228話 研究所の悩み
神王国における最高の賢者が集まる王立ハバルネクス記念研究所。そこでは今日も今日とて学問の徒が真実の欠片を探して地道な研究を続けている。
世の中は常に不思議に満ち溢れていて、人が知る知識などというものは世界のほんの一部にしか過ぎない。千年、二千年、或いは何万年も、人類は知識を積み重ねてきた。しかし、それでもなお未知の世界は果て無く広がっていて、終わることのない探求のフロンティアが存在していた。
古の賢者曰く、知るということは、知らないということを知ることである。研究者とは、自分たちが無知であると誰よりも知る者たちだ。
無知の大地の片隅を、少しでも照らせる灯りとならん。
そう考えて研究に勤しむ者達の中に、汎用魔法研究室の人間も居た。
ボンという爆発音をさせながら。
「駄目だ!! これも失敗だ!!」
ケホケホと、埃の舞った中から顔を出したのは、汎用魔法研究室の研究主任ホーウッド=ミル=ソキホロ。汎用魔法研究室の室長は他所の研究室の室長を兼任している為、実質的には汎用研のトップである。
そこそこ良い年をしているはずの男が、自らの実験の結果を悲しむ。ここ最近はずっと失敗続きだが、そのバツ印の羅列に、今日もまた一つのバツが追加されてしまった。
汎用研の研究テーマは、魔法を汎用化すること。つまり、誰でも魔法が使えるようにすることだ。実現できれば素晴らしい研究ではあるが、ここ何年も碌な成果が出ておらず、失敗が続いていた。
「し、主任、またで、ですか」
埃を板切れのようなもので扇ぎながら呆れた顔をするのはデジデリオ=ミル=ハーボンチ。今年研究室に配属された新人であり、研究所でも将来を嘱望された優秀な人材、だった。
過去形で語らねばならない理由は下らないものではあるが、能力自体は誰に憚る必要もなく優秀と呼べる者だ。
最近は改善を見せつつあったどもり症が、ここにきてまたぞろ再発と悪化をし始めたのが目下の悩み。
「何が駄目なんだろう」
「さあ」
今、彼らが行っていたのは、魔法汎用化の前段階の、更に前段階の研究だ。神王国では日陰の研究ではあるが、やっている当人たちはかなり真面目に取り組んでいた。
成果が出ているとは言い難いが、僅かづつでも前に進めばいいとは主任の言葉である。
「何となく傾向は掴めて来てるんだけど……」
主任の手には、石ころがあった。正しくは、黄鉄鉱と呼ばれる硫化鉱石。
彼らの行っていたのは、魔力を物質に蓄える実験。魔法を使うために魔力が必要なことは先人たちの研究で明らかにされているのだが、その魔力を外部に蓄えることが出来ないかというのが今の研究テーマ。その一環として、黄鉄鉱への魔力蓄積実験である。魔力を効率よくかつ安価に蓄える物質を見つけ、次いで蓄えた魔力を魔法として流用することで汎用化を成し遂げようとする研究の一環。
現在、魔力を蓄える物質として最も有名なものは軽金と呼ばれる金属である。金の一種とされているものであり、これに似た鉱物で、更には安価で豊富に埋蔵されているものがないかどうかを調べるのが目下の作業である。
黄鉄鉱は、非常に綺麗な金色をした鉱石として知られている。見た目だけであれば金と見紛うばかりの輝きを有しており、時には詐欺にも使われたりするのだが、この見た目の類似性から、もしかしたら軽金の代替足り得るのではないか、という仮説の検証を行っており、その結果が先の爆発である。実に見事な爆弾魔だ。
「軽金を百として、五を超える成果を出せたものは三つか」
数ある研究試料の中で、実験を繰り返し得られた成果は数百のうちで三つだけ。それも、辛うじて意味のある数字で誤差とは呼べない程度の数字を出せたものが三つという意味だ。
はっきり言って、成果なしと言っても過言ではない。
「ふ、二つは知っていますが、三つめは?」
デジデリオが、主任に対して質問を投げかける。彼は新人なので、今までの研究という部分で知識が足りていない。過去の研究の記録を調べればわかるのだろうが、こればかりは時間が足りていないだけだ。それを助けてやるのも先達の務め。主任は、埃のせいでいがらっぽくなった喉を庇いながら新人を導く。
「あれ? 知らないのか。じゃあ一つづつ言っていくけど、知らないのが有ったら覚えて。まず金剛石」
「はい」
「次に金」
「はい」
「そして最後が……ハーネミ合金」
主任が名前をあげたのは、どれも過去の研究で蓄魔力性能が一定水準を超えたもの。汎用魔法研究室の、過去の功績の一端でもある。
しかし、そのうちの一つが聞きなれないものであったのが、新人には気になった。
「な、なん、なんですかそれ?」
金やダイヤならば常識の範疇であるが、合金となると専門知識の範疇。教わることも学ぶこともせずに、最初から知っている人間など居ない。少なくとも、世間の会話で出て来ることはまずありえない単語だ。
「軽金と金と銀を混ぜた合金。錆びない上にメチャクチャ光沢があって、装飾品に向くってさ。ただし、銀や金の割合が多い程、貯蓄量は下がる」
金と銀を混ぜて、装飾品に使うことは大昔から為されていた。そもそも純金というのはとても柔らかく、それ単体では装飾品に向いていない為、色々と混ぜ物をされがちなのだ。金に、銀と何かをセットで混ぜる。割とありがちな話だ。
簡潔で分かりやすい主任の説明であったが、デジデリオはふと気付く。優秀な頭が、研究者らしく違和感を訴えたのだ。
「それって結局のところ、け、軽金が効いてるだけでは?」
「うん、不本意ながら」
金や銀だけでは、魔力が溜まることは無い。しかし、軽金を混ぜれば魔力が溜まる。ただし、軽金の混合割合が下がるほど魔力の蓄積能力は下がる。
何のことは無い。軽金の抜群の蓄魔力性能を、他の金属で妨害されているだけのことだ。それなら、軽金単体の方が遥かにマシであろう。
一応の実験結果として、一定水準を超えたと区分されているが、ここから導き出される結論は、あまり価値が無い。合金でもある程度なら畜魔力性能があると知れた時点で無価値ではないのだが、この合金を使って実験をするのなら、軽金の下位互換にしかならないは明らかである。
「やっぱり、金属類は難しいね。」
「ガ、ガラスは駄目でしたか?」
魔力を蓄える物質は、固体に限られる。液体はたとえ軽金でも著しく畜魔力性能が落ちるとされていて、ましてや気体は論外だ。しかし、汎用研のテーマ的には魔力を蓄えて、更にその先にこそ大目標があるわけで、最終的には何がしかの成形や加工が必要になる。
金属などを例に挙げるまでもなく、形を変えるなら液状がやりやすく、魔力を蓄えるなら固体が望ましい。つまり、液体と固体を行ったり来たりしやすいものが望ましい。
ならばガラスはどうだろうか。
ガラスも大枠で見れば鉱物の一つ。デジデリオの拙い発想では、有望そうに思えるのだが、主任は首を横に振る。
「駄目だったね。宝石類が結構いい成績だったから期待したけど、全然ダメ。液体みたいな反応だった」
やはりというべきか、ガラスでは駄目だった。
「水晶は割と良かったけど、思っていたほどじゃあなかったかな」
「難しいですね」
「ま、簡単に成果が出ないからこそ、こんな感じなんだけどね。とにかく、地道にやるしかないよ。もっと人手があれば、楽にもなるんだけどね。君が来てくれるだけでも助かってるよ」
あははと主任は乾いた笑いを零す。
「他の研究員の方は?」
デジデリオの知る限り、汎用研には他にも三人位は配属されているはずである。新人配属はデジデリオだけだったが、人手が必要というなら他の研究員は何処にいるのか。
「皆、他所でお手伝い。うちにいて成果なしで居るより、他所で手伝いをして、端っこでも名前を入れてもらえると功績にはなるから」
「な、なるほど」
汎用研のような個人で出来る研究開発は別にして、農業研究をしている研究室や、建築関係の研究をしている研究室などは、個人ではなく数人のチームで研究することが多い。扱うものが重量物であったり、数年単位の気長な研究であったりするからだ。一人がずっと続けることには限界がある。
そこで、汎用研のような窓際から人手を募り、一応はチームの一員であったとして、研究成果の功績を分け与えることがあるのだ。メインで研究する研究員に比べると微々たる功績とされるものの、ゼロであるよりはマシとばかりに募集に応じる研究者もいるのだ。
「君も、そうしたいならしてくれていいよ。成果ゼロだと全員首になるからこうして私が研究を継続しているが、君まで付き合うことは無い」
「え?」
「ここに居ても、正直良いこと無いよ? 成果は捗々しくないし、構造的に研究体制に不備があるし、金は掛かるのに予算は最低だし。ここは落ちこぼれが来るところさ」
主任の乾いた笑いが再度響く。
元々汎用研は、構造的な欠陥がある部署である。
魔法を誰でも使えるようにする、というのがこの研究室の設立目的であり大目標なのだが、よく考えてもらいたい。魔法を誰でも使えるようにする、という研究に、独占的に魔法が使えることで儲けている魔法使いが、協力的になるだろうか。魔法使いを抱えることで利益を得ている権力者が、利益を失いかねない研究に金を出してくれるだろうか。
否、そんな都合のいい話は無い。
貴方を用無しにする研究にぜひ協力を。端的に言えばこんな話だ。誰が協力するというのか。
他にも色々と構造的な欠陥は多いが、汎用研は左遷部署である。
「……な、なら、自分にふ、相応しいと思います」
「え?」
ここは落ちこぼれの来る場所。有望な新人の来る場所ではない。そんな言葉に、デジデリオは既視感を覚えた。思わず笑いがこぼれるほどだ。
「自分は、士官学校でもお、落ちこぼれでしたから」
「そうなの? でも研究所って、寄宿士官学校からの新人採用は上位卒業が必須条件でしょ?」
「さ、最後の卒業年だけは、じ、上位になりました」
「じゃあ、やっぱり落ちこぼれて無いじゃん」
「き、教官に恵まれました」
運が良かった。デジデリオはそう思っている。最後の一年に教官に恵まれたことで、大変ではあったが実りの多い学生生活を送れた。落ちこぼれていた自分が、人並みに楽しんで学ぶことが出来たのだ。それだけで十分に恵まれている。上位卒業などという結果は出来過ぎだろう。そんな想い。
デジデリオにしてみれば、三年間教わった教官より、最後の一年を教わった敏腕教官の方が恩師と呼ぶに相応しい。
「そっか……その教官って、どんな人?」
「厳しい人で、です。見た目は綺麗で小さいのに、ど、どの教官よりも怖い。ただ、公正で信頼できる方でした」
「ふうん」
「モルテールン教官には、本当にお世話になりました」
「そっか、良い教官に師事出来てよか……ん? 今モルテールン教官って言った?」
さらっと流そうとした部分で、気になる点があった。流石に魔法学の研究者として聞き逃せない名前があった。
「は、はい。自分がお、教わったのは、ペイストリー=ミル=モルテールン教官であります」
「素晴らしい!! こんなところに良いコネが居た」
「は?」
「“所内の噂で聞いた”んだけど、ペイストリー=モルテールン卿って言えば、社交界では絵描きの魔法使いとして知られている人物だよね」
「多分……」
他に同姓同名が居ない限り、同一人物と思われる。出来れば同じ人物であってほしい。あんな人物が二人も三人も居たら、学校は丸ごと乗っ取られてしまったに違いないとデジデリオは内心で恐れおののく。
「おお!! 魔法汎用化研究の三大難問の一つに解決の糸口が」
「え?」
「だから、三大難問。魔力の利用。魔法の定着。そして魔法の発動。教えたよね?」
「ええ、はい」
魔法の汎用化研究は、構造的に欠陥があると言われている。それが、三大難問として呼ばれていた。今まで何人もの優秀な研究者が挑戦し、悉くを跳ね除け続けた難攻不落の堅城である。
かつては本当に人工的に魔法使いを産みだそうとして研究が進められていたのだが、現在ではあまりの成果の無さに研究テーマのハードルが下げられていて、“汎用的に魔法が使える道具の作成”を模索中。誰でも使える魔法の道具があれば、汎用化と言えるだろう、ということだ。
そのためには魔力を蓄え、利用し、魔法を発動させる“何か”が要る。
魔力を簡便に蓄える物質は、今までの研究である程度の傾向が分かっている。結晶のように単質で均一な素材だ。軽金も結晶なのでは無いかという説もあるが、これは割愛する。
魔力を安定的に蓄え、道具として使うために持ち運べる程度で、透き通るほどに不純物の無いものが理想だ。
しかし、そんなものは宝石ぐらいであり、まともに研究すると国家財政は破綻一直線である。安価な魔力蓄積物質の発見。これが一つ目の難問だ。
そして二つ目が、魔法の定着。魔力がただ蓄えられていてもそれだけでは意味が無いし、単なる魔力として使うのも意味が無い。位置エネルギーを電気として使いたいとき、水をダムに溜めて、放出するだけでは意味が無いようなもの。貯めた魔力を、何とかして“魔法”という現象に変換しなくてはならない。その為には魔力蓄積物質の“加工”が必要なのだが、硬い結晶を思う通りに加工するのは極めて難しい。
更に三つ目。魔法の発動だ。何かの物質に魔力を蓄えることに成功し、加工出来たとして、実際に魔法として使えなければ意味が無い。
魔力を貯めて、【発火】の魔法を定着させてみました、というところまでなら軽金を潤沢に使えば出来る。しかし、そこから魔法使いでない人間が、【発火】の現象を産みだせるかというのは別問題。
例えば現金を溜め、ドルに両替することが出来ても、それで実際に物を買えなければ意味が無いのだ。
「そもそも、魔法の汎用化の研究で最も難しいのは、魔法使いの協力者を得る事なのだよ」
「はあ」
「既に予算は使い切ってしまっていたから、目ぼしい魔法使いを雇う金も無く困っていたのだが……そこで君だ!!」
主任がビシっと指さす先には、困惑気味の新人研究員。
「じ、自分ですか?」
「そう。モルテールン教官の教え子。愛弟子。きっと力になってくれる。拝み倒せば、一回ぐらいはタダで魔法を使ってくれるかも。所長が心当たりがあるっぽいことを言っていたのは、きっと君のことだったんだね」
「そんなに上手くいきますか?」
「いかせるのだ。君の上司として……業務命令だ。恩師にあって、研究に協力してもらえるよう泣き落とし……じゃない、誠意ある懇願をしてきなさい」
「理不尽なは、話だと思います」
デジデリオは困惑したが、コネを活かして仕事上の便宜を図ってもらえというのは別段珍しいことではない。貴族社会ではよくあることだ。しかし、そうはいっても、あくまで教え子の一人というつながりで、何処まで無茶を聞いてもらえるのか。怪しいものである。
「私だってね……私だって、夢もあれば野心もあったのだよ。それをあのハゲに功績を横取りされた上に左遷。口惜しいのだよ。ここで魔法使いの協力を得て研究を一気に前進させれば、私だけなら何とか異動が適うかもしれない」
「凄い自分勝手な言い分ですね」
「この際見栄もへったくれも無い。恥なんて持ってたら、こんな左遷先にしがみつかずにとっくに辞めてる。だから、頼むよ。私の将来と、そしてついでに君の将来の為に」
デジデリオは、大きな溜息をついた。
◇◇◇◇◇
寄宿士官学校の教官室が並ぶ一角。来客も多いこの区画に、デジデリオ=ミル=ハーボンチ研究員は足を運んでいた。
目的の部屋をノックし、入室許可が出たところで中に入る研究員。
「モルテールン教官」
入った瞬間、デジデリオは笑顔で迎えられた。一瞬身体が強張りそうな感覚と、懐かしさを感じるような思いとが混然一体となった、不思議な体感を覚える。
「誰かと思えば、デジデリオ=ハーボンチ卿では無いですか。元気そうですね」
ペイスの柔和な笑顔。学生時代はデジデリオもこの笑顔に救われたものである。それだけに、よそよそしくなった呼び方に、少々寂しさを覚える。
「き、教官、今まで通りで呼んでください」
「そうもいきません。卿は貴族号を持つ成人です。学生の時は身分など無用の長物でしたが、社会に出れば地位に相応しい礼節をもって接するべきです」
「恐縮です」
やはり、教官は教官だった。自分が学生で無くなった事実に、改めて寂静感を覚えるとともに、今日の目的を思い出して顔を引き締める。
「それで、今日はどうしましたか?」
「実は、教官にお願いがありまして」
デジデリオの説明は小一時間に及んだ。一切遮ることなく、ふんふんと聞いていたペイスは、話し終えたところで問いを発する。
「つまり、魔法使いの協力が欲しいと?」
「はい」
掻い摘んで言えば、格安で協力して欲しいということに尽きる。出来ればタダで研究を手伝って欲しいというお願い。これが教え子でなければ、ペイスも門前払いしていたことだろう。
「ふむ……聞く限りでは、とても面白そうな研究だと思いますが、やはり何の利も無くタダ働きというのは……」
「難しいですか?」
「出来なくは無いです。幸い、職務の裁量幅が増えていますし、時間は捻出できる」
「なら、ぜひ協力を」
「条件があります」
「条件?」
「ええ。実は、仕事をサボ……ごほん、余暇の時間を有意義にする為に、趣味に邁進していたのですが、いささか困ったことがありまして」
「困ったこと?」
「ええ。当家の重要な産業である製菓産業。その一つが、飴事業です。焼き菓子事業はリコリスの活躍である程度付加価値を付けた商売が出来るようになったのですが、飴事業は中々高付加価値を付けるのが難しい。そこで、美術的・芸術的価値を付加して商売に出来ないかと飴で細工菓子を作ったのですが……従士長などから、誰が買うんだと言われまして、いささか試作品を持て余しているのです」
「はあ」
「これを、何とか引き取ってくれるのであれば、魔法を使うぐらいのことは協力しましょう。値段は、砂糖の原価だけでも構いませんので」
ペイスの私室に置かれている飴細工。溶けにくい飴を使って、生き物を象った巨大建造物だ。はっきり邪魔であり、価値としては破格であると誰もが認める逸品なのだが、如何せん買い手がいないという問題があったのだ。
例え砂糖の原価だけだとしても、売れるのなら売りさばいてしまいたい。ペイスの隠すことのない本音である。
デジデリオにとっても、芸術的価値はともかく、飴としては確実に価値があるものを買いとれるなら、それでいい。手ずから苦労して作り上げたペイスでは出来ないが、芸術的飴を搗ち割って粉々にし、ただの飴として捌けばいいのだ。
幸い、ただの飴であれば欲しがりそうな連中に心当たりがある。
「ありがとうございます。で、その作品とは?」
乗り気になってくれたことに、ペイスは顔をほころばせる。
そして、早速とばかりに作品を魔法で運ぶ。
透き通る固体。自由自在に形を変える結晶。飴細工。
「これだ!!」
デジデリオは、思わず喝采を挙げるのだった。