第3話
僕がこの世に生を受けて1ヶ月が経った。
そう、僕は現在赤ん坊である。
この事実を受け入れるのにそれだけかかった。
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お乳を飲んで眠ってしまった僕が
目を覚まして最初にしたことは
現状の確認だった。
そしてわかったことは
僕は赤ん坊だということだ。
僕は確かにあの謁見の間で死んだはずだ。
なのにいつの間にか赤ん坊として生きている。
これは一体どういうことだろう。
妻と娘も僕と同じく
どこかで生まれ変わっているんだろうか。
ここまで考えて思考が固まった。
最愛の妻と娘の名前が、顔が思い出せない。
あんなに愛していたのに
ずっと一緒にいたのに
名前を呼びたいのに
笑った顔を思い出したいのに
どうしても思い出すことができない。
「ふ、ふえー」
涙が止まらない。
なぜ忘れてしまったのだろう
なぜ愛する君達がそばにいないのだろう
なぜ僕だけここにいるの?
涙が次から次へと溢れてくる。
寂しい、一人は嫌だ、
愛する君達に会いたい。
僕を一人にしないで。
そうして僕は何日も泣いた。
その度に母親や父親、水色の髪をした
女の子や女性にあやされた。
でも、この悲しみは全然なくならなかった。
そんなある日夢を見た。
「ここは・・・」
見渡す限り真っ白な世界が広がっている。
白い床が果てしなく続いている。
一体どこなのだろうか。
そして、体が元の大人の姿に戻っていることに気がつく。
「やっほー、久しぶり」
「おとーさーん」
後ろからずっと聞きたかった声が聞こえた。
恐る恐る振り返るとそこには会いたかった
彼女たちがいた。ちゃんと顔もわかる。
「会いたかったサラ、ミミ」
「うん、私も会いたかったよ」
「ミミもあいたかったよ」
二人をぎゅっと抱きしめる。
二人もぎゅっと抱きしめ返してくれた。
嬉しくて涙が溢れてきた。
二人のことを、思い出せた。
しばらくの間そうして抱き合っていたが、
不意にサラが真剣な顔をして見つめてきた。
「あのね、今回はあなたにお別れを言いにきたの」
「かみさまにね、おねがいしたらね、いっかいだけだよって」
「・・・嫌だ」
彼女たちを見たとき、なんとなくだけれども
こんなことを言われるような気がした。でも
「嫌だ、一緒にいる」
サラが困った顔をしている。
自分でもそんなこと本当は無理だとわかっている。
それでも嫌だ。
「えっとね、おとーさん、ひとりじゃないよ?」
「え?」
ミミが小首を傾げながらこちらをじーっと見つめてそう言った。
「おとーさんにはね、おとーさんを
たいせつにおもってるひとがね、うーんとね、
かぞくがいるよ。だからね、さびしくないよ?」
そう言われて僕は気がついた。
生まれ変わっって
周りに家族がいなくて
一人が寂しかったのだと。
「あのね、ミミたちのこと、わすれてほしくないけどね、
おとーさんをね、たいせつにおもっているのはね、
ミミたちだけじゃないよ?
だからね、えっとね、えっとね」
少し涙目になりながらミミは助けを求めて後ろを向く。
でも、今のでなんとなくミミが言いたいことはわかった。
「あー。言いたいことほとんどミミに言われちゃったなー」
そう言ってミミの後ろでサラが後ろ髪を掻く。
「過ぎたことをいつまでもウジウジ悩むなってことでしょ」
「むぅー、それ、私が言いたかったのにー。
セリフ取ーるーなー」
ぷんすかしているサラを見て思わず笑ってしまう。
僕の笑い声に気がついたサラが微笑んだ。
「もう大丈夫そうだね」
「おとーさん、げんきになったー」
そのとき、二人の体の周りが光り始めた。
「ん、そろそろ時間みたい。お別れだね」
「だ、だっこー」
サラは少し寂しそうに
ミミは涙をポロポロながしながら近づいてきた。
もう一度二人を抱きしめる。
「一緒にはいられないけどいつも見守ってるから」
「ミ、ミミも、みてるよ」
「うん、ありがとう」
だんだん二人の姿が薄くなってきた。
「サラ、ミミ愛してる」
「私も愛してる」
「ミミもー」
そう言って二人は頰にキスをして
光の粒になり、消えていった。
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そんなことがあり、僕はこの世で生きて行く決心をした。
まだ二人のことを思い出すと、うるっとしてくるが、
僕は一人じゃない。
僕のことを大切にしてくれる家族がいる。
その家族のためにも頑張って生きていこう。
二人の分まで幸せ二なろう。
さて、まずは、魔法の練習でもするか。
短いですが、これで第1章終了です。第二章でドラゴン出す予定です。