36ポイント目「 門番(キーパー) 」
広い校庭のような草もそれほど生えていない10階の様子はさながら”決戦場”と言った感じの印象を受ける。
「 さて、奴は準備万端のようだぜ!!シンジ避けろ!! 」
10階に降りてすぐケインさんの荒げた声が飛ぶ。
横に避けると同時に黒い影が立っていた場所を駆け抜けていく。
”黒い旋風”まさにその言葉がピッタリの速さの魔物がこちらを振り返り佇んでいた。
「 黒い・・・ユニコーン!? 」
そう、眼前には赤い禍々しい角を生やした身体の引き締まった黒い一角獣がこちらを振り返り立っている。
「 何だこいつは!! 」
「 どうかしたんですか? 」
「 普通の門番のイヴィルホーンにしてはサイズがデカすぎるし、何だあの禍々しいオーラは!! 」
よく目を凝らして視てみるとたてがみだと思っていた物は”揺らめく黒いオーラ”だった。
しかもゆらゆらとしたその”黒いオーラ”は全身を覆っている。
「 来るぞシンジ!! 」
その声を聞いた瞬間、踵を返した”黒い旋風”がこちらめがけて駆けて来た。
俺はなんとか避けたもののほとんど紙一重のような状態だ。
俺が避けてから1秒も立たずに俺が立っていた場所に赤い角を突き出し駆け抜けていく。
「 速い・・・魔物知識に一致するのはないのか? 」
と考えていると今度は”黒い旋風”はケインさんの方へ駈け出した。
「 速さもイヴィルホーンの比じゃねぇな!! 」
すかさずケインさんは避けながら自分が立っていた場所を”旋風”のように駆け抜けていく”黒い旋風”を見つめながらボヤいている。
盗賊鼠よりも遅いはずなのだが速く感じる。
そこで少し違和感を感じた俺は
「 ケインさん、結界張りますから!! 」
「 わかった、ありがとなシンジ 」
俺もケインさんも奴を視界に入れながら少しの動きの変化をよく見て旋風のような突進を避けていく。
「 ケインさんいきますよ!!結界発動!! 」
結界を自分とケインさんの周りに張り巡らせたところで謎が解けた。
「 何だこれ!! 」
ケインさんが驚いた声を上げながら俺と自分の足元の結界付近を見ていた。
結界の外側では影のあるところから”黒く淀んだ揺らめく物”が足に取り付こうと結界に絡みついているのが見えた。
「 ケインさん、それは”遅挺魔法”ですよ そして奴はイヴィルホーンの上位種の”シャドウホーン”です 」
シャドウホーン・・・イヴィルホーンの上位種。イヴィルホーンよりも優れた体格とスタミナそして一番の違い”魔法”を使う。角から貫いた物の血を吸収し糧とする。角は大変貴重で魔力触媒としての価値が非常に高い。
魔物知識でヒットした情報はやはり正解だった。
結界があるかぎり奴の「魔法」は役に立たなくなってしまう。
シャドウホーンも理解したのか魔法が効かないなら速さで勝負と言った感じでケインさんめがけて駆け出す。
「 ”これ”さえ効かなきゃよぉーお前なんかに遅れを取らねぇんだよっ!! 」
足元の”黒く淀んだ揺らめく物”を一瞥した後でシャドウホーンとすれ違う前にケインさんが剣の柄に手をかけ剣を勢い良く引き抜くと
「 武技!!チャンクスラッシュ!! 」
ケインさんの無粋なほど無慈悲な一撃がシャドウホーンの首元を斬りつけ勢い良く青色の血が吹き出した。
ちなみに敵のあらゆるモノを阻む結界だがこちらからの攻撃の際には一部無効になるように調整している。
「 あれだけ深く斬りつけたんだかなり効いたはずだぜ 」
ケインさんが剣を自分の鎧の肩当てにカンカン当てながら血を流しながらよろよろしているシャドウホーンを見つめながら呟く。
とどめを刺そうと近づこうとした時に
「 おお、凄いデカイ門番ですね 」
「 アレもイヴィルホーンか? 」
「 さすがケインさんだな!!ん、あいつはこの前の新人 」
突然の来訪者にケインさんも自分も奴から目を離してしまった・・・これが良くなかった。
「 お前ら避けろ!! 」
ケインさんの叫びも虚しく満身創痍のシャドウホーンは未だに継続させていた”遅挺魔法”を三人の探検者まで伸ばし持てる力を振り絞り全力で三人の元まで駆けそのうちの2人をその禍々しい赤い角で貫いた。
重力に逆らうように2人の探検者から流れる血液は角まで球体で上がると吸収され刺さっている角からも血液を吸収し探検者2人は顔色が白くなり腕も力ない感じでダラーンと揺れている。
「 アル、ロブ!! 」
眼の前で貫かれている2人の仲間を前に残された探検者は2人の名前を叫ぶしか出来なかった。




