No.07:『夢から覚めてもそこは夢』
テーマ:[平凡]
コピーアンドペースト。
「先輩!最近流行りの"都市伝説"って知ってますか?」
ある朝駅のホームにて、会社の後輩になった男からそう話題を振られた。
適当な話題を言った自覚がありそうなのに、こいつは好奇心で目を輝かせている。
そんな後輩には申し訳ないが、都市伝説なんて聞いたことがないし、俺は首を横に振る。
「どうやら、その都市伝説は"起きれない夢"だなんて呼ばれていて、文字通り同じ夢を繰り返し見続けて起きれなくなってしまうんですって」
それを聞いた途端、俺は鼻で笑った。
そんなことはあるはずない、と。
「いやでも、ネット上では経験した人がここ最近増えているんですって。ギリギリ永遠に起きれていない人はいないですけど」
そもそも、夢というのはかなり非科学的な物だ。
そう思っている俺に、変なことは起こらないだろう。
その日はそんなことを話しながら電車へ乗った。
その後会社から帰ってきて、趣味にひと段落つけ、俺は寝る準備をした。
その最中、あの都市伝説のことを思い出す。
起きれない夢、実際にあるのだろうか。
いやある訳がない。
それに考えたって仕方がない。
寝よう。
ベッドに横たわり、俺は目を閉じた。
翌朝。
俺の目には、馴染みの天井が映っていた。
よし、どうやら現実らしい。
俺はいつものように支度をして家を出た。
途中駅から後輩が乗ってきて、なんてことない話をする。
会社ではデスクワークをこなす。
夜遅くまで残業して、疲れ果てながら家に着いた。
疲れた。
今日はもう寝よう。
なんかいい夢でも見よう。
翌朝。
俺の目には、馴染みの天井が映っていた。
よし、どうやら現実らしい。
俺はいつものように支度をして家を出た。
途中駅から後輩が乗ってきて、なんてことない話をする。
会社ではデスクワークをこなす。
夜遅くまで残業して、疲れ果てながら家に着いた。
疲れた。
今日はもう寝よう。
なんかいい夢でも見よう。
翌朝。
俺の目には、馴染みの天井が映っていた。
よし、どうやら現実らしい。
俺はいつものように支度をして家を出た。
途中駅から後輩が乗ってきて、なんてことない話をする。
会社ではデスクワークをこなす。
夜遅くまで残業して、疲れ果てながら家に着いた。
眠りにつこうとして、なぜか違和感を感じた。
だが、特に深く考えることはなかった。
翌朝。
俺の目には、馴染みの天井が映っていた。
そんな事をいつも思っている気がする。
俺はいつものように支度をして家を出て、後輩となんてことない話をして。
会社で夜までデスクワークして、疲労が溜まって寝ようとする……。
やっぱりおかしい。
なぜだろう、ここ最近の日々は、ずっとのっぺりした変わらない日々だった。
何から何まで平坦で、コピーされたような……、ループしているような……。
…ループ?
もしかして、"起きれない夢"?
その都市伝説に、俺がかかった?
そう思うと、額や肌から冷や汗が止まらなくなった。
焦っているのだ、こんな噂如きに。
不安になって、後輩の言葉を思い出す。
「いやでも、ネット上では経験した人がここ最近増えているんですって。ギリギリ永遠に起きれていない人はいないですけど」
そうだ、ネットだ。
俺は急いで都市伝説について調べてみた。
後輩の言っていた通り、多くの記事や経験談で埋め尽くされるほどの量の情報が載っている。
しかし、かかった時の対処法は、どこにも見当たらなかった。
俺は絶望した。
もう俺は、永遠に夢を見続けるのか?
いや、そう判断するにはまだ早い。
寝てみよう。
ギリギリでループは終わるらしいし、その望みにかけてみよう。
俺は勇気を出して、夜を飛び越えた。
翌朝。
俺の目には、馴染みの天井が映っていた。
実験失敗。
ループは終わらない。
どうする?
どうしたらいいんだ?
俺はだんだん怒りが込み上げてきた。
なんでこんな理不尽な目に遭わなければならないんだ。
……そうだ。
これは夢なんだ。
ここから刺激すれば、起きることができるかもしれない。
俺は、バケツいっぱい水を注いで、外で水を被ってみた。
「ぁあ寒い!」
その声で、近所の人たちが俺を見る。
ループだから許すが、なぜこんな辱めを受けなきゃいけないんだ。
気温が上がりきっていない朝方に、パジャマを着て水を被ったので、体の芯から冷えていく。
しかし、刺激が弱いらしい。
目が覚めそうな感覚はない。
俺はヒタヒタと家に入り、ミシン針で手のひらを刺してみた。
「イッ」
先端が思いっきり皮膚に刺さる。
血が出てきたが、まだ刺激が足りないらしい。
都市伝説レベルの呪縛となると、そう易々と永遠の夢からは出られないみたいだ。
もっと強い、確実に飛び起きるような刺激を。
そう思っていたが、時計が普段出る時刻の2分前を指していることに気がついた。
ループだとわかっているのに、会社には行かなければと思ってしまう。
そのままろくに準備もせず、着替えだけして家を出た。
「先輩!おはようございます!」
ループを抜け出すには、きっと強い力が必要。
「先輩の髪、ボサボサっていうか…湿ってる?」
目覚めるための大きな刺激、恐怖とかだろうか。
「先輩、電車まだっすよ」
電車に轢かれたら、流石に起きるだろ。
気づいた時には、もう駅のホームにはいなかった。
線路に向かって身を投げていた。
ああ、通勤電車の警笛が、うるさいなぁ。
「先輩っ!何で!」
人が混み合う駅のホームで、男が一人泣いていた。
蹲っているせいで、周りの悲鳴も状況も、わかっていないだろう。
電車に轢かれた男は一生、自分のために泣いてくれる人がいることを、知ることはない。
なぜなら、快速列車との激突の衝撃で、死んだからだ。
さて、ネットに書いてあった都市伝説……。
その脱出者というのは、どのような手段を使ったのでしょうか。
【あとがき】
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