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序章
「お前はもうただの人間じゃないんだよ」
漆黒の髪と瞳を持つ青年のようで、壮年の大人のような男が語った。
「お前の力はすでに人をこえている。覚悟を決めておくことだな」
男は少女を見つめながら闇の中へ消えていった。残されたのは、涙でほほを首を服をぬらした黒髪の少女のみ。
男が消え、少女の涙が砕かれ沈没した地面にこぼれた。薄い闇がはれていく。そこには無表情の17、8歳ほどの少女が座りこんでいた。こぶしからは大地に切れ目がはしり、彼女の身長以上の穴があいていた。
少女の瞳には涙一つない。ただ遠くを、その黒い瞳で見つめているのみであった。