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涙の帝国Ⅱ 〜狂乱の宴〜  作者: 下松紅子
第一章 殺人事件
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殺人事件

今日も朝が来た。

私の生活は元の世界に居た頃と変わらない。

まず朝が来れば寝る。もちろん引きこもりにとってもニートにとってもお天道様の光は天敵でしかない。だからカーテンは必ず閉める。

昼間の良い子がおやつを食べている時間帯に起床。手慣らしと頭の体操に軽くゲームをする。

そして夜がくれば朝日が登るまでゲーム三昧(ざんまい)


「もう8時…早いけど疲れたし寝るか…」


ゲームデータをセーブし、ログアウトする。

さて私もプリンを食べてログアウトーーー


「おい! (るい)! 今日という今日は寝かせはしないぞ!!! お前の仕事が山ほどーーー…涙、どうかしたのか? 冷蔵庫を開けっ放しで固まるなんて」


芯咲(しんざき)(ゆかり)

いつも整えられている燕尾(えんび)服に手を覆い隠す黒い手袋。そしてこいつの堅苦しさを表す黒縁(くろぶち)メガネ。

……だが、今はそんなことどうでもいい。


「………………ない」

「何がないんだ? というよりいつも言っているだろ、ちゃんとしたご飯を食べろって。今から作ってやるからそれをーーーー」

「プリンがないっっ!!!」


昨日、箱買いしたタマプリンが一つ足りないのだ。

タマプリンは近くの駄菓子屋、三戸さんが営んでいる駄菓子屋の絶品プリンだ。

あれがあればやる気も出て、一日を生きれる。

なのにーーー。


「……あいつか」

「え、ちょ、おい涙!! 服を着替えてからにしろ!」

「そんなもんプリンに比べたらプリンのほうが大事じゃい!! ていうかプリンと比べるほどでもねーけど!!」


そう言い、あいつの元へ全力疾走した。



。。。



「駿!! てめええええええ!!! 私のプリンを食べやがったなああああ!!!」

「あはっ、ばれっちゃった? 別に一つくらいいいじゃん。あんなに溜め込んでる訳だし」


緋山(ひやま)駿(しゅん)

ボサボサ頭に黒のコート。

体格も身長も平均的だが、顔だけは整えられている。

いけすかないやつだ。


「いいか…駿……その何にも詰まってない脳に叩き込んで覚えろ…プリン一つで私の生死がかかってるんじゃあああああ!!」

阿呆(アホ)か…」


と私を追いかけて来た紫が呟く。

たが、そんなことはどうでもいい!

私にとってプリンはありがたーいものなんだよ! 神以上のものなんだよ!!


「じゃあ、僕は逃げるとしようかな。スタコラサッサー!」

「あ! 待ちやがれ!!」


ここは屋上。駿は屋上から飛び降りた。

あの野郎、私が屋上から飛び降りれないから諦めると読んだのだろう。

だが、()めてもらっては困る!

なんせ、私の脳内には『敗北』なんて文字はないのだから!


「私のプリンを返せゴラあああああ!!」


柵を飛び越え、屋上から飛び降りる。


「っておい! 涙!! ……あのバカ共…」



。。。



無事に草木に着地。

この紅の帝国(あかのくに)の地図、家の配置、人の行き来、職業(ジョブ)、草木の配置、全て頭に入っている。

だから飛び降りた前、この草木がクッション代わりになってくることは想定済みだ。


「強情だなあ」

「見つけたああああ!! 待て駿!」


と、足を一歩出した瞬間。

駿と私の上から水が降ってくる。

しかもだばーっと。

おかげで全身ずぶ濡れだ。


「もう、二人とも頭を冷やすことが必要なのぉ」

「あ、杏さん…」

「あははっ、顔を洗う手間が省けたねー」

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