143話 社交の場は戦争です
貴族とは、自らが一家を運営する経営者である。
それと同時に、自分たちの家をセールスする営業マンでもある。
大企業の営業がそうであるように、高位貴族などは勝手に取引相手の方からやってきてくれるので、営業も大して労力は要らない。
対し、中小の零細となれば、自分たちのアピールを欠かしてはいざという時の営業活動に支障が出て来る。
ある意味では現代以上に冷酷な格差社会。
貴族の論理とは多くが縁故に由来する。一見非合理に見えても、縁故が優先されることが多い。
二つの選択肢のうちでどちらを選ぶか迷ったとき、縁故の有無が勝敗を分けるということもザラ。
故に人間関係を密にすることが、お家の利益に適う。
より親しい方がより多くの利益を得られる。となれば、何かの集まりや催しごとには、出来る限り参加する方が良い。
実力の乏しい貴族程そう考えるものだ。
「ペイストリー=モルテールン卿。卿も来られていたのですね」
「おや、これはボンビーノ子爵。最近のご活躍のほどは伺っております。お声がけ頂き光栄です」
「光栄だなどとは面映ゆい、ペイストリー殿に比べれば、私程度、さほどのことは無いでしょう」
「何をおっしゃいますか。ウランタ殿のことは、王都でも話題になると父から聞いております。ボンビーノ家の興隆はウランタ殿あってのことと、噂の的だとか」
「ありがとうございます。それも全てペイストリー殿のお力のおかげと感謝しております」
社交の場では目上から声掛けするのがマナーであり、子爵家当主のウランタは、マナーに則って“モルテールン男爵家嫡男”のペイストリーに声を掛ける。
声を掛けられる方も、出来る限り会話を盛り上げるように心がけるもの。相手の悪口を言っても喧嘩になるので、普通は相手を褒める。
「しかし、今回のような集まりに来られるとは珍しいですね」
「ええ。少し事情がありまして」
今回のような集まりというのは、神王国の伝統派貴族と呼ばれる人々の集まりのこと。集まっている面々は、貴族位を持っている現当主から少なくとも七~八代は遡れる家ばかり。ボンビーノ家のように国家創建期まで遡れる旧家も幾つか参加していた。
ペイスも一応血筋だけで言えば古くからの貴族の血ではある。父も代々の騎士爵家出身だし、母も伝統貴族の出だ。血統書だけなら参加していてもなんら不思議は無いのだが、周りからは遠巻きにされていた。何せ、ペイスのところは“悪名高き”モルテールン家なのだ。
庶流の人間が実力で一家を建てたことで、お家自体が新興派筆頭格とされるモルテールン家。一応の形だけとしてこの手の集まりに呼ばれても、参加することは無かった。そもそもお呼びがかかること自体が稀であるが。
今回の晩餐会。会の主催者が軍家だったことから、カドレチェク公爵から手を回してもらって、ペイスが参加している。
対しボンビーノ家はこの手の伝統派の集まりには結構な頻度で参加している。特に最近は是非にと乞われて参加することが増えた。
伝統と格式を代々受け継ぎつつ、それでいて家の勢いと財力を増やしつつあるボンビーノ家は、いわば伝統派のホープ。
新興貴族がでかい顔をするのを好ましく思わない人間にとってみれば、自分たちの自尊心を支えてくれる存在でもある。
新興派と伝統派の代表格のような少年二人が仲良さげに喋っているのだから、周りからしてもどう扱っていいか困る組み合わせだ。
「それで、ジョ、ジョゼは今日は……」
挨拶もそこそこに、ウランタはかなりの期待を込めて周囲を見回す。何を考えているのかが実に分かりやすい反応である。
「姉様は今日は来ていません」
「そうですか。残念ですね」
もしかしたらジョゼフィーネに会えるかもしれないと期待していただけに、ウランタの落胆の溜息は重い。
一応手紙のやり取りぐらいは続けているらしいと、ペイスも姉から話は聞いている。そこまであからさまなら、少年の気持ちに気付きそうなものだが、ジョゼ自身は文通友達ぐらいの感覚で居るのだからウランタも可哀想な男である。
気落ちするウランタを慰めるペイス。
「そのうち当家でも催しをしようと思いますので、その際は招待させて頂きますよ」
「是非。しかし、今日も一緒に来られるのかと思っておりましたが?」
今回のような集まりは別だが、社交に出るとモルテールン家の人気は高い。カドレチェク公爵家、フバーレク辺境伯家、エンツェンスベルガー辺境伯家、レーテシュ伯爵家等々。今の神王国で一派を形成するほどに影響力のある家が、こぞってモルテールン家を自派に引き込もうとしているのだ。賢しい人間は、是非お近づきにと話しかけて来る。
最近ではペイス一人ではとても捌ききれないことが多く、ジョゼと分担するのも良く見る光景だったりする。ウランタがペイスを見かけた時、ジョゼに会えるかと期待していたのは、それが理由。
「ちょっと事情がありまして。今回は、姉様が来ては厄介なことになりますからね」
「は? それはどういう意味ですか?」
「こちらの話です。最近は酷く物騒な世の中になって来てるので、か弱い女性が居ては万が一のことがありそうで怖いという話ですよ」
「ペイストリー殿が居られれば、まず大丈夫なのでは? その……【転移】で。ジョゼに万一があっては困るのは同感ですけど」
ペイスが父親から魔法を借りられるという建前は、形だけはモルテールン家の最高機密になっている。それだけに、ウランタは後半の方を小声で会話した。
逃げに徹してしまえば、ペイスやその近親者をどうこうするのはほぼ不可能じゃないかとのウランタの見立て。モルテールン家の実情をよく調べており、想定自体は間違っていない。
「それとは少し違った意味でして」
「は?」
「ウランタ殿も、出来れば早めに帰った方が良いですよ」
「一体何が……いや、なんとなく分かります。分かった気がします」
ウランタがペイスの後ろの壁に目を見やれば、そこには自分たちを注視する人間が三名居た。何度かモルテールン家で見たことのある顔ばかりだが、三人ばかりの誰もがゴツくて武骨な男。
ウランタは名前まで分からなかったが、コアントロー、グラサージュ、トバイアムの三人が壁際に並んでいるのだ。
護衛が居る事自体は当たり前である。あのペイスの護衛であり、数がやけに多いことを不審に思わないならば、別に他にも同じように護衛を連れている貴族は多い。
ウランタにだって護衛兼任で補佐役も付いているし、同じように護衛を一人連れてきている。
ボンビーノ子爵の少年が察したのは、ただでさえ普段は護衛を嫌がるぐらいに腕の立つペイスに、護衛という名目で腕利きを三人も付けているという点。
分かる人間には分かる。ペイスも含めたこの顔ぶれは、今から殴り込みに行きますと宣言しているような顔ぶれだ。そこら辺のごろつきのレベルなら、一ダースぐらいは軽く捻るだろう。
ウランタに対して早く帰った方が良いというのは、怪我をする前に帰れと言う忠告兼脅迫なのだろうと、言われた当人は察した。
「しかし、主催者に挨拶もせずに帰るわけにもいきませんね。一言ぐらいは声を掛けておかないと失礼になる」
「それなら同道しましょう。一緒に挨拶すれば、手間も省けていい」
今回の主催者はハップホルン子爵。代々の教育環境がまともなのか、歴代の当主や子弟にはそこそこ優秀な人間が多いということで、王家や高位貴族への人材輩出で有名な家柄。軍家閥に対しても色々と縁深い。
子沢山でも知られ、今代の当主の子供は、今分かっているだけでも八人。当主がまだ三十半ばという年なので、これからも増えると見込まれている。
ただし、子沢山の家の常で、金銭的には代々苦労してきたのも伝統。ハップホルン子爵家の最大の輸出品は子弟であるとまで言われる。
ちなみに、今回の晩餐会も新たに子が産まれたことの祝いだ。
「ハップホルン子爵。此度はおめでとうございます」
「ん? ああ、これはボンビーノ子爵。遠いところからわざわざ来ていただきありがとうございます」
ボンビーノ子爵ウランタの声掛けに、主催者のハップホルン子爵が対応する。
ハップホルン子爵は今が働き盛り。軍家でもあることから体は引き締まり、肌が日焼けしているため実年齢よりも老けて見える。つまりはそれ相応の威圧感があった。
ウランタと並ぶと、文字通り大人と子供。爵位が同じとは思えない組み合わせである。
「わざわざ、などとおっしゃっていただく程の距離ではありませんよ。街道を使えばさほどのことも無く。来る途中も平和な旅路でしたから、ハップホルン卿の統治が行き届いているのでしょう」
「そう言っていただけると嬉しいですよ。ボンビーノ卿のところは街道も多いし港もお持ちだ。何処に行くにも便利で実に羨ましい」
「ありがとうございます」
「今日は楽しんでいってください。隣に居られるのは……間違っていたら申し訳ないのだが、もしかしてモルテールン卿の御子息かな?」
「はい、カセロールが子、ペイストリー=ミル=モルテールンと申します。ハップホルン子爵閣下にお目にかかれましたこと、光栄に存じます。カドレチェク公爵閣下より子爵閣下のご活躍のほどは聞き及んでおります。この度はお子様がお生まれになったとのこと、まことにおめでたく、お祝いの品も御家中の方に預けておりますので、ご笑納下さい」
「これはお気遣い頂きありがとうございます」
「いえいえ」
ハップホルン子爵とペイスは、共に右手を左胸に当てる敬礼を取る。
「貴君の御父君には若い時から色々と世話になっています。公爵から、貴君と是非話してみるようにと勧められましてご招待させていただきました。公爵は貴君を大分褒めておられた」
「左様ですか。褒めて頂けるなら頑張って来た甲斐もございます」
「幼き頃から一軍を率い、先の東部の戦争では大活躍だったそうでは無いですか。ああ、そういえばボンビーノ卿と親しいのも共に軍を率いて船を並べたからだと伺っておりますが?」
「はい。ボンビーノ閣下の御采配の下でささやかながら剣を振るいました」
ペイスの会話に、ウランタもまた汗顔の至りですとささやいた。
先だっての海賊討伐で武名を高めたボンビーノ子爵家ではあるが、その功績が誰にあるのか、当事者は良く知っている。
建前ではボンビーノ子爵が総指揮をとっていたことになっているし、実際の責任者はウランタだった。だが、内実がどうであったのか。自分の功績だと誇らしげに語るほど、ウランタの面の皮は厚くない。
いけしゃあしゃあと、自分は大したことはしていないと言っているような厚顔野郎とは大違いだ。
「今日のような集まりに、モルテールン家の方が参加してくださることは少ない。折角の機会、貴君も是非楽しんでいって貰いたい」
「ありがとうございます閣下。是非“楽しませて”いただこうと思います」
慇懃に頭を下げ、その場を辞したモルテールン家とボンビーノ家の両人。
「ウランタ殿」
「はい?」
「先ほどの閣下の言葉はお聞きになられましたか?」
「えっと……どの言葉のことでしょう」
「僕に対して、楽しんでいくように言われたことです」
「はい。それは確かに聞きました」
良くある社交辞令だ。招待しておいて、まさかその辺の隅にでも居ろとは言えない。
モルテールン家に対してあまり友好的でない者が集まる場。楽しむのも難しいだろうが、モルテールン家としても何かしらのメリットがあって参加しているはずである。
そう考えるも、ペイスの言葉の真意が分からず、ウランタは事実のみを口にした。
「ならば、いざという時にはそのことを証言いただくかもしれません。重ねてご確認ですが、会の主催者ハップホルン卿は僕に楽しめとおっしゃった。間違いないですよね?」
「ええ、間違いなく」
ニヤリとペイスは笑った。
言質を取ったと言わんばかりの表情に、ウランタは背中がぞわぞわとする感覚を覚える。
さっさと帰るべきだと、第六感が警鐘を鳴らした。
「では、他の方に“少しだけ”挨拶してから僕も帰ろうと思います。ウランタ殿はどうされますか?」
「……付き合いましょう」
ペイストリーに常識は通じない。
それを良く知っているはずのウランタだけに、何かをしでかしそうな雰囲気に好奇心が勝った。第六感の警鐘を無視して、ペイスにくっついて場を移動する。悲しいかな、まだ少年と言える年の男にとって、疼く好奇心を抑えるのは相当に難しいのだ。
モルテールン家の一同がその後、挨拶に向かったのは、伝統派の中でもコチコチの守旧派が集まっているところだった。
ゴーバヒィッフェ準男爵家、カールヴィッフェン準男爵家、デトモルト男爵家、ブールバック男爵など。顔ぶれを見れば分かる通り、モルテールン家のことなど汚らわしい犬とでも思って居そうな名門ばかり。
「諸卿、お揃いですね。遠い御領地から、わざわざご苦労様です。ハップホルン子爵もお喜びでしょう。実に感心な心掛けです」
ペイスから声を掛けられて、露骨に全員が顔を顰めた。無論、ここに居る全員が、誰に声を掛けられたかを良く知っている。ある意味、一番警戒するべき相手なのだから当然だ。
モルテールン男爵家嫡子。名門の血筋を穢した痴れ者の一家、というのが彼らが持つ印象である。
「貴様、無礼であろう」
真っ先に反応したのはデトモルト男爵。血縁上はペイスにとって大叔父となるわけだが、現在はデトモルト男爵家当主である。
この年かさの老人が憤ったように、他の面々も皆嫌そうな顔を隠さない。
一緒に来ていたボンビーノ子爵などは、既に傍観を決め込んだ。やっぱり碌なことじゃ無かった。帰っておくべきだったと心中では泣きそうになっている。
「ボンビーノ子爵からお声がけ頂くならまだしも、成り上がりの男爵家の子が我らに声を掛けるとは。下賤な者は礼儀も弁えんようだな」
ディルーノ=ミル=ゴーバヒィッフェ準男爵が、全員を代表するかのように口を開いた。他の人間も頷くような様子で同意を見せる。
彼の発言はいささか辛辣だが、言っていることは間違っていないのだ。彼らの中では。
社交の場において、子供は親の位階の一つ下に準じる。男爵家の子なら、準男爵の人間と同等として接遇するのが常識。そして、目上の人間に目下の人間から声を掛けてはいけない。マナー違反だ。
マナーに違反すること自体は別に違法行為という訳ではないが、電車で盛大に音漏れさせて音楽を聞いたり、大勢で道を塞ぎながら歩くぐらいには、顔を顰められる。
集まっていた守旧派の面々の中には、モルテールン家当主と爵位が同等の人間も居る。誰あろうデトモルト男爵がそうだ。
モルテールン家に対しては、ただでさえ良からぬ感情を持っているのに、更に自分たちを下に見るような無礼な態度を取られては、放置できない。舐められるというのは、多くの不利益をもたらすのだから。
だが、憤る面々を前にしても、ペイスはどこ吹く風と平気な顔をしている。
「はて、礼儀とは何のことでしょうか? 私が見るに、無礼であるのは貴方達のように思うのですが。どうやらここに居るのは貴族ではなく、礼儀も弁えない無法者のチンピラだったようですね」
「何!?」
「モルテールン卿、いささか言葉が過ぎよう」
集まっていた守旧派も全員が全員喧嘩っ早いわけでは無く、穏健な者も居た。しかし、自分たちが無礼と言われるのは聞き捨てならないとペイスを嗜めようとする。
「あなた方も言葉遣いに気を付けていただきたい。こちらが礼を尽くし、挨拶にきてやったというのに無礼者扱いとは、どういう了見でしょう。無礼というならあなた達の態度が問題でしょうね。こんな人間がこの場にいると、ハップホルン子爵の御顔に泥を塗ることになる。実に嘆かわしい」
「モルテールン卿、そこまで侮辱されてはこちらも考えがあるぞ?」
「考えがあるのはこちらの方です。その足りない頭を捻ってよく考えていただきたいです。僕は今日、ここにはモルテールン家当主名代としてではなく、フバーレク辺境伯家名代として来ているのです。その意味が分かりますか?」
ペイスの言葉に、顔色を変えたのは守旧派の面々だった。
社交の場において、親子の扱いは先に述べた通り。養子も一応は実子に準じる扱いになるので、接遇の対応に違いは無い。
だが、誰の子として来るかで、その意味合いは大きく変わる。
ペイスがモルテールン家嫡子として参加しているなら、守旧派の面々が言うようにペイスの対応は無礼と取られて仕方がない。少なくとも目上に取る態度ではないからだ。
しかし、男たちが失念していたことがあるとするならば、ペイスは既にフバーレク家の娘と結婚しているのだ。つまり、亡くなった前フバーレク辺境伯の義理の息子。
現フバーレク伯とは義理の兄妹であり、名代として出向くのには十分な理由と立場を持っている。
前フバーレク伯の子としての立場。仮に現当主から二親等離れた孫と同等に扱うとしても、男爵に準じた扱いをせねばならない立場。場合によってはそれ以上として扱うこともある。
さて、そうなると、ペイスがデトモルト男爵達に対して同格ないしは格上のように振る舞った対応は、正しかったことになる。
貴族として普通の対応を取った人間に、無礼だと言ってのけた行為をどう取るか。
「馬鹿な!! 何でフバーレク家などと」
「馬鹿? その言葉、最早見過ごせません。モルテールン家並びにフバーレク家に対する最大の侮辱と取ります。言い訳は無用」
守旧派と呼ばれる人間は、総じて常識的な人間。まさか、他家からも羨まれるような家の嫡男が、嫁の実家の使い走りみたいな真似をしたがるなどとは思ってもみない。
ましてや、わざわざ嫁に協力させてまでごり押ししているなどと、誰が考えるだろうか。
「コアン、グラス、トバイアム。特に対応が酷かったデトモルト男爵とゴーバヒィッフェ準男爵を拘束しなさい。モルテールン家のみならずフバーレク家に対しての無礼。捨て置けません。それに品性下劣な態度でハップホルン子爵の顔に泥を塗った彼らを放置しては、我々がハップホルン子爵の名誉を軽んじたと思われかねません。抵抗して暴れれば、抜剣を許可します。腕の四~五本ぐらいなら、へし折って構いません」
「モルテールン卿!!」
「違う。誤解だ。話せばわかる!!」
「釈明はフバーレク伯の前でしていただきましょうか。それまではくれぐれも抵抗されぬよう願います。……いえ、是非抵抗してください。丁度試し切りをしたかった剣があるので」
事前に用意していたとしか思えない手際の良さで、二人を縛り上げていくモルテールン家の武闘派三人。護衛とのもみ合いも含めてかなり乱暴にやるものだから、縛られる二人はあちこちに痣が出来る。
「では、ウランタ殿。この後のことはお任せ致します。見ておられた通りの事情です。この無礼者どもは当家にて身柄を預かりますので、ハップホルン子爵にもよろしくお伝えください」
それではと言い残し、デトモルト男爵とゴーバヒィッフェ準男爵を縛り上げて連れて行ったペイス。
非常識が二乗されたような急すぎる展開に、ボンビーノ子爵はポツンと置いて行かれる。
「……どう説明するんでしょう?」
結局、ウランタは事情説明のために、その晩はハップホルン子爵家に一泊する羽目になるのだった。
リコリスの協力がお菓子作りだと、誰が言ったんだ?





