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おかしな転生  作者: 古流 望
第7章 海賊のお宝
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061話 晩餐会


 政治の世界において、その性質の一端を表す言葉に「利害調整」というものがある。

 限られた物資、人材、資源、時間、金を、どこにどの程度利用するか。成果利益をどのように分けるか。効率的な分配の一環として、利害調整という政治の概念が生まれる。

 間接民主主義であれば、選ばれた代表。貴族制であれば貴族がこの調整役を担っている。


 では、利害調整を行う際に重要なこととは何か。

 色々と大事なことはあるにせよ、一つは人の価値観を知ることだ。


 リンゴが好きな人間が二人居れば、一個のリンゴを欲して争うが、片方がリンゴなどは見るのも嫌だという人間ならば争いは起きにくい。

 分配に際し、それぞれの重要視するポイントを踏まえた配分を行えば、争いが起き難くなるもの。


 故に、貴族は社交を重要視する。

 会話の一つも交わせば、相手がどういう人間か分かるからだ。

 賢いのかどうか。軍務知識があるか。教養はあるか。相手の出せる利益(カード)が何で、欲しがっている利益(カード)は何か。分かる事は非常に多い。


 社交の世界は、貴族社会の縮図。大事なお仕事の一つでもある。

 だからこそ、面倒くさいと感じる人間も居る。

 身体が無意識にでもマナーを守るほどに習熟していれば別だが、いちいち習った動きを思い出しながら動かねばならない不慣れな人間は、尚更だろう。


 モルテールン家の御令嬢は、そんな人間の一人だった。


 「さっきから鬱陶しいわ。御飯が全然食べられないじゃないの」

 「姉様、笑顔です、笑顔。ただでさえ、子供二人と見られて目立っているのですから、笑顔だけは忘れないようにしてください」

 「ペイスに言われなくてもそれぐらいは分かっているわ。でも、こう、頬の辺りが引きつってくるのよ。明日は絶対、顔が筋肉痛になっているわね」

 「顔と言わず、全身カチコチになっています。もっとリラックスしたほうが良いです」

 「出来るならしてるわよ!!」


 ジョゼフィーネ=ミル=モルテールン。ペイスの姉であり、モルテールン家の末娘。

 未だ十代の彼女は、社交の勉強もまだまだ不慣れなところが多く、動きが多少ぎこちない。

 しかしながら、近頃噂のモルテールン家の子ということもあって、お客が引っ切り無しにやってくる為、気を抜く暇がない。


 今もまた一人。いや、二人。

 頑張って笑顔を作っているジョゼと、自然な笑顔で居るペイスの(もと)に、見知った顔がやってきた。


 「ペイストリー=モルテールン卿。ご挨拶させていただいてもよろしいかな」

 「これはハースキヴィ騎士爵。御無沙汰しております」

 「ご無沙汰なのはこちらも同じです。お互い見知った仲ですから、この場は堅苦しいのは抜きでも良いですか?」

 「勿論です。では、ジョゼ姉様の紹介も不要ですよね……義兄上(あにうえ)


 ペイスに義兄と呼ばれた男は、まだ若かった。

 年はまだ二十代の前半。或いは十代にすら見える。オレンジ色に近い赤毛の髪で、目鼻立ちはやや細面。背の高さこそ180センチ程度であろうが、締まった体つきから、もう数センチは高く見えるだろう。

 少し厚みのある生地で仕立てた軍服風の礼服を着ていることから、軍家であることが分かる。赤を基調とした服装なのは、髪の色と合わせてのことだろうが、どこか着慣れていない風であり、こういった場に慣れていないと雄弁に語っていた。

 彼こそ、当代のハースキヴィ騎士爵家の当主であるハンス=ミル=ハースキヴィ。そして、彼の妻ヴィルヴェは、ペイスやジョゼにとっては実の姉である。


 「ジョゼもペイスも、大きくなったね。このあいだ会った時は、まだこんなだったのに。二人とも、元気そうで何よりだ」

 「義兄上もお変わりなく」

 「義兄様、お久しぶりですわ」


 ハンスは、笑顔のままで手を膝の辺りにかざした。

 身長がその程度に該当する小さい人間というならば、幼児であろうと思われるが、他人の子供とはとかく成長が早いように思えるものだ。

 ハンスが以前にペイスやジョゼと会ったのは三年前。多少の誇張はあるにせよ、その頃と言えば今よりも相当に小さかったのは間違いない。ペイスなどは当時五歳だ。

 大きくなった、という言葉は、そのまま思った通りの感想である。


 「モルテールン家の最近の躍進は人伝に聞いているよ。義父上や義母上はお元気にしておられるかな?」

 「はい、それはもう。こっちが困ってしまうぐらい元気ですわ」

 「はは、相変わらずだ。お二人には、館の新築祝いには行けず、すまなかったと伝えておいてくれるかな」

 「分かりました。代わりに、此方としてもビビ姉様に、また里帰りするようお伝えください。私も、偶には姉様に会いたいです」

 「承知した。妻には私から伝えておこう」


 お互いの伝言を預けあう、というのは親しい間がらでよくある交渉だ。お互いに貴族であれば、ただで相手のお願いを聞くわけにはいかない。が、親しいもの同士で、些細なことにわざわざ何か対価を取ったり取られたりというのも煩わしくも感じるもの。

 故に、お互いがお互いに“誰それによろしく伝えて欲しい”というやり取りをしておくのが良くあるパターン。

 こうしておけば、“タダ働きでは無い”という建前がお互いに成り立つので、非常に会話がしやすくなる。


 「そうそう、折角の機会なので紹介しておこう。私の娘の、オリバーキッシュだ。二人と会わせるのは初めてになるかな?」

 「初めまして。オリバーキッシュ=ハースキヴィと申します。ペイストリー=モルテールン卿ならびにジョゼフィーネ=モルテールン卿にお会いできましたこと、光栄に存じます」


 一歩前に進み出たのは、ペイスと同い年ぐらいの女の子だった。

 ぱっちりとした目で、愛らしい雰囲気がある。どことなしに親子で似ていない感じがするが、髪の色だけは赤毛っぽいところで似ている気もした。

 社交に慣れない風なのは誰かさん(ジョゼ)とよく似ているが、それ以上にガチガチに緊張している。


 「娘って話でわたしが知らないのなら、ビビ姉様の子ではないのよね」

 「ジョゼは相変わらず察しが良い。この子はうちで引き取った養子なのだよ」

 「養子?」

 「うちの部下が殉職してね。彼は妻も早くに亡くしていて親戚も疎遠で、この子が一人残されたのさ。色々と事情があって、私が引き取って面倒を見ている」

 「ふ~ん、色々ねぇ」


 貴族家の娘や息子が、部下の家に入るというのは、割とありふれている。

 三男坊四男坊といった部屋住みの人間が、娘しか居ない家に婿として入るであるとか、功績のある部下に対して娘を娶らせるであるとか、類例には事欠かない。

 長い歴史のある貴族家であれば、目ぼしい部下とは血縁関係や縁戚関係になっていることも、それ故に多い。

 色々、という言葉の裏には、そこら辺の事情もあったのだろうとジョゼは察した。


 「それで、この娘を連れて晩餐会に参加ってのは、どういう意図があるのかしら。うちのペイス狙い?」


 義理であれば、血のつながりは無い。近親婚は慣習として避けられてはいるが、神王国の歴史を紐解いても、叔父と姪が夫婦となった例など幾らでも存在する。義理となれば尚のこと忌避感は薄い。

 年頃の近しい娘を連れて挨拶に来る。その狙いがペイストリーである可能性は無視できない。

 如何に義理の兄とはいえ、そこは貴族家の当主。警戒を怠るわけにはいかないという常識ぐらいは、ジョゼも持っている。

 単刀直入に聞くところは非常識にも思えるが。


 「まさか。幾らなんでも、お偉方を向こうに回す気はない。ジョゼと二人で来た意味ぐらいは分かるさ。連れて来た目的は別だ。ここの子爵家の御当主様が、この子と年回りが近いということで、顔を繋ぎに連れて来たのさ。挨拶もさっき終わった」

 「なら良いわ。モルテールン家のジョゼフィーネよ。ジョゼで良いわ。よろしく」

 「同じくペイストリーです。よろしく」


 姉弟(きょうだい)が、年の近い少女に挨拶する。

 緊張気味の少女も、それで多少は緊張がほぐれたようだった。

 挨拶の姿勢も、ぎこちないながら笑顔を忘れないところも、貴族令嬢らしい振る舞いが出来ている。その点、養子とはいえよく躾けられているのだろう。


 だが、それでも爆弾発言を落とすのは不慣れさ故である。


 「よろしくお願いします。ジョゼおば様、ペイスおじ様」


 ピクっとジョゼの笑顔が引きつった。

 まだ結婚どころか恋人すら居ない少女にとって、おばさん呼ばわりはこたえる。

 ジョゼにとって、目の前の少女は義理とは言え姉と兄の子。叔母にあたるのは間違いがないのだが、それにしたところで、おばさん呼ばわりを許せるものでも無い。


 「オリバーちゃん、ちょ~と良いかしら」

 「何でしょう、おばさま」

 「あたしの事は、お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいわ」

 「え? あ、ご、ごめんなさいおばさま」

 「お姉ちゃん」

 「ひゃぅっ、ジョゼ姉様」

 「そう、それでいいのよ」


 半ば強引に、呼び方を改めさせたジョゼに対し、ペイスは溜息を隠せない。


 「姉様、脅してどうするんですか……」

 「脅してないわよ!!」

 「オリバーキッシュ嬢が怯えているじゃないですか。叔母なのは事実ですし」

 「なに、そんなことをいうのはこの口か!!」

 「いひゃい、ほほをつねひゃないでください」


 もちもちの頬っぺたを、姉が引っ張る。

 うにゅうと伸びるのが面白いのか、左右に引っ張ったり戻したりを繰り返す。

 その様子をみて、緊張していた少女などは笑いが飛び出したほど。


 「じゃれるのもほどほどに。それでは私はこの辺で。早くしないと美味しいところが無くなってしまうのでね」

 「ええ。また当家に遊びに来て下さい」

 「あたしも今のうちに食べておこう」

 「姉様、口紅が少し滲んでいます。直すので、ちょっとだけ動かないで」


 義兄が離れたタイミングで、取り皿に確保しておいた料理を頬張るジョゼだったが、慣れない化粧などをしていたまま食べるものだから、少し化粧が乱れた。

 さりげないフォローとして、ペイスが素早く直す。魔法をこっそり使って。


 「兄弟仲がよろしいようですね」


 姉と弟でじゃれつつも、義兄親子と社交を行った後。親子が離れたタイミングを見計らうように、新たな相手が声を掛けてきた。

 ジョゼの目が一瞬泳いだのは、声を掛けてきた相手がペイス並みに小さかったからだ。うっかり上を見すぎていて、誰も居ないと目線を下に向ければ、その相手が居た。


 「初めまして、モルテールン家の御二方。ウランタ=ミル=ボンビーノと申します。今日は当家の招待に応じて頂きありがとうございます」

 「お初に御目にかかります。ジョゼフィーネ=ミル=モルテールンと申します。閣下にお会いできましたこと嬉しく存じます」

 「同じく、ペイストリー=ミル=モルテールンです。不肖の身ながらご招待に預かりまして、光栄なことと存じます」


 後ろに一人、補佐らしき年配の男性を連れて、モルテールン家の二人に声を掛けてきたのは、晩餐会の主催者。

 ペイスと同い年ながらも、諸般の事情でボンビーノ子爵家の当主となったウランタだ。

 黒みのある緑の髪がサラサラとしていて、おかっぱのように前髪を切りそろえているのが幼さを際立たせる。

 それでいて、かなり厳しく躾けられたのか、立ち居振る舞いにおかしなところがない。


 姿勢を伸ばし、右手を握りこんで左胸に当てる敬礼を見せ、ペイスは同じ格好で答礼する。ジョゼは、女性の挨拶として軽く片足だけ後ろに引きながら膝を曲げ、スカートの裾をつまむようにして軽く持ち上げて頭を下げる。


 「当家の食事は如何でしょう。楽しんで頂けていますか?」

 「はい、閣下。私たちの家は内地にありますので、今日のような魚を使った料理はとても美味しくいただいております」

 「それは何より。ジョゼフィーネ嬢に楽しんでもらえているのなら、用意した甲斐もございます」


 にこやかな会話を交わすジョゼとウランタ。

 その様子を、笑顔のままじっと見つめるのはペイストリーだ。


 モルテールン家の内部においては、ペイストリーが次期領主となる跡目であることは、既に確定事項として家内の意見一致をみている。

 だが、他家の人間にはそれを言いふらすことも無い。

 情報伝達が極めて難しい世界にあって、知らない人間の方が圧倒的に多いのだ。


 領地と貴族位は、基本的に男系継承を尊ぶが、女性が継いではならないわけでは無い。

 貴族号を持ち、相続権を放棄している訳では無い為に、形としてはジョゼにもモルテールン家の跡目となる可能性が存在する。

 その為こういった社交の場では、ペイスもジョゼも、同じ後継候補として扱われるのだが、やはり姉ということでジョゼの方が一歩前に出るのが自然なことと見られる。

 八歳で補佐も無いのに如才なく社交を行う異常に比べれば、一般的な成人に近い姉が社交を行う方が、普通であれば自然な行為だ。大人っぽいしっかりした子、で話が片付く。

 それ故、今日に限っては目立つつもりも無いペイスとしては、一歩下がった形でジョゼに社交のメインを任せている。


 にもかかわらず、何故かペイスの方に意識を向けてくる。

 これは明らかに不自然なことだった。


 「ペイストリー=モルテールン卿は如何です。御口にあいましたか?」

 「勿論です。卿の御領地は豊かな海の幸で有名なところ。噂に違わぬ魚介の数々に、御家の伝統を感じます」


 警戒、という言葉がジョゼとペイスの両方に思い浮かんだ。

 それ故、あえて無難な言葉を選ぶ選択をする。当初の予定では、商売の話を臭わせて先に繋がる布石を狙うはずではあったが、警戒が先に立った。

 無難な話題、となれば夕食会なら出された食事を褒めるのがベスト。舞踏会であれば余興や踊りについての話題がベターだ。

 今日であれば、碌に食べていないとしても、晩餐の内容を褒めるのが一番無難な話題になる。そして、あまり多くを食べていない以上、あえて味については明言を避けて曖昧な表現に終始する。


 「それは良かった。当家のものも張り切っておりましたから、そう言っていただければ用意した甲斐もございます。どうですか、どれか卿のお気に召した料理がありましたか?」

 「どれも素晴らしい料理かと存じます」


 回答を咄嗟に曖昧な答えにしたのにはわけがある。

 探りに来ている、というのが明らかだったからだ。


 こうした晩餐において、好みを調べることで得られる情報は多い。

 例えば、身体をよく動かす人間であれば、味の濃いものを好み、量を食べる。逆に、体調がすぐれない人間であれば、あっさりしたものを好むようになる。年齢や、日頃の習慣によっても嗜好は左右されるわけで、一定の相関がある以上、逆算の類推もまた容易い。

 食の好みが、ある程度の人となりを推測する材料になり得ることを、経験的に知る者は貴族の中にも少なからず居る。

 補佐の人間が、子爵にこっそり耳打ちしているのが、その類の話に違いない。


 「先ほどから拝見しておりますと、御二方に声を掛ける方々も多いようですね」

 「田舎者ですので、物珍しいのでしょう」

 「いやいや、モルテールン家の御盛名はつとに有名です。これだけ頻繁に声を掛けられると、ゆっくりと料理を味わうことも出来ないでしょう」

 「まあ」

 「良ければ、御帰りの際に幾らかお包みしましょう。帰りに、一声お声掛け頂けますか?」

 「そこまでご厚意に甘えては恐縮の次第です。お気遣い頂かなくとも、お心遣いだけで構いませんが」

 「そうおっしゃらず。折角の料理ですし、噂に名高い御父君にも、是非召し上がっていただきたい。そうだ、料理でなくとも、魚そのものでは如何です。当家でもなかなか手に入らない、とっておきをお包みします」

 「はあ」


 目上から、是非にと言われれば、強硬に突っぱねるのも難しい。

 新鮮な魚まで分けてよいと言われれば、断るにも理由を持ち合わせていなかった。しかも、攻め手を変えてくる柔軟さまで見せた。

 ペイスの態度が逃げの一手と見るや、ジョゼを攻めだしたのだ。


 「ジョゼフィーネ嬢は如何です。新鮮な魚も、御家であれば持ち帰る事が出来ましょう。とびきりに脂の乗ったものがご用意できるのですが」

 「そこまでおっしゃられるのであれば、御言葉に甘えさせていただきますわ」

 

 適当な言い訳であくまでも土産を突っぱねる対応も出来なくはない。

 だが、社交のメインとなっているジョゼが頷いてしまった為に、止む無く受け取ることになる。

 ジョゼの言葉に、子爵は満足そうに頷いた。


 「そうですか。ではまた、後ほど。くれぐれも、帰るまえには声を掛けてください」


 そう言い残し、子爵は場を辞した。

 主催者として、挨拶せねばならない相手が多いからだ。

 残されたジョゼとペイスの二人は、小声で言葉を交わす。


 「姉様、何故あからさまな誘いに乗るのです。手土産の見返りに、何を求めてくるか分かったものではありませんよ」

 「だからこそよ。良く言うじゃない。巣に入らずんばなんとやらって」

 「はぁまったく……豪儀なことで」

 「うちの弟を信頼しているのよ。任せたわよ」

 「任せ方が違うでしょう」


 ペイスが溜息をついたのは、ジョゼの性格について。

 巣に入らずんば竜を得ず。神王国のことわざのようなものだ。虎穴に入らずんば虎児を得ずと言い換えれば分かりやすい。

 何か相手方が企みを持っていると分かっていながら、あえてそこに踏み込むという姉の決断について。この男前な性格は誰に似たのかという感傷から、溜息をついたのだ。



 日もとっぷりと暮れ。深夜と呼ばれる時間帯になった頃。


 晩餐会も主催者の挨拶と共に閉会となり、解散する。

 ジョゼとペイスが帰りがけに挨拶したところ、何やら特別待遇とのことで、別途部屋に案内されることになった。

 案内役は、子爵家の従士だ。


 子爵の屋敷の奥の部屋。

 恐らく応接室と思われる場所まで案内され、ノックと共に入る。

 今日は、ジョゼから先に入室することになるのだが、そこでペイスが叫ぶ。


 「姉様!!」


 部屋に入ろうとした彼女を引っ張るようにして後ろに下がらせ、代わってペイスが前に出る。

 執務室の中には、完全武装の兵士が十人以上。どう見ても、普通の状況ではない。

 ペイスとジョゼに、最悪の想像が()ぎる。悪意をもって、自分たちの命を取ろうとした(はかりごと)であったのか、と。

 一触即発とも言える雰囲気に、一気に緊張感が高まる。

 その中で、武装集団の間から一歩前に歩み出たものが、口を開いた。


 「少々、お話をしてもよろしいですか?」


 一歩進み出たのは、子爵家当主の少年だった。


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