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八話 化け物に歯が立たないようです

「おい、さっさと逃げるぞ!」


 俺はシルフィーの腕を掴むと、化け物とは逆方向の出入り口に向かって駆け出した。しかし、彼女は俺の腕を振りほどいて言った。


「あんた、それでも討伐隊の一員!?今戦わないでどうするのよ」

「でも、今の俺たちじゃ勝てないだろ」

「それでも、私は」

「それでももくそもねえ!」


 彼女の体が固まる。握りしめた彼女の両手がわなわなと震えている。徐々に化け物は俺達の方へ近づいてきてくる。


「……もういい。私が一人でやる」

「まって、リーチェちゃん!」

「おい!勝手に行動するな」


 俺とシルフィーの制止も聞かずに彼女は魔物と再び対峙する。

無茶だ。さっきの魔法で無傷なら俺達に勝ち目はない。

 だが、それでも彼女はあいつと戦うことを選んだ。


「私の……私達の居場所を壊すなあぁぁぁぁ!」


 そして、今やっとそこまで(こだわ)る理由がわかった。

彼女はギルド(ここ)を愛しているんだ、他の何よりも。


 あの兵士が見せた写真の風景がフラッシュバックする。

 好きな場所、好きな人、好きなもの。多分、人はそれを壊されるのが一番つらい。


 俺はもはや考えることもなく、気がつけば彼女の隣に立っていた。


「あんた、どうしたの。逃げるんじゃなかったの」

「女の子をおいて一人で逃げれるかよ」


 口ではそんなことをいっているが、内心はガクガクブルブルだ。それでも、戦いたかった。俺が持っていないものを持ってる彼女の力に、少しでもなりたくて。


 化け物は既に目の前まで迫ってきていた。


「次の攻撃も効かなければ、本当に逃げるからな」

「分かってるわよ!」


 二人は並んで、それぞれにペンと腕を敵に向けてつきだす。


「うおぉぉぉぉ!」


 鋭いレーザーと猛火は瞬く間に相手にヒットした。

 魔物は猛攻によって舞いあげられた粉塵によって姿が掻き消され、鳴き声も聞こえなくなった。


「……やったか?」


 俺がそう呟いた時だった。


「ハルト君、あぶない!」


 シルフィーの悲鳴にも似た叫び声が聞こえた。俺が驚いてそちらを見ると、視界に入ってきたのは俺めがけて降りおろされている大きな鎌だった。


 ……ああ、俺はこんなところで死んでしまうのか。まだ、よくも知らない、こんな世界で。

 もし、本当に死んでしまうのなら、一言家族にお別れでも言いたかったなぁ。


 死を覚悟して、瞳を閉じた。

 ……それと同時に俺は強烈な吐き気を覚えた。またか。また俺は変な世界へと飛ばされるのだろうか。この世界で死んでしまったから?はたまた、別の理由か?


 目を開けたとき、果たして俺は生きているのだろうか。


 ……しばらくすると、いつものように目眩と吐き気は治まった。


「ここは……」


 そっと目を開くと、目の前には俺の姿を見て、目を丸くしている会社員や学生の姿があった。

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