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涙の帝国Ⅱ 〜狂乱の宴〜  作者: 下松紅子
第一章 殺人事件
4/7

殺人事件-3

。。。



廃墟同然の工場の一室、事務室らしき場所が赤く染め上げられており、生臭い匂いが充満していた。

もちろん、これからの血は全部被害者の血なわけではあるが……。


「いやぁ、血みどろだね(棒)」

「血が苦手なら来なかったらよかったのに」


ゲームでは人をザクザク殺して血ブシャアは慣れていたはずなのだが、やはり三次元(リアル)ではダメらしい。

吐くほどには至らないけど。


「いやいや、本物の血を見ておきたくてね」

「それならいつでも見れるよ。裏仕事で」

「そういうことをサラッと言われても、どういうリアクションをすればいいか私にはわかんないんだけど」


確かに桜宮相談所の表向きはこの国の民の悩みなどを解決するということ。現にこうして殺人現場に来てるわけだ。

だが、裏仕事はシャルロット王子の護衛から暗殺まで。

必要な時は人を殺しても良いっていう許可も貰ってるらしい。


「こんにちは、隊長さん」

「これはレバレビィさん、前回はありがとうございました。……今回は連れが多いようで。しかも女王様まで」


中年の衛兵の隊長が私を見るなり、嘲笑うように鼻で笑った。

どうやらまだ、完全に私を認めたわけじゃないらしい。

だが、どこか隊長は苛立ちを見せていた。

それは私に対してとは違う苛立ちだ。


「…隊長さんも大変ですねえ。『他国』の奴らに問題を起こされて事件を進めようにも国境、また差別の問題があるから事件が進まないし、遺族の者達に犯人を捕まえてくれって言われてるから捜査を打ち切りにできなくて苛立っている、ってとこだね」

「へえ、涙ちゃん気づいてたんだ」

「何と無くだったけど、隊長の苛立ちで確証したんだよね」

「…っ!?」


驚いたように隊長が目を剥く。

理由はいかにも単純だ。

死体があまりにも(むご)いからだ。

死体は上半身と下半身が分かれている。『人』が上半身と下半身を斬るには力が無いあまりに何度も切り刻まなくてはならない。

(いな)、死体は一刀両断でキレイに分かれている。

一刀両断するにはそれなりの力が必要になる。

ならば、犯人は『人』では無くなる。

そう、他国の種族だ。


「しかもこの事件は連続殺人事件だということも知っていたんだね、涙ちゃんは」

「あのな、駿。お前がこの間堂々と『いやあ、連続殺人事件だって! 怖いね、涙ちゃん!』って言っていただろうが」

「そうだっけ?」


しかも清々しい笑顔でね。


「…というわけで……隊長、(おつ)……」

「か、帰ろと?」

「…だよね、涙……?」

「いえっさ。お疲れさん、隊長。あとはこっちでやるから」

「は、はあ…」


そう、返事をした隊長は状況についていけないまま帰って行った。



。。。



「んでー、どうすんの? ぶっちゃけ他国との問題になると面倒だし、解決が遅れちゃうけどー?」

「んなもん、シャルに任せる。こっちは犯人を見つければお終いだし」

「丸ごと放り投げたねー。正味、どう足掻いたってそうなるわけだもんね」


やれやれと時雨が首を振る。

他国との問題とか私にとっては得意分野じゃないから無理だし。

シャルロット王子、通称シャルに頼みたくはないけどあいつはあれでも王子様だかんなー。

この国の王だよ? 王子だよ?

今までこの国が安定してきたのが謎だわ。


「でも涙ちゃん、どこの国の奴が何の目的で殺したのか分からないから、まずそこからじゃないかなあ?」

「……面倒だから過去見る」

「能力に頼っちゃったよ」


さすが涙ちゃん、と付け加えて駿が言った。

私は元の世界で引きこもりになった理由がこの変な『能力』でもある。

この世界の人類は何かしら能力を持っているらしい。

きっと、私もこの世界で生まれちゃったんじゃないかと錯覚する時もある。

ちなみに私の能力は触れたものの過去と未来、酷い時はその人死に際、または物が壊れる時まで見えることもある。


「………」


死体は持っていかれたのでその人の過去は見れないが、その死体があった場所に手を当て過去を見る。

瞼の裏で鮮明に過去がフラッシュバックする。




『待ってくれ!! 何故だ!? 私は貴様らに協力してやったのだぞ!?』

『……女王のご命令だ。お前を殺す』

『金ならある! いくらだ?! いくらが欲しいんだ!?』

『金なんぞいらない。俺が欲しいのは………****だ』

『だ、誰だ!? 連れてきてやるから俺を殺さないでくれ!ーーーーうわぁぁぁぁぁ!!!』




瞼を開け、呼吸を戻す。

背中や頬に冷や汗が(つた)っていていく。


「…涙……大、丈夫?」

「あぁ…おう…多分、殺されたのはお偉いさんだ。金で解決しようとしていたからな。相手は兜を被っている鬼族の奴だった。騎士みたいな鎧を着ていたし」

「……そいつ、知ってる…」

「本当か?」


ラティが小さく頷く。

時雨も駿も心当たりがあるのか、顔をしかめた。

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