表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンセプト・アーリア  作者: ソラ
第一章 学園闘争編
5/6

1ー4

草壁に言うとおりではないが、本当に優しい検査だけだった。

まず入口では、全ての所持品、端末、時計、服全てを預けるという形で取られ、全身をくまなくシャワーで綺麗にされた。

医療服を着せられ、レントゲンや血の検査など基本的な検査。

さらに本人であるかどうかの簡単な口頭質問。

そして学力試験。


・・・君は、中学生の問題も解けないのかね、単純馬鹿ではなくただの馬鹿だったか。


俺の答案を採点した草壁は、馬鹿にしたように、いや実際に馬鹿にして言ってきた。

仕方ないだろ、俺は、ほとんど学校に通ってなかったんだから。

だが草壁は、問題なし・・・猿並みの知能は、あるようだ。

と俺に見えるようにこれみよがしに採点用紙に書き込んだ。


【草壁】「ああ、いくら馬鹿だろうと構わないよ。ここは、そういう学校だから」


そして馬鹿でもわかる算数の問題集というのを渡して言った。


【遥】「馬鹿にすんな!!」


最後は、能力検査だった。

概念能力検知機と測定器を数値化して、級位を図るのだ。

大体おおまかな別れとして級位の強さが設定されている。


第一級概念能力者・・・世界の物理法則を捻じ曲げ、世界を崩壊しかねない者

第二級概念能力者・・・能力を使い、大量虐殺が可能な者

第三級概念能力者・・・能力を使い、対人殺害が可能な者

第四級概念能力者・・・ほとんど力はなく手品と変わらない類の者

第五級概念能力者・・・普通の人間が持っている物理法則の概念


人は、誰でも概念を持っている。

だからこそ人は、同じ物理法則の元、生きていけている。

俺達は、ただ思い込みやトラウマで概念を広げてしまっただけの人間。

何ひとつ普通の人間と代わりはしない。


【草壁】「ははあ、さすが猿パワーだね。見事なもんだったよ」


概念能力、命名筋肉男を発動させて、岩を持ち上げると草壁は、嫌にいい笑顔で言ってくる。

くっそ・・・今頃咲夜は、どんな検査うけてるんだ?

草壁の笑い顔で力が抜け、概念能力が元にもどり、岩が足の下に落ちそうになる。

・・・所詮借り物の能力だからな、長続きは、しない。


【草壁】「へえ、すごいね3トンくらいは、軽く持ち上げるか」

【遥】「べつにまだまだいけるが」


俺は、自分の細い腕を曲げ、力瘤を作る・・・相変わらず成長しないな。

それに・・・この概念能力に重さは、関係ない。

例え、地球でさえ支える大地があったら持ち上げれるだろう。

あいつに感謝しないとな・・・


【草壁】「う~ん。どうもはっきいりしないな。君の能力は、筋肉男。だけどそれだけじゃはっきりわからないんだよね。君の筋力が増大しては、いない、また持ち上げた結果だけを残す能力でもない」

【遥】「俺だって能力がわからないからここで調べてもらおうと思ったんですよ」


【遥】(これ以上追求されて、アイツのデータを閲覧出来る立場にあるならまずいからな)


【草壁】「ふ~ん。むずかしいな。君の能力値は、未知数。全く級位の付け方ぐらい難しいものは、ないよ。例えば、第四級概念能力者、そうそう君が来る前にねいなくなった三井という少年がいたんだがね」

【遥】(どうしてここで三井の名前を出す?)

【草壁】「彼の概念能力は、手を触れないで折り紙を折ること。それだけでは、確かに手品の域で人を殺すことなど不可能だ」

【草壁】「だがもし彼が概念を変化させて、人間を折り紙と認識するようになったとしたら?彼は、手を触れないで人間を折ることができるのかな?」

【遥】「・・・少なくともまともな神経があるなら消えた三井とやらもそんなことをしやしないでしょ」


俺の目をじっと草壁は、見てきたがすぐに笑顔に切り替わった

こちらを見る表情だけでは、何も察せなかった。

俺は、無表情と心で唱え、表情を変えないようにする。



【遥】(三井が消えた後、いきなり来た俺達を疑っているのか?)

【草壁】「そうだな、だがもしもと言う事は、ある。・・・とまあそんな風に概念能力は、未知数」

【草壁】「最後に概念強度数について聞かせてもらるかな?」

【遥】「・・・さあ、何人ぐらいだろ。車くらいなら持ち上げたところで火事場の馬鹿力って納得しますから・・・そうだな。ビルを持ち上げるとかぐらい、100人以上いないと無理なんじゃないですか?」


概念強度。

概念能力者をしばる現実の物理法則。

概念を使用している所を普通の人が見た時、双方の概念の衝突が起きる。

ぶつかりあい、勝った方の概念が現実となる。

能力者の概念が負けた場合、物理法則のとおり、概念は、発動しないことになる。

逆にあまりに概念が小さすぎると手品としてしか認識されなくなる。

つまりは、概念強度数を越える人数に目撃されると能力が発動しない制約。


これこそが政府が概念能力者をひた隠しにしてきた理由。

概念能力が世に公表され、能力者がいるという概念が人々に広まってしまうと、概念の暴走を止める人がいなくなる。

今ままで人が手品だと信じていたものが能力になり、概念能力者の概念がこの世に浸透してしまうからだ。とは言っても・・・コンセプトによって公表された今となっては、ほとんど意味がない代物だ。

全世界の人間が概念能力の存在を知ってしまっている。


【草壁】「ふうん、結構多かったんだね。なら君は、第二級概念能力者だ」

【遥】「はああ?この能力で大量殺人が可能なレベルなんですか?普通に対人レベルの第三級能力者でしょう」

【草壁】「うん、そうしようと僕も思っていたんだが、君のビルを持ち上げたらという不穏な言葉を聞いて、その危険思想も数値に足したから」

【遥】「っておい、けどそれじゃあ」

【草壁】「なにかまずいことがあったのかな?」

【遥】(咲夜と打ち合わせていたのは、第三級概念能力になることだ・・・このままだと離れ離れになる)

【草壁】「彼女から離れるのが寂しいのかい?」

【遥】「違うわっ!!」

【草壁】「・・・今、データを見たけど、彼女の検査結果第二級概念能力者に分類されてるよ。良かったね」

【遥】「はあ?(あいつ、何やった?)」

【草壁】「ともあれこれで検査は、終わりだ。学校は、明日からだ。よく書類に目を通しておくこと」

【草壁】「間違っても初日の遅刻は、厳禁だから。今日は、しっかりお休み」


草壁は、愛想笑いに戻って、生暖かい視線を送って来やがった。

俺は、医療服を脱いで用意されたこの学校の制服を着る。

といってももう寝ることになるのですぐに脱いでしまうのだが。

それと、腕に小さなマーカをはめられる。

自力では取れないようにしてあり、色々と注意事項は、あるけど説明するのは、面倒なんでごめんね。と分厚い仕様書を渡された。

それが終わる頃には、遥は、すっかり疲れて果て、だらだらだった。

色々言ってくる草壁にお前は、俺の父親か!?と普段なら言っているのだが・・・


【草壁】「この選択は、正しいと思うよ。なんたって第二級には、おもしろい子がたくさんいるからね」

【草壁】「だから、君が知りたい事もきっとみつかるんじゃないかな」


俺は、思わず振り返ると、草壁は、もう研究室の奥の方に消えていた。


【遥】(あの野郎。確信か?それともはったり?・・・だったらとっくにばれてるな)


俺は、頭上の監視モニターを見上げた。

あれがあれば嘘なんてすぐにお見通しだろう。

喰えないやつだな・・・



校舎の門をくぐると先に終わった咲夜が待っていた。

俺のげっそりとした顔と違い、咲夜の顔は、やけに嬉しそうだ。

思わず草壁の作為を疑う・・・

女子の制服をひらりとさせて咲夜は、自分の姿を見渡す。


【咲夜】「う~ん。やっぱり前の学校の制服の方がいいなあ、こっちのほうが生地はいいんだろうけど」


こちらを伺いながら言う咲夜に思わず遥は、聞きたいことを聞いてしまう。

聞かなきゃ落ち込まないようなことを。


【遥】「咲夜、お前の検査ってどうだった?」

【咲夜】「どうって?女の看護師が優しくしてくれて注射が苦手だって言ったら、全然痛くない針に変えてくれたし、夜食もくれて・・・ハルの所も同じだったんでしょ?」

【遥】「不公平だ・・・男の研究員、痛い注射、抜かれるだけで入る物はなかったよ・・・」

【咲夜】「ん?なんか言った?それよりこれ食べる?」


咲夜は、服のポケットからクッキーを出してきた。


【遥】「いらん!それより第二級とは、どういうことだ?第三級概念能力者だったんじゃないのか?」

【咲夜】「ごめ~ん。質問の時にあの事件でビルを真っ二つにしたのを話しちゃって、危険思考がどうとかで加点されちゃって。そういや遥は、どうなったの?」

【遥】「・・・俺も第二級だ」

【咲夜】「何だ、ハルだって、失敗してるんじゃん」

【遥】「・・・少なくとも俺は、ビルがどうとかとは一切言っていない!」

【咲夜】「何、怒鳴ってるの?」


いつまでもここで話しているわけにはいかないな。

このまま話していると咲夜だけでなく俺もボロが出て、公安の人間だと言う事を話してしまいそうだ。

盗聴器も仕掛けられているだろうしな・・・


【遥】「ほらさっさと寮に行くぞ。明日は、早いらしいからな」

【咲夜】「わかってるわよ」


夜、学校の生徒だけが寝静まっている中、俺達は、用意された自分の寮の部屋に向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ