドアは数十センチほどの隙間で止まった。

私はドアの空いた隙間から誰が叩いたのか見る事が出来た。シンディさんだ。


「おや?今起きたの?」


「は、はい。たった今起きました」


「なんだよ~。今日はオフだからショッピングに行こうって約束したでしょ~」


「そ、そうでしたっけ?すいませんあの……」


「しっかりしてよね~これからロア君も誘いに行くんだから~」


え?ロア君も誘う?そんな聞いてないぞ。


「じゃあ準備しといてよ。その間にロア君の部屋へ行って誘ってくるから」


「あ!いや~それは~」


「何?どうしたの?」


不味い。それは非常に不味い、ロア君の部屋へ行っても本人はいない。いないと解ったらこの先輩はどんな行動をする?

ロア君の所在を訊いて回るだろう。一番考えられるのはキャストのスケジュールを管理しているプロデューサーのリンダさんだ。

当然リンダさんもロア君の所在は解らない。なら次は監督に話が行く事になり、もちろん監督もロア君の所在が解らず。今度はスタッフ全員でロア君の捜索が始まってしまう。

捜索が始まればホテルの部屋を一つ残らず調べつくすだろう。こうなったらもう逃げられない。最悪の状況になる前になんとかせねばならない。

まずロア君に起きてもらい部屋へ帰ってもらう。シンディさんがロア君の部屋へ向かった後になるがそれでもいい。ちょっと部屋を空けただけという口裏合わせをすれば大事にはならない筈だ。


「わ、解りました。準備します」


先輩には早々にここから離れてもらうのが良いだろう。先輩がいなくなったらロア君を起こして部屋へ帰ってもらう、何があったかは今は二の次だ。


「おはようございます。ソフィアさん」


私の背後で少年の声が聞こえた。その瞬間自分の身体が凍り付いたように硬直してしまう。

私は恐る恐る後ろを振り返ると、そこには素肌にバスローブを来たロア君が立っていた。

大人用の私が着るために用意されたバスローブを着用しているため裾や丈がダボダボなのが愛くるしい、ではなく私はロア君を起こすつもりだが今ではない。


「お、おはよう……」


私はつい反射的に挨拶を返すが語尾が蚊の羽音のようなか細い音になっていく。私は扉に向かい直しシンディさんにロア君の声が聞こえたか確認する。


「ねぇ今ロア君の声がしなかった?」


シンディさんの殺気だった表情がドアの隙間から見え、普段と比べて音量は小さめだがはっきりとした声だった。


「い、いや~それはないと思いますよ」


「いや、したよ。ちょっとドアを開けてくれるかな~」


「そんな訳ないじゃないですかちょっと準備するんでドアを閉めますよ」


私はドアを閉めようとすると何かに引っかかったようにドアが閉じなかった。よく見るとシンディさんがドアの隙間に足を挟み込んでいた。


「せ、先輩?ドアが閉じないので足をどけてください」


「何を終わらせようとしているのかな~?」


空いている隙間から手を出しドアのふちを掴むシンディ先輩


「こ、困ります。そんな強引な!」


「ドアを開けたまえ。警察沙汰になりたくなければな」


私は「ここまでか……」と諦めチェーンロックを解除する。


ドアがゆっくりと開きシンディ先輩が私の部屋へ入ってくる。私はそれを横目で見るしかなかった。


シンディ先輩がバスローブ姿のロア君を見る。


「これは一体どういう事かな~?」


「私にも一体何が何なのか解らなくて……その……」


「そりゃそうだろうよ。ロア君はこっちの仕込みなんだから」


「へ?それってど、どういう事ですか?」


「えへへ、テッテレ~サプラーイズ」


ロア君が大げさに両手を広げて発表した。私の疑問の答えにロア君は答えたようだがいまいち理解が追い付かなかった。


「これはソフィアさんを驚かせようとしたサプライズ企画でーす」


なるほど、私を驚かせる為にロア君はベッドにいたって事ならば私は無罪だ。


「そ、それじゃあ」


「全部嘘でーす」


「なんだ~よかった~」


私は床にへたり込んでしまった。驚きと安堵で足腰の力が抜けていってしまった。


「ねぇ驚いた?ねぇ驚いた?私も手伝ったんだよ。ねぇねぇ~」


シンディさんが私の肩を前後に揺らしながら感想を求めてくる。


「驚きましたよ!ていうか先輩いくらなんでも悪質ですよ!何考えてるんですか!」


「え?これ私が考えたんじゃないし~」


先輩は他人事のように飄々としている。


「ふざけないでください!先輩以外に一体誰がこんな事考えたんですか!?」


「すいません。僕が考えました……」


控えめにロア君が手を上げる。


「えー!?どういう事?じゃああのコンドームもロア君が用意したの!?」


ロア君が用意したというならそれは自前な筈。あのコンドームは保存しなくてはならない!


「あれは私が用意したよ~リアリティを追及したくて。てへへへ……」


「はあぁぁ?」


私は驚きと安堵、そして最後にとてもがっかりした。

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