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02第五地方自治体連合自警団本部02

「おい、ウイスキー街道だって?ついさっき行ったヤバすぎる右左市のさらに先だろ、

わざわざ俺らに死にに行けって言うんか」

驚いた辰は素っ頓狂な声を上げた。

「ウイスキー街道ってことは第一地方でしょ?あそこは古城と周辺街でバリケード張って籠城して生き残っている連中だけで――」

「少なくとも辺りの森林や道路沿いに点在する民家は阿熊やら大戦やらでほとんど全滅してるはずだけど」

イル、ミサが顔を見合わせながら本部長・縄文寺に問いかけた。

「そうです、少なくとも大戦直前からからすでに点在する民家に住む高齢者等を狙った

外国人野盗の被害も絶えなかった第一地方ですが」

そこに口を挟むように宗田が。

「6時間前、その全滅したはずの第一地方ウイスキー街道周辺にある廃醸造工場よりSOS連絡を受けた。

信じられない話だが、大戦後の阿熊との戦闘で籠城戦をした工場の無線機より連絡したものがいる」

えぇっと驚く一同。だがそれを聞いたルイがははぁ、と何かピンときて鼻をすすりながら言った。

「あー、そうかわかった。だから大森の大将も呼ばれたんか。つまり今回の作戦は大森さんとこの大型運搬ドローン使うわけだ」

「まぁそういうことやなぁ、ホンマ貧乏くじやけど」

「空中サーカスしろってかっ」

そう言うと大森はニタニタ笑いながら辰を見た。辰はすっかり不貞腐れてしまっている。

「いいですか、第五小隊。最近あなたたちは立て続けに作戦失敗を繰り返してます。

いずれも敵の規模が予想を上回る結果だったにせよ、このままでは第五地方自治体連合自警団の信用にも関わります。

今回、この救出任務を必ず成功させ、汚名返上なさい」

そうやって縄文寺が命令すると、いきなり辰がはっと気が付き問いかけた。

「ちょっと待て、丹波笹山は但馬連合自警団だろ、普通はそこの仕事だろ?

それか、本土防衛で北上してる加西の陸自の暇な普通科の連中にたのみゃあいいんだ、わざわざなんでうちなんだ」

「第二地方自治体連合自警団は防衛線を沿岸まで引き下げた。」


宗田のセリフに辰は目を丸くし驚愕した。

「嘘つけ、温泉街から撤退したのか?最強小隊の甲斐かいさんがか?」

「嘘も何も事実でしかない、あそこもあそこで物資も弾も足りないずくだ。あとお前ら第五小隊は作戦中で知らなかっただろうが――」

宗田は一呼吸において

「海外防衛ラインに位置する陸上自衛隊をはじめ、本土防衛していた連中はほぼ壊滅的ダメージを受けて撤退した」

「おいまて、それは俺も聞いてない、どういうことだ」

大森は驚き、相田に詰め寄った。

「つい先ほどの連絡だ、陸上自衛隊第二連隊は本日未明、”大陸アジア”の急襲により甚大な被害を負い、名誉ある撤退した」

書類に目を通しつつ淡々と喋る宗田に呆れつつ、脱力した大森はパイプ椅子にもたれかかった。

「なにが”名誉”だよ。ふざけんなし!」

「地表融解ミサイル(マグマエクスプロージョン)かよ、あいつらはまだ日本に未練があるのか?

世界中がすでにボロボロだってのにいったいどこにそんな体力残ってるよ?」

「まぁ人民達の力は偉大だってことやな」

ルイは呆れながら呟いたところで縄文寺はピシャリと放つ。

「兎に角です!あなたたち第三、第五小隊は本日2200よりウイスキー街道の廃醸造工場救出作戦に赴いていただきます。

今現状で対応できるのは我々第五地方自警団だけです。

作戦要綱はすでに各小隊AIに伝達しております、後程各隊ですぐ確認するように。以上ブリーフィング終了」

縄文寺が早々に打ち切るので辰がブチ切れた。

「はぁ、ふざけんなよオバハンがよっ。これで”ハイ了解しました~”なんて言うと思っとんのか」

縄文寺に詰め寄りだした辰にすかさず宗田が割って入った。

「おい、辰。さっき整備長が”第五小隊は全員指詰めろ!”って喚いてだぞっ」

「ちょっ、ぐおっ、マジか。ちょっとそれはヤバいかも」

整備長の名前に顔色を変え、途端に焦りだす辰。

「やめとけ、このままじゃ金どころか水や栄養豆の配給すらまわないぜ。んでマジで指切るぞ、あの筋肉馬鹿のイカれた整備長なら」

なだめる大森、とそこにこの場にいて口を開くことがなかった喜美江がはじめて口を開いた。

「それではこれより第三、第五小隊は4時間後、作戦任務のための準備行動を開始いたします」

「縄文寺本部長、失礼いたします」

一同を尻目に足早に立ち去る喜美江。

「おい、喜美江。しょうがない、じゃあ後でな辰、現場に行くのは手前なんだから死なないようにしっかり準備しろよ」

「喜美江ちゃん、相変わらずかわいいねぇ。ねぇイル、今度食事に誘ってみようよ」

大森たちを見ながらミサが言った。

「てか喜美江、喋れるんだね。私初めて声聞いたかも、いっつも黙りこくってたから」

イルはいささか驚いている様子だった、とそこに。

「辰、ちょっといいですか」

縄文寺は辰に歩み寄り耳打ちした。

「昔のなじみとはいえ、あまりにもひどいと私も庇いきれませんよっ」

それに答え、辰もつぶやく。

「まあそこらへんは何とかうまくやるよ、ごめんな。縄文寺」

「もうっ」

小声だったため何を言っているか聞き取れなかった宗田は二人のやり取りに頭の中はなんだか”?”でいっぱいになった。


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