第2話
本日、2話目です。誤字、脱字等ありましたらお手数ですが、ご指摘ください。
だんだん意識が戻ってきた。
目を開けると、白い天井が見えた。
もしかして、ここがあの世なんだろうか。
随分とポカポカとしたいい場所だな。
そういえば、妻と娘はどこだろう。
とりあえず起き上がってみるか。
・・・起き上がれない。なんで?
まさか、首切られて死んだからあの世でも
首だけなんてことないよね。
恐る恐る自分の体を見る。
・・・首も動かない。まさか本当に首だけ?
死後の世界で首なしなんて嫌だ
そんなのあんまりだ。
パニックのあまり思わず叫んでしまう。
「あーう、あうあうー」
「фку?вщгишефтщ?ユート」
銀髪黒目の若い女性が覗きこんできた。
優しそうな女性だ。もしかして、天使?
でも何言っているのかさっぱりわからない。
「ятвоикшидо?」
そう言いながら女性は片手で僕を抱き上げ、
服のボタンを外して僕の頭を胸の前に持ってきた。
なんかすごく安心する。
あ、首から下ちゃんと会った。よかったー。
女性は、慈愛のこもった目でこちらを見ている。
研究所で生まれたから親はいなかったけれど、
母親ってこんな感じなんだろうな、と
少しぼーとした頭でそんなことを考えていた。
・・・・・・・・・。
いやいやいや待って?
片手で抱き上げるだと?
成人男性の僕を?
この女性、聖女のような優しい顔して実は
腕の筋肉モリモリなのか?!
それとも、天使だからこれくらい当然か?
だとしたら何故服の前を肌蹴けていらっしゃる?
もう何が何だかわけわからん。
そんな混乱の中、ふと目の前の女性の胸に目がいった。
ゴクッ。
思わず喉がなる。
なんだか美味しそうな匂いがする。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ・・・・・・・・・。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
ハッ!
気がついたらお乳を夢中になって飲んでいた。
本当になんで?
ん、なんだか眠くなってきたな・・・
女性の腕の中にいるとすごく安心する。
彼女の心臓のトクトクという音を聞きながら
僕は眠りについた。
ーーーーーーーーーー
「あーう、あうあうー」
我が子の鳴き声で目がさめた。
ぽかぽかといい天気だったので
いつの間にか寝てしまったようだ。
「あれー?どうしたのかなー?ユート」
座っていた椅子から腰を上げて
ベビーベッドを覗くと夫と同じ碧眼と目が合った。
なんだかすごい必死な気がする。
うーん・・・。そうか!
「お腹が空いたのかなー?」
ユートを片手で抱き上げ服の前をはだける。
両手で抱き直してからユートの顔に胸を近づける。
すると、ゴクゴクと美味しそうにお乳を飲み始めた。
飲み始める前に「ゴクッ」という音が聞こえた。
相当お腹が空いていたんだろう。
待たせて悪いことしちゃったな。
こうして我が子がお乳を飲んでいる姿を見ると
心が温かくなる。
お乳を飲んでお腹いっぱいになり眠くなったのか
生まれてからまだ3日しかたっていない我が子は
まぶたが下がってきてウトウトし始めた。
やだ、すごくかわいい。
そのまま優しい気持ちで見守っていると
スウスウと寝息が聞こえてきた。
ユートを起こさないようにそっとベッドに寝かし、
寒くないように布団をかけてあげる。
今日はポカポカと暖かい陽気だが
今の季節は冬なので夜になると結構寒い。
そんな夜は夫のアランにベッドの上で暖めて・・・
「わ、私、昼から何考えてるんだろうね」
自分でも顔が真っ赤になっているのがわかる。
コンコン。
びくっ と肩が跳ねる。
「ナタリア様。マリアです。入っていいですか」
「え、ええ、どうぞ」
扉を開けて侍女のマリアが部屋へ入ってきた時には
先ほど妄想をして顔が真っ赤になっていたなど
微塵も感じさせない普段の穏やかな顔に戻っていた。
「お母さんからナタリア様のところに行くように言われました」
彼女の母エリザはこの家で侍女長をしている。
親子揃って水色の髪と目をしており
尻尾と耳も同じく水色の獣人だ。
獣人の見た目は耳と尻尾以外は人間と変わらない。
エリザ曰く、狼の獣人だそうだ。
エリザはまだまだ未熟者と言われているが
7歳という年齢から考えれば
マリアはすごくしっかりと仕事をしてくれている。
「ちょうどよかったわ。
しばらくユートのことお願いしてもいいかしら」
「はい。おまかせください」
ふさふさした尻尾と髪の色と同じ三角形の耳を
ぴーんと伸ばして少し緊張している。
「ありがとう。よろしくね」
そんな様子を可愛く思いながら部屋を出る。
今日は村の雪かきの手伝いに行くことになっている。
屋根の雪はきちんと下ろさないと家が潰れる原因になる。
領主の妻として頑張ろう。
ちなみに、領主である夫は森で魔物が大量に発生したので
村の男たちと一緒に討伐に出かけている。
予定では3日後に帰ってくることになっている。
正直少し寂しい。
でも、放っておくと村に被害が出るから
討伐は大切だ。
そんなことを考えながら玄関へと向かった。
「ナタリア様どうかなさいましたか」
玄関近くでエリザに声をかけられた。
「ちょっと村の雪かき手伝ってくる
二時間ぐらいしたら戻ってくる予定よ。
ユートのことはマリアに任せたわ」
「わかりました。お気をつけて」
エリザに見送られながら門をくぐる。
さーて、久しぶりに思いっきり魔法を使える。
気合い入れて頑張ろう!
鼻歌を歌いながら私は村の広場へと向かう。
その後、村中の雪かきを1時間で終わらせた
ナタリアの肌がなぜかツヤツヤしていた。
との村人の目撃情報がある。
人口2000人の比較的小さな村であるが、
たとえ、村人の力を借りたとしても
村中の雪かきを1時間で
終わらせることができる魔術師は
この国に片手で数えるほどしかいないことを
補足しておこう。
もっとも村の中でその事実を知っているものは
片手で数えるほどしかいないが。