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300年前の魔術師  作者: 卯月木蓮
第1章 転生
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第1話

初投稿です。よろしくお願いします。

「行ってらっしゃい。あなた」


今日も妻は綺麗だ。


「おとーさん。はやくかえってきてね」


娘が可愛い。目に入れても痛くない。マジ天使。


「うん。じゃあ、行ってくるよ」


妻と朝から熱々のキスを交わした後、

娘をギュッと抱きしめてから玄関を出て

二人に見送られながら宮殿へと向かう。


今日は娘の誕生日だ。プレゼント何にしようかな。

うーん、3番地の角で売っているお菓子にしようかな。

前に食べたいって言っていたし。

うん、そうしよう。フフフ。

・・・おっと思わずニヤけてしまい

近くの人から怪しい人を見るような目を向けられてしまった。

ちょっと頭を下げ、謝罪をする。

そして、石で舗装してある道をのんびり歩きながら宮殿を目指す。


少し僕について話しておこう。

僕と妻はどこかの研究所で造られた人造人間らしい。

一番最初の記憶が緑色の液体が入っている

円柱の形をした容器の中で浮かんでいる自分。

周りにも同じ形の容器が多数。

中に人間らしきものが入っていたから間違いないはず。

養父とうさん以外にはこのことは話していない。


研究所の生活は、ただひたすら殺して殺して殺す毎日だった。

研究所で造られた仲間、魔物、罪人をひたすら殺した。

殺すのを躊躇った者から死んでいく。

そんな生活の中「彼女」を意識し始めたのはいつからだろうか。


今でこそ「お前らの発する甘アマな雰囲気で吐き気がする」

と言われるぐらいラブラブだが、研究所で出会った当初は

お互いのことを単なる殺す対象としてしか見ていなかった。

本気で殺しあった。何度も何度も。


お互いを意識し始めたのは、そういえば

あの魔物と戦ったときかもしれない。

人型をしていたが、1つの頭に3つの顔がついていて、

無数の腕にはそれぞれ様々な武器を持っていた。

どこから攻めても死角なしのまさに化け物だった。


次々と仲間が倒れてゆき、倒したときに立っていたのは

僕と彼女の二人だけだった。

それから彼女との間に奇妙な友情のようなものが生まれた。


彼女と一緒にいるとなんでもできた。

彼女が瀕死の重傷を負い死にかけたときは、

彼女が死んでしまうのではないかと思いとても怖かった。

それがきっかけで今まで当然だと思っていた

命じられたまま命を奪う行為に疑問を持つようになった。


ある日、研究所が襲撃を受けた。チャンスだと思った。

僕は、彼女を連れて研究所から逃げ出した。

森の中をひたすら逃げた。逃げて逃げてひたすら逃げて

そこで養父とうさんに拾われた。


僕たちが人造人間だと知ってもなお

家族としてたっぷりと愛情を注いで育ててくれた。

ときには、共に戦場を駆けた。

戦で功績を挙げ「守護神」と言われるようになった。

彼女との関係は戦友から恋人になり、

やがて夫婦となった。そして、子供ができた。


養父とうさんは、ルキオン帝国の将軍で

「戦神」の二つ名を持っている。

現在齢70を過ぎているが現役である。

この前、模擬戦をしたが瞬殺された。

終わった後肌がツヤツヤしていたのは見間違いだと思いたい。

因みに養父とうさんも娘にデレデレだ。

最近養父とうさんが娘をお菓子で釣るようになった。

けしからん。


やべ、なんか殺気を感じた。

ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。


日々成長している娘を見ていると嬉しくなる。その反面

いつか娘も何処の馬の骨とも知らない男と結婚するのかな・・・

と思うと寂しくなってしまう。

まあ、少なくとも僕に勝てなければ認めるつもりはないけど。

僕に勝っても養父とうさんが「わしに勝てなければ認めん」

とか言いそうだけど。


とにかく、今はとても幸せだ。





「面を上げよ」


そう言われて最敬礼のまま頭だけ上げる。

目の前の王座に座っているのは

ルキオン帝国皇帝ゼクス・エル・ルキオン陛下だ。

現在僕は宮殿の謁見の間にいる。

僕の他にも宰相や帝都にいる貴族が集まっている。


「宰相からゴーレム製作についての本ができたと聞いたが?」

「はい。こちらでございます。陛下」

壇上の上、皇帝が座っている席より1段低いところから

こちらに来た宰相に一冊の本を取り出して渡す。

そのまま、宰相が陛下に渡す。

本が陛下に渡ったところで軽く説明をしておく。


「陛下、その本の内容を学べば今まで一部の最高位魔術師しか

 造れなかったゴーレムを中級まで造れるようになります。

 上級の方は最高位魔術師でないと無理ですが」

「よくやってくれた。十分な成果であろう宰相」

「はい。ゴーレムをたくさん製造できれば、

 農業や建築の分野での活躍が期待できます。

 中級までであれば核の魔石は冒険者ギルドで仕入れれば良いでしょう」


満足げな表情を浮かべる陛下と宰相。

周りの貴族たちは驚いている。


どうやら満足してくれたみたいだ。よかったよかっ・・・


「ふむ。では、貴様は用済みだ。衛兵、やつを捕らえよ」

「へ、陛下?」


あっという間に衛兵に拘束されてしまった。

え、なんで?どうして?

謁見の間は静寂に包まれている。

誰も助けてくれそうにない。


「やっと化け物退治ができる」

「あ、あの。化け物・・・退治・・・とは?」

「貴様は禁術で偽りの命を与えられた人造人間、

 まさしく化け物であろう」


その言葉に衝撃を受けた。人造人間のことは養父とうさんにしか言っていないのになぜばれた。


「なぜばれたか不思議のようだな。簡単なことだ。

 戦神に監視をつけていたからわかったのだよ。

 今まで貴様ら・・・を殺そうとするといつも戦神に邪魔をされて失敗した。が、

 戦神は今帝都にはいない。死因は不幸な事故としておけば良いだろう」


そうしてニヤリと笑う皇帝。

不味い、特に「貴様ら」というワードが不味い。

貴様らということは妻と娘も含まれるわけで、

どうにかして妻と娘を逃がさないと二人が殺されてしまう。


「知っておるか?人造人間は体内に魔石を持っているそうだ」


よし、アレを使えば危険を知らせることができる。

はあ、娘の誕生日祝ってあげられないな・・・ごめん。


「因みにこれが貴様の妻と娘の魔石だそうだ」

おもむろに取り出した石を弄ぶ。



あ?イマ、ヤツハ ナニヲイッタ?


「ふむ、素晴らしい品質だ」


皇帝やつの手の上には金色と青色の石が乗せられていた。

妻と娘の瞳と同じ色だ。魔石から感じる魔力も妻と娘のものと同じだ。

ということはもう二人は・・・死んだ?


「この魔石を使えば、いったいどれだけのものが造れるか」

「うあああああああああああ」


殺す。殺してやる。


衛兵の拘束を振り切り皇帝に向け突撃する。


「そんなに心配するな。すぐ家族に会わせてやる。

 ・・・魔石を取った後にな」


次の瞬間胸と背中に衝撃を感じた。

下を向くと胸に穴が空いていてそこから血が噴き出している。

心臓をえぐられたようだ。


膝が砕ける。目の前に僕の心臓を持った奴がいた。

まだ、まだ死ぬわけにわいかない。せめて奴だけは道連れに・・・。


吐血した。奴は、笑ってやがる。くそ、殺してやる。


地面を這いながら奴に近づく。ころしてやる。


あと少し、あと少しで奴に届く。ころして、やる。

不意に首から下の感覚が消える。



僕が人生最後に見た光景は、血だまりの中に倒れている首のない自分の体だった。

そのまま僕の意識は闇に飲まれていった。


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