No.03:『神さまのおとしもの』
テーマ:[発想]
あったらいいな、ってだけ。
現世にお住まいの皆様は、この事実をきっとご存知ないでしょう。
地上からはるか上空、「天界」と呼ばれる世界では、各国多種多様な神さまたちが暮らしています。
現世とは違ってここは平和な世界であり、今日も日本国の上空にはお二方神さまがいらっしゃって、仲睦まじく会話を交わしています。
「お主のその〈種〉、ちょっと見せておくれよ」
「ええっ、爺さん、もうしょうがないなぁ」
「不思議な見た目じゃが、お主のその種、名はなんという」
「こいつは〈ギャグの種〉だな。誰でも腹抱えて笑っちまう」
どうやら、この神さまは〈ギャグの種〉を収穫したようですね。
〈種〉とは、天界に伸びる一本の巨木に実るものです。
神さまたちは、よくその木の前で収穫を楽しんでいるのです。
実はこの大木は、地上に根を生やして立っています。
「爺さんの種はなんて言うんだ」
「これは〈可愛さの種〉だ。眺めているだけで、なんだか癒されてしまうんだ」
「へぇ〜。どれどれ……って、ああっ」
おっと、神さまがうっかり〈ギャグの種〉を落としてしまいました。
種は天界の雲を突き抜けて、どんどんと地上へ落ちていきます。
こうなっては、神さまでも止められません。
ああ、〈ギャグの種〉はどこへ行ってしまうんでしょう…。
「……ふふっ、ははっ、くっくっく」
「気味悪ィぞ、急にニヤニヤと笑い出して」
「いやぁ…なんか急にめっちゃ面白いネタ思いついたわ」
「おおマジか。降ってきたってやつだな」
〈ギャグの種〉は、東京で芸能会社に勤めている男の頭上に、ピタリとに落下した。
その後その男は、熟した種のギャグが根から溢れるのを受け、しばらくの間笑い続けた。
そして種も、いい土壌を見つけ喜びを爆発させるかのように、青々と茂っていった。
天界に暮らす神さま等は、きっと知らないだろう。
現世に根を張る、種の行く末を。
人に生えた種の効力を。
【あとがき】
僕にも種を落として!
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