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背中ごしにセンチメンタル 其の2

普段遅刻しない程度のゆったりした登校をしてる僕にとって、人気の少ないグランドや下駄箱は新鮮だった。

「九鬼くん、おはよう!」

そこに挨拶をしてきた女の子はクラスメイトの東風さんだ。

「おはよう東風さん。早いね、もしかしていつもこんな時間?」

「あはは。そんなに早いってことも無いと思うよ?

部活の朝練あるコはもっと早いしね。」

東風さんはそう話し微笑を絶やさない。

何気ない話をしながら一緒に教室へ向かう。

僕は人に自分から話しかけることをあまりしない。

ましてや女の子に積極的に話しかけることなど皆無に等しい。

人間嫌いってわけじゃないけど、”仲良くなる”事に少しだけ抵抗がある。

やろうと思えば表面上はすぐにでも仲良くなれる。

でも、それだけだ。

本当の意味での友達は数人で十分だと思う。

でも、だからって無関心で敵ばかり作ることも無意味だと思う。

こんな風に考えたのは小学校から中学校にあがった時に、今まで仲が凄く良くて、毎日遊んでいた沢山の友人達が、中学にあがるとそっちで出来た友人と共有する時間を増やしていった。

大丈夫。別に怒りを感じてるわけじゃないんだ。

相手にする人数が増えたなら、それだけ個々の対応時間が減る。

決して仲が悪くなったわけじゃない。

でも、時間を長く共有してる関係の方がより近くなってゆくだけなのさ。

それに気がついたとき、とても寂しく、虚しい気持ちになったんだ。

だから”本当の友達”以外は着かず離れず、浅く広くがいいと思うのさ。

いずれ離れてゆくなら……そのときにあの感情を抱かないで済むなら。

そしてこんな僕だから、クラスメイトとは必要最低限のコミュニケーションしか取っていなかった。

「なるほどねー。毎回みてる番組ってあんまり無いから知らなかったさ。」

「毎週見てみると面白いと思うよ?オススメするよ!」

しかし東風さんは違っていた。よく話しかけてくるんだ。

それも今のような他愛もない世間話を暇さえあれば話しかけてくる。

東風さんには仲の良い友人がいてよく4人でグループを組んでお喋りなどをしてた。

そっちを差し置いてでも僕と話をするのが不思議でならなかった。

「おはよー」

教室にすでに来ているクラスメイトに挨拶をしながらお互い自分の席へと向かう。

カバンから教科書などを出して、机に収納していると、朝練終わりの連中が教室に入ってくる。

最初数人だったのがあっという間にクラスの半数ほどに。

挨拶や世間話をしているうちに、ショートホームルームの時間になっていた。

そしていつもと変わらない退屈な授業が始まるのだ。


もう放課後だって言うのに、まだ一度も御巫くんに遭遇してないなあ。

安堵からほっとため息をついてしまう。

教室には数人のクラスメイトしか残っていない。

あんな夢をみた原因かもしれない彼からの告白も、昨日の放課後だった。

まさか予知夢ってことはないだろうけど不安は募る一方だった。

(すぐにでも家に帰ればいいんだろうけど、廊下に出でて御巫くんに出会ったりしたら……)

なんて思うとなかなか動くことが出来ない。

ただ考え込んでいるだけで時間だけが過ぎていった。

「九鬼くん、まだ帰らないの?」

「え……?」

かけられた声に顔をあげ、辺りを見渡すと、そこには誰もいなかった。

「あれ?みんなは?」

「もう帰っちゃったよ。気づかないくらい考え事してた……?」

すこし不安げな表情で話しかけてくる女の子は東風さんだ。

「そ、そうかな?

今日の晩御飯は何かな~って考えてただけさ?」

自分でも苦しいとわかる言い訳だと思う……

けど、男の子から告白されて困ってる……

しかもそれは女子に大人気の御巫くんだなんて口が裂けても言えないさ。

「そうなんだ…………

でもあんまり考えすぎないで、まずは動いてみるのもいいかもしれないよ?

な~んて、御飯のおかず向けのアドバイスじゃないよね。

そ、それじゃあ先に帰るね、九鬼くんまた明日っ!」

急にきびすを返して教室から出て行ってしまった。

たぶん東風さんは、薄々何かある事に気がつきながらも詮索しないで帰ってくれんだ。

その気遣いが涙が出そうなほどありがたかった。

「そうだよね……ここで悩んでいても仕方がない。

なんとかこのまま遭遇せずに帰ろう!」

僕は廊下に飛び出すと、足音を立てないように素早く下駄箱まで早歩きで向かった。


「よし、ここまでは順調だ。

後は見かけられて声をかけられないように、家までダッシュあるのみさ!!」

上履きを履きかえると一つ大きく息を吸って、ぐっと止める。

気分的に息を止めてると全力が出るような感じになるよね。

そしてそのまま勢いよくグランドを突っ切っていった。

途中、クラブ活動中の顔見知りが声をかけて来たが手を軽く振るだけにしておき、猛ダッシュで学校から離脱する。

なんとなく校門で待ち伏せでもしているのかと思ったけど、御巫くんの姿はなかった。

しばらくして、スピードを緩め止めていた呼吸を再開した。

「ぷはっ……すぅーーーはぁぁぁ…………」

歩みは止めずに乱れた呼吸を整える。

「こ、ここまでくれば……だいじょぶだよね……」

ここから家までは普通に歩いても5分とかからない。

「ふー。なんとか御巫くんと出会わずに帰ってこれた……

とりあえず一安心できたかな……」

別に彼が悪いわけじゃない。

いや、御巫くんに告白されたこと自体が現実なのか夢なのか、自分の中で判断できないで居るんだ。

現実のことだったら、絶対御巫くんが悪い!

僕はいたってノーマルだ。

初めて付き合うなら絶対女の子の方が良いに決まっているさ。

でも、夢だったかもしれない、こんな状況で

 「御巫くんの告白は、受けられないよ。」

 「ん?告白ってボクが君にかい?あはは!ボクは男の子だよ?君も男の子だよね?あはは!」

なんて展開になるに決まってるさ!

だから直接確認なんてとんでもない話だった。

結局このことはスルーしているしかないのかな。

もし現実のことだったなら、御巫くんの方からその後のアプローチがあるはずだし。


「ま、考えても仕方が無いよね。お気楽になるようになればいいのさ。」

てくてくと自宅にむけて歩いていると、ふいに足が止まる。

「?」

なぜなんだろうか、歩き出すことが出来ない。

その場でぼーっと立ち尽くす。

「なんだろう・・・」

首をかしげて、なんでもないことを再認識して足を踏み出そうとした。


───────どさっ


すると目の前に人が降ってきた。

「・・・・・うわっ!?」

落ちてきた人と上空を交互に見ながら、口が勝手にわめき散らす。

「なんで?なにが?え?どこから?どうやって?」

誰も疑問に答えてくれるはずも無い。

落ちてきた人はぴくりとも動かない。

「まさか、死んで・・・!?」

思わず駆け寄って助け起こす。

「み、御巫くん!?」

顔をみてびっくり!なんと制服姿の御巫くんだった。

「息は……してるみたいだ。」

やけに軽い身体を抱きかかえて口元に耳を近づけると荒い息使いが聞こえてきた。

意識は無く、風邪の熱でうなされてるようにも見える。

「しかし、なんで御巫くんがいきなり降ってくるのさ?」

もう一度空を見上げる。

ここはさほど広くない一本道で、見上げた視界に入ってくるのは民家の屋根と電線くらいだ。

今の状況を説明できる仮説すら立てることが出来ない。

その上、御巫くんは気を失ってしまっている。

「まいったな……」

本当に困った。

しかし、このままにして置く訳にもいかない。

「とりあえず、家に運んで救急車でも呼ぶかな……」

すぐ近くに我が家もあることだし、ここは母さんという大人の冷静な判断を仰いだほうがいいだろう。

「うん。それがいい。そうしよう。」

となれば御巫くんをおぶって行かなきゃ。

一度上半身を置きあがらせて背中に……

と、おもって行動したところ両手に不思議な感触がした。

およそ人体にはありえない、ふっさふさの極上の手触りを放つそれは、

れっきとした尻尾だったんだ。

「……しっぽ…………しっぽ!?」

恐る恐る尻尾の根元へと手を滑らせて行くと、想像通り御巫くんの腰の辺りへつながっていた。

「ええええええええええええええええええ!?!?!」

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