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02 第五地方自治体連合自警団本部01

ここは市中心地か少し外れたところにある元・工業高等学校、現・第五地方自治体連合自警団本部施設である。

過去に起きたの大戦後はボロボロになった校舎は大幅に”リフォーム”され、

学校の実習施設は車両・兵器の整備工場等に利用。

運動場は車両ドックとして、また体育館は各地域作戦管制室、として。

そして校舎の周りは備え付けられた機銃や有刺鉄線のバリケード、

そのほか細部に至るまで校舎は痛々しいまでに武装化されていた。

また、この施設は周辺地域住民の役所及び避難所としても機能している。

心なしか壁に着けられた金属装甲から垣間見える校章が黒い雨に打たれ泣いているようだった。

その本部にあるブリーフィングルームにはガンツアーの面々、

そしてガタイのいい親父がひとりと、その傍らには不釣り合いな少女がパイプ椅子に座っていた。

「んで、一掃できなかったんだろ?オバハンぶち切れんじゃね」

ガタイのいいおやじは辰をペンで突きながらイヤミったらしく言った。

「たった、1部隊であの大勢とヤラセようってのが間違っているんだよ。ばっかじゃないの」

鼻で大きくため息をつき、不貞腐れる辰。

「でも、待ち伏せでタコ殴りに合ったって聞いたで、よぉ生きとったなぁ。」

そう言うとガタイのいいオヤジはゲラゲラ笑いだした。

「ホンマ内勤の連中は俺らのことなんてわからんねん。一回外連れまわしたほうが良いわ。」

ケータイゲームをいじりながらルイが不貞腐れる。

”ロン!四暗刻単騎、やったっス!”

「おいおっさん、この女いきなりフリテン一発でツモして意味わからんねんけど、しかも河には既に四枚捨ててるし・・・」

「昔のゲームはみんなそんなんだよ。こっちは金払ってんのに脱衣麻雀のお楽しみシーンははるか山越えだ」

「マジサイテー、クレジットもらったら私が脱いでやるよ」

辰とルイ、二人の後ろで座っていたイルが身を乗り出しに前に座っていた辰とルイに声をかける。

「はぁ?なんでお前の裸見るのに金払う必要あんの?もう見飽きてんねんけど」

ゲームしながらニヤニヤするルイ。

「お、お前、いつからどこから見やがったオラぁ!」

ルイの胸ぐらを掴み、右手を大きくスイングさせる。

「二人ともやめようよ、もうすぐオバハン来るよ」

イルの隣にいたミサは端末を手で操作しながら呆れたようになだめた。

「てか、大森さんも呼ばれたの?大森さんもなんかやらかしたとか」

ガタイのいいオヤジ、大森は呆れた顔して辰に答えた。

「はぁ?あのなぁ次の作戦は俺らと共同なんだとよ、ンで呼ばれたわけ」

「ええっ、マジか、処分も反省会も無いうちにか?」

辰は驚き思わず目を大きくした。

「まったく、縄文寺のオバハンが何考えてんのか意味わからんねん。あ、喜美江、議事録とっとけよ」

「了解です」

大森のそばにいたオヤジとは到底血縁ではなさそうな可憐な少女、喜美江は手元の端末をじっと眺めながら呟いた。

「うちの二人と大森さんの愛娘さん交換しません?」

辰は喜美江のほうを見ながら頬を緩ませながら言った。

「馬鹿ッ、こんな不良娘手に負えるわけないだろうっ」

「ええっ、それ私も含まれているのかなぁ・・・」

それを聞いてミサは不服そうにつぶやいた。

とそこへ部屋のエアロックの外れる音が鳴り、勇ましいスリムな中年女性が足音を鳴らしながら一同の前に現れた。

傍らには眼光だけは一人前の脆弱そうな若い男がくっついている。

全員が椅子から立ち上がり、敬礼をする。ルイはスリ師も驚く速さでゲーム機をズボンポケットへ入れた。


「第五地方自治体連合自警団・第三小隊”Yellow Signイエローサイン”小隊長

 大森次郎他一名、帰還要請及び次回作戦ブリーフィングのため本部出頭いたしました」

「同じく第五小隊ガンツアー小隊長 皐月 辰以下隊員全員、作戦報告及び、えー”出頭命令”により”出頭”いたしました」

「プッ」思わずルイが噴き出す。

辰は歯をむき出しにしてルイを睨みつけた。

「おい、悪ふざけするな。とっとと座れ」

「げ・・・副部長の宗田もいる!!」

思わずルイが声を上げた。

「いたらどうだというのだ?何が具合でも?」

時代に似合わないような七三分けの目つきの悪い小柄の親父がルイに噛みつく。

「もうやめなさい・・・一同着席するように」

”なにを偉そうに”小声でイルが呟く。

宗田はわかるようにゴホンと咳払いをした。

一同に現れたのは凛とした姿のやり手キャリアウーマン張りの女性、胸に輝くネームプレートには

この第五地方自治体連合自警団・本部長 縄文寺じょうもんじ 弥生やよいという文字が輝いていた。

「まず最初に、辰隊長。先日の加東市の東条湖掃討作戦は失敗に終わったようですね」

縄文寺の言葉にすかさず辰が反応し起立した。

「はい、その点につきましては弁明の余地もございません!誠に申し訳ございませんでした、謹んで謝罪申し上げます!」

「ハハハ、謝罪で”玉代”が帰ってきたら言うことないけどね」

ため息交じりに宗田が呟いた。

「はぁ?!いつも単独でヤバいとこ向かわせてんのはお前らだろうがッ」

イルが立ち上がりこぶしを振り上げる。

「やめてよイルちゃんっ」ミサが制止する

「おおっこわ、勘弁してくれよ」宗田が顔を引きつらせながらこちらを睨みつけた。

「宗田さん、無駄に煽るのはやめてください。

その点について後程辰隊長に追及いたします、先に次の作戦についてのブリーフィングを致します」

縄文寺は部屋のモニターを入れ、作戦要綱一覧を表示した。

「第三小隊及び第五小隊、両隊は18日24時より新たな作戦任務として―――」

モニターに写真が映し出される、それは大森には見慣れた景色だった。

「ウイスキー街道へ現着してもらいます」


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