12月1日 出会い。
都内の医大に通う美郷 涼太は3年目にして、自分の人生に迷いが生じていた。
そんな中、歩道橋の上で日下部 陽と出会う。
天使のような陽との出会いで涼太は自分のあり方を見つめ直していく。
街はイルミネーションまみれで行き交う恋人達の幸せそうな笑顔に俺は少しいらつきながら
ぶっきらぼうに進んでいく。
ー僕は、どうせオムライスの横に添えられたパセリのような存在だから。
何度も浮かんでは消えていく感情はどれも後ろ向きな物ばかりで、形容しがたい苦しみが
押し寄せる波のように繰り返していく。
ぼんやり家路に向かって歩く。足取りは重い、いつも通っている歩道橋。
車達は、まっすぐ迷うことなく進んでいるのに。
イルミネーションに吸い込まれていく光景をずっと見つめている。
「もう……無理かもしれない」
雑踏に消えていくように吐き捨てた思いを、走り去る車達が運んでくれないだろうか。
ポケットに突っ込んだ手。 左にはスマートフォン。右には四つ折りにした退学届。
それなりに厳しい医者の父と主婦の母の元でそれなりに不自由なく生きてきたつもりだった。
言われたとおりの人生をそれなりに。引かれたレールをまっすぐ、各駅停車で1つ1つタスクを回収して。
だけど、医学部3年のこの冬。 自分の人生に迷いが生まれた。本当にこれで良かったのかと。
これといった原因がないからこそ解決策もない。 燃え尽きたのかもしれない。
スマートフォンを取り出す。時刻は午前0時を回ったところ。
少し悩んで、父親宛にメールを送る。
〈人生を考えたい。〉
漠然とした感情。きっと厳格な父は怒るだろう。
医学部の学費は高い。 それでも今の自分には頑張ろうと思える気力がどこにもない。
メールを送り終えた後、電源を落とした。
いつしか、見下げるコンクリートが、自分を包み込んでくれるような気がして、
飛び込めば布団のように包みゴンでくれるような気がして、
体が少しずつ前に進んでいく。
「ねーぇ!何してるの!!!!」
下の方から声が聞こえる。
人が悩んでるときに騒がしい声だと少しいらだった。
視線の先を左に移すとバイクに寄りかかった少年がこちらをみて
手を振っている。
「嫌!ちょっ!! 橋の上の人 ストォォォオオオオーーーープ!」
一段とでかくなった声に我に返る。
勢いよく体を引いたせいか転けた。
「……いてぇ」
左手に擦り傷が出来ていた。あぁ……生きてる。死んだらどうなるんだろう……痛みとかいう概念はないのだろうな。
少しぼーっとしたが、なんとか立ち上がる。
「間に合った!!良かった!!おにいちゃんこええーーよ!」
歩道橋を急いで駆けてきたのか息が少し上がっている。
それでもニコニコしていて、まるで天使のような少年の笑顔に少し戸惑った……
「よかった……??」
「うん!いきてて良かった!」
屈託のない笑顔に少しと戸惑う。
「まだ死ぬ時じゃないよ!! いずれみんな死ぬんだからさ!どんな人も平等にね?」
明るい表情とは裏腹な発言にどうしていいか分からなかった。
「僕は、陽!! 日下部 陽!!!(くさかべ よう) 君は???」
「俺は、美郷 涼太です」
陽と名乗る少年のペースにのまれている。
頭では分かっているのにどうすることもできない。体が鉛みたいに重い。
今なら壺でも何でも買いそうだと自分でも思う。
「…死にたいの? どうしても……今???」
さっきまでの笑顔は全くない。大きな瞳にまっすぐ見つめられると本心まで見透かされそうだ。
「……。よく分からない。色々」
下を向く。 初対面の人間にこんなこと言われても戸惑うだけなのに。
いっそそっとしておいて欲しい。そんな気持ちばかりが溢れる。
「……そっか。じゃあさ、一回もう終わったって事にして、1回僕と旅に出ない?」
……素っ頓狂な提案に戸惑う。
「香川。香川に行きたいんだよね!でもさ1人だとさみしいから。一緒に行こうよ」
「……。」
「僕は、人生これからだと思う。何があったか分からないけど。僕は生きる意味とか分からないけど。
いろんな景色が見たい、世界中旅したい。今何していいかわかんないなら、とりあえず一緒に行こう」
確かに一理あるかもしれないけど…今の俺にそんな気持ちはわいてこない
断ろう。素性も分からないし
「俺はいいd…」
「明日!! 夜9時、この場所で。洋服とかちゃんと持ってきて。3日分くらいかな……んじゃ」
少年は、俺の返事も聞かずに、一方的に発言すると、歩道橋を降りていく。
「いや俺! 行くって一言もつたえてな…」
「絶対だからーーー!!まってるよぉおーーーー」
バイクにエンジンをかけながら手を振る姿をただ見送るしかなかった。
……家に帰ろう。今日はなんだか1段と疲れた。
家賃6万。ワンルーム。積み重なった教科書を足で蹴飛ばしながら布団にとびこむ。
ふと視界の端にキャリーケースが見える。
「……なんだったんだろ……あれ」
瞳を閉じて体をゆっくりと沈めていく。遠のく感覚の中で陽の笑顔が浮かんできた。
読んでいただいてありがとうございます。
どうしても書きたかった作品です。
つたないと思います。だけど、どうしても伝えたい結末があって…
とりとめの無い感情をなんとか形になるように頑張っています。
この思いが浮かんだのは2023年の終わりです。そのときは本当に書けたらいいなーぐらいで、
それが夢に出てきて……陽を実写化したらきっとこの人なんだろうな……って思い出して……
そうすると段々現実化した陽に会いたくなって……。
だから1人でもいいので、この思いに共感したり、読んで在り来たりだけど心がほっとした……
みたいな陽だまりを届けられたら嬉しいです。




