郷愛
三作目ですね。
パーティは四人いて、リーダー兼剣士のライト(♂)こいつが語り手です。その他にはタンクのストライク(♂)、僧侶のホワイト(♀)、踊り子のキャメル(♀)の想定で書いてます。
その寺院は、堂々と、静かに僕らを待ち受けていた。
「今日はもう暗くなってきたし、ここで野宿しよう」
僕がキャメル、ホワイト、ストライクにそういうとみんなも同じ意見のようで首を縦に振った。
この寺院は故郷の近くにあった。ここに来る前日には各々自分の家に帰って家族との久々の談笑を楽しんだ。そして、村人に見送られて故郷を後にする。
「これも燃やすよ」
俺がそう言うと
「手伝う」
とストライクが手伝ってくれた。こいつは昔からぶっきらぼうのくせにたまに優しいところがある。ホワイトが惚れるのも納得だ。
パチパチと焚火の音が虫の声と共に森に溶け込んでいく。俺たちに課せられた任務はただ1つ、この寺院を壊すこと。
王が新しい宗教を作ったから古い宗教などいらない、すべて壊してしまえ、なんてくだらない戯言が理由らしい。先代の王が死んで、息子になってから国は崩壊の音を立て始めた。意味の分からない政策、王中心の国造り、中央が肥えていく中でその他の村はどんどん貧しくなっていく。
クーデターを起こそうとした奴はいた。そいつらは翌日、首だけになって机に飾られていた。亡命しようとした奴もいた。そいつとその家族は民衆の中で生きたまま焼かれていった。
「ライト、スープできたぞ」
ストライクの声が俺を現実に引き戻す。
「あぁ悪い、ぼーっとしてた」
湯気のたったスープを受け取る。コンソメのいい匂いと、ベーコンやキャベツの入っているこれには本来舌なめずりをするのが正解なのだろう。今は、する気にはなれない。
僕らのパーティは幼馴染同士で組まれている。その成果連携はうまくとれていて、個々の能力は平均より少し上くらいだが、チームの能力は群を抜いている、と評価された。そこそこ名の知れたパーティになった俺たちは王から課せられる様々な依頼をこなした。主に魔物の盗伐だったけれど。だから、命の危険を伴うこともあった。
「……やっぱ、味しねぇな」
おいしそうなコンソメスープ。本来なら大好物のはずだった。
「そりゃそうよ…。ねぇ、本当に私たちにはこれしかないのよね」
キャメルは不安そうだった。
「いまさら何言ってるんだ。もう、やるしかないんだ。この寺院を壊すしか…。」
この寺院には故郷にだけ伝わるおとぎ話があった。
昔、大賢者様が凶悪な魔物を封印した。賢者様はおっしゃった。この魔物に供物を与え、祈りを捧げよ。さすればこの魔物の中にある悪の心は浄化され、いずれそなた達を救う神となってくれるはずじゃ。
だからお祈りを面倒くさがる子供には、魔物が出てきて連れ去られる、という脅し文句が決まって出ていた。俺もよく母さんに言われた。
ホワイトがこの任務を受けてからこの寺院について調べたらしい。
俺たちがおとぎ話だと思っていたことは実際にあったことらしい。
大賢者様も、封印されている魔物も、お祈りをさぼった村人が何者かに連れ去られたことも。
賢者様の読みは外れていた。魔物はどこまで行っても魔物だ。浄化される悪の心は持ち合わせていない。持っているのは、悪の泥沼に芯まで浸かっている心と、人々が自分をあがめていると感じ取った時に使う優越感だけだった。
寺院を壊したらどうなるか。そんなことは容易に想像できた。封印は解かれ、俺たちがおろか故郷の住人居間で被害が及ぶ。
もちろん王にこのことを訴えた。高がおとぎ話だと一蹴されたよ。この国は、もう駄目だ。
「…星、きれいだな」
俺がそう独り言を言うも皆は何も言わない。次に口を開いたのはストライクだった。
「どこの空でもいっしょだ、こんなもん」
その声は冷たくも優しかった。
夢を見た。子供のころの夢。
四人で走り回っていた。何のためなのか、何が楽しいのか、何もわからない。ただただ走り回って、果物屋のアレンさんに叱られて。それでも走って、時計屋のベラス爺さんに元気なのはいいことだとほめられて。家に帰ったら今度は母さんから叱られて、父さんは笑っていた。俺は泣いていたはずなのに鍋から香るコンソメの匂いにケロッと機嫌を直してニコニコで一口ねだる。
「…朝か、」
目が覚めてしまった。ほかの三人はまだ寝ていた。「ここから目を凝らせば故郷の屋根が見える。ちらほら煙突から煙が立っている。みな、この平和な日常を当たり前のように享受していた。
後ろから三人の起きる音が聞こえた。
「おはよう、みんな。目が覚めちゃったって顔してるね」
俺のジョークに笑うやつなどいない。せいぜいホワイトが苦笑した程度だった。
みんなで一緒に故郷を見た。あの日鬼ごっこした街道、かくれんぼで使った大木、鼻を抑えて通った牛小屋。全部に思い出があった。俺たちが今日、悪の心を持ったものと戦う。
「早速やりますか。準備はいい?」
俺が問いかけるとストライク、ホワイト、キャメルの順に応えた。
「あぁ」「えぇ」「うん…!」
俺が指笛を鳴らすと鳩が飛んでくる。その鳩に手紙を括り付けて中央へ飛ばす。手紙の内容は「封印された魔物出現。壊滅状態。」
そして、昨日用意した焼死体を寝ころばせ、自分の首から下がっている金属の名札を各々焼死体にかけた。
こいつらは旅人だった。俺たちが寺院につくとお祈りをしている最中だった。こいつらの背格好は俺たちとよく似ていた。
俺たちの心に悪の心が芽生えた。もしかして、このまま亡命できるのではないかと。
俺たちはそいつを殺し、火にくべた。パチパチという音に吐き気を覚えた。
この魔物の足は遅いらしい。きっと故郷につくぐらいには中央の兵士が集まっているだろう。俺たちは焼死体として見つかるから家族が殺されることもない。
俺たちは寺院に火をつけた。そして、旅人たちから奪った服とカバンを身に着けて隣国との国境へと歩みを進める。
寺院が燃え広がる音を背に受け、郷愛と、悪の心を持ちながら。
初めての恋愛系じゃないし異世界系です。
何回か書いてて思うのはお名前を考えるのが難しいことですね。なにかモチーフ的なものを決めないとAIちゃんに考えてもらうしかなくなってしまう…。ということで今回の名前のモチーフはタバコの銘柄です。ライトはハイライト、ストライクはラキスト、ホワイトはウィンストン、キャメルはそのままキャメルです。
今回は異世界風のケルト音楽を聴きながら書きました。焚火の音もあるやつ。聞きながら読んでくれるとなんか世界感感じられるかなと思うので良ければぜひ。…あとがきに書くことじゃねぇなこれ。
あとなんか書いてて結構疑問が残りそうな部分があったのでちょっとだけ頭の中の設定を書きます。
Q寺院が壊されることを村人はわかっていたの?
Aわかっていないです。中世の設定なので情報伝達速度が遅いです。王が寺院壊しを始めたのは最近の話なのでこの村にはまだ来ていないのでしょう。鳩や中央の兵士は王のものなのでとてつもない速さで移動できます。故に兵士たちは魔物がつく前に村に到着することができます。
ほかにも疑問点残るとこいっぱいあると思うのでコメントかなんか書いてくれると喜んで返信します。
最後になりますが、三作目の駄作をここまで読んでくださりありがとうございました。




