表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

六話 強くなったようです

 俺は木っ端微塵になった的を、ただただ見つめていた。

 的は恐らく魔法で作られていたのだろう。破壊されたそれは淡い光になり、しばらくして消失した。


 俺はその光景をみて思った。



 このペン。前よりも強力になってね?


 確かに、前回使ったときには既に、木を貫通するほどの威力はあっが、今回のは明らかにそれより上だ。


 火球を当てても完全に壊れないような的だ。間接的にこの赤ペンは彼女の魔法より高威力ということになる。


「えーと、これは」

「…………」


 横を見ると、よほど予想外だったのだろう。女子二人は茫然としていた。特に勝負を挑んできたほうなんか、生きてるのか疑わしいほどだ。


 うん、分かる。俺もよく分からないから。


「えっと……ハルトさん、これは一体?」


シルフィーが話しかけてきた。どうやら、放心状態から復帰したようだ。


「俺にもよくわからない。そもそも、これは魔法なのか?」

「ど、どうなんですかね」


 シルフィーは困ったように返事をした。

 すると、ようやく復活したもう片方の彼女が、間髪入れずに話しかけてきた。


「ええ、これは間違いなく魔法よ! だって、あの的は物理干渉は受け付けないもの!」

「そ、そうか」


 彼女が息を荒くして力説する。

 そうなのか。あぶないあぶない。もし拳銃なんて使えば、即バレてたじゃねーか。


 ところで、なんでお前ははそんな興奮してるんだ。


「凄いわ! あんなに高威力の魔法を見たのなんて初めて。

 確かに、1番隊の人達になれば、これ以上の威力の魔法が放てる人もいるけど、詠唱も何もなしに発動するなんて!」

「そ、そんな凄いの……?」

「凄いなんてもんじゃないわ! あなた天才よ」


 ダメだ。さっきまで自分を変態扱いしてた人に言われても、違和感しか感じない。


 こいつ、相手が実力者なら何しても認めるのかな?


「いや、見た目とは裏腹にこんな実力者だったなんて、あなたを見くびってたわ! なんで、今日の今日までここに入らなかったのよ!」

「そんなこと言われてもなぁ……」


 今日ここへ初めて来たのだから仕方ない。


「ねえ、あなた。名前はなんていうの?」


 そういわれて俺は漸く気付いた。そういや、お互い名前をまだ聞いてなかったな。


「俺は陽人。分かってると思うけど、今日から17番隊に入った。よろしく」

「ハルトね。私の名前はリーチェ、よろしく」


 俺は握手をしようと左手を差し出した。

 …………あれ? 握り返してこない。


「なに? なんで、変質者かもしれない人の手を握らないといけないのよ」

「お前、まだそのこと引きずってたのかよ!?」


 とりあえず、さっきの出来事で興が覚めたのか、彼女の熱弁はやっとのことで止まった。

 なので、俺はひとつ疑問に思っていたことを聞いてみた。


「ところで、さっき1番隊とか言ってたけど、ここに隊はいくつあるのんだ? あと、なんか振り分けに決まりがあるとか」


「へっ? 小学校の社会科で習わなかったの?」

「……いや、俺ってばバカだから忘れちゃって」


 ……ということにしておこう。こっちの世界の教育なんて知らないし。


 異世界から来たといえば、説明してもらえるかもしれないが、教えていいのかも不明だ。

 あとでギルドマスターに聞いておこう。


「なーんだ、魔法が強いだけの脳なしか」

「いきなり毒舌かよ」

「しょうがないわね。教えてあげる」


 そういうと、彼女は鼻高々といった感じで解説し始めた。

 …………小学校の学習内容なんだよね?


「じゃあ、説明するわ。


 まず、このギルドには全部で20の部隊があるわ。それでいて、各部隊は大体の役割が決められているの。


 まず、1~3番隊。この3つの部隊は最高難度の魔物を任される。勿論、危険性も高まるけど、それだけ収入もいいし、実力者も多くなる。


 次に、4~9番隊。彼らは自警団のいない地方へ飛ばされたり、危険度の高い街の防衛につく。4、5辺りは上位の部隊と合同の任務を行うこともあるけどね」


「ふーん」


 情報量が多すぎて、実は途中から聞いちゃいない。

 自分から聞いといてあれだが……


 あと彼女、基本的に早口みたいで、理解する前に次々話される。きっとせっかちな性格なんだな。


「次に10~16番隊ね。彼らは自警団の少ない街へ赴いて、補助的に働くわ。といっても決して弱い魔物しか出ないなんてことはないし、勿論高位の魔物がでる可能性もある。」


「へー」

「ねえ、さっきから聞いてる?」

「うん、聞いてる聞いてる」


 聞くは聞くでも『聞き流す』だけど。


「じゃあ次は18~20番隊」

「あれ?俺らの17番隊は?」

「あとで話すから」


 そういうと、彼女は解説を再開した。


 それにしても、なぜ17番隊だけ飛ばしたのだろうか。もしかして、特殊な部隊なのだろうか。例えば、全員が俺みたいに異世界の人とか。


 なんてことを、妄想をしていたら、18~20番隊の解説を聞きのがしてしまった。

 どうしよう、頼めばもう一度言ってもらえるかな?


 よし、言ってみよう。と思った矢先、


「ねえ、本当に聞いてる? 間違っても2回は説明しないからね」

「ハイ、キイテマスヨ……?」


 釘を刺されてしまった。多分、これじゃ頼んでも無理だな。

 あとでシルフィーにでも聞くか。


「で、お待たせしました、我らが17番隊!」


 金髪の彼女が無い胸を張って言う。


「17番隊はなんといってもエリート!」

「……エリート?」

「……になるかもしれない未来の卵達で構成された部隊」

「うん」


 なるほど。つまり、俺たちはエリートになる素質を持った集まりなんだな。


 あれ、エリート?


「なあ、それって俺も含まれんの?」

「当たり前じゃない。あなた17番隊の新入りでしょ?」


 どういうことだ。俺なんか魔法のひとつも使えやしないのに、なんであの爺さんはここへと俺を入れたんだ?


「どうしたのよ?」

「ああ、いや。少し考え事を」

「へぇ、馬鹿も馬鹿なりに何か考えてるのね」


 本当に一々発言に棘がある。俺はイラつく気持ちをグッとこらえる。

 しばらくすると、彼女は鼻を高くして解説を再開させた。ほんとプライド高そうだな、こいつ。


「じゃあ、今から17番隊の一番の特徴を言うわね」

「エリートの卵が集まるんでしょ?」

「それだけじゃない。この17番隊は



 1~16番隊、全ての仕事を引き受けることができる」

「…………は?」

「つまり、やろうと思えば1番隊がやっているような

 高位の魔物との戦闘も許されるの。


 ただし、ギルドマスターの許可が必要だけどね」



 つまりあれか?

 エリートの卵だから色んな経験を積ませて、超一流の討伐隊にしよう。てことか?


「あのー……そろそろ、夕食の時間だと思うんですけど……」


 不意にシルフィーがオドオドとしながら、話に割って入ってきた。

 そういや、ここに来てから、まだ何も口にしてなかったな。



 そんなことを考えたときだった。


 突如として、辺りを轟音が貫いた。

 断続的に聞こえてくるそれは、どうやらこの建物内から聞こえてきていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ