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01右左市攻略作戦-02

 静寂な森林は一抹の雄叫びと共に騒めきたち、大量の漆黒の影のようなものが

ガンバスに向かって突進してきた。

熊だ。だが我々の知る熊とは少し相違があり、その動きはきわめて人間じみていた。

体全体はシャープな奴が多く、もちろん、熊特有のガタイの良い奴もいた。

顔は従来よりもやや小柄といったところか。

「阿熊!周囲に多数、ヤバいぐらい多い!ありえんて」

ルイが前方モニターに映る物々しい数に絶叫する。

阿熊と呼ばれたもの-それは過去に勃発した大戦の後、ボロボロになった日本に突如現れたUMA(未確認生命体)である。

阿熊たちは各々、手には槍だの、2メートルはあるであろう盾だの、鉈のようなもので武装し、

そして身体には自身の毛並みにマッチするようなどこで造ったのか解らないがプロテクターらしきものを身に着けていた。

ガンバスをやや遠巻きに見ていた数名の阿熊たちが先端が鋭くとがった巨大な鉄杭を一斉投擲した。

「対空!クラスター防御!」

「クラスター!」

辰がとっさに命令を飛ばし、イルが復唱と共に手元のボタンを操作する。

ポンッ、ポンッとバス後部から突然伸びたバレルからソフトボール程の球体二発が鉄杭にむかって飛び出した。

球体が鉄杭と交錯する直前破裂し、中から出てきたであろう粒のような無数の爆弾が四方八方飛び出し炸裂する。

バチンバチンと鉄杭が弾きつぶされる中、鉄杭の一本が生き残りガンバスの車体へ突き刺さる!

「おおおおおっ!」

鉄杭は装甲を貫き、針ほどの先端が車内にいた辰の眼球目前で止まった。

そのまま思わずしりもちをつく。

「おっさん!大丈夫か!」

ルイの心配を他所に、辰の顔が鬼人のような顔つきに変わり、体制を整えると吐き捨てた。

「ふざけやって!あんのダボがよっ!」

「迎撃しろ!イル、二連短機関砲起動、手動だ。近い奴から狙っていけ!

後方バルカンシステム起動、ルーフセントリーガン起動全方位で、左リアサイドA・B群は右のE・F群に注力させろ!」

辰の指示の元AIとイルが瞬時に反応する。

”設定完了”

アイがガンバス武装一覧をモニター表示する。

辰が目を大きく見開き、命令を出す。

「動体探知、一斉掃射!」

ダダダダダダッ!

ガンバスのサイドやルーフから収納されていた砲身の短い機銃等が一斉に飛び出し、突進してきた阿熊に砲撃を始めた。

イルも立ち上がって車体に取り付けられた機関砲を外部を映し出すモニターを片手で持ちながら、巧みに操作した。

機関砲の振動で肩と胸が小刻みに震える。

「ミサ、モニター、しっかりやってって!」

「やってるって、敵が多すぎるのっ」

ミサは焦りながら、車体に取り付けられたスツールに腰かけたまま足で蹴って移動し、必死に様々なモニターを操作している。

そんな一気に火事場と化したガンツアーズ一同をやや冷ややかに見つめる三頭の阿熊。


「おい、ゴリよ。あのマーク。あれオッサンじゃね?」

脇に従えていた褐色の毛並みの阿熊・アンは中央の2m以上はあろう黒い毛並みのゴリと呼ばれた阿熊に問う。

「マジやで。あのバスのふざけたマークはヘルニアのオッサンじゃねーか」

ゴリ呼ばれた阿熊はガンバスのサイドに描かれた美少女アニメのマークを凝視していた。

「ちょうどええやんか、ここでぶちのめそうぜ」

同じく反対の脇に従えていたやや小さめの阿熊・テがやや苦笑しながら答える。

「いくぞ!死ねやオッサン!あんボケがよっ」

三匹は高台を一気に駆け降り、ガンバスに近づきながら三人とも一糸乱れぬ動きでその手を上、横、上、横とL字に切った。

それを凝視するルイ。

「やばいってオッサン、あいつらゴリの連中やんか。俺らマジで死ぬわ、どうするんよ?」

と、投げかけた先に辰の姿は無かった。

ええっ!と後ろに目をやると辰は後部ハッチを開き、ワイヤーの付いたサーフィンの形をした浮遊するホバーボードを引っ張り出していた。

「ゴリのクソダボがよ、腰の恨み晴らしたんねん!あいつよ」

”ホバーボード、自動制御準備完了”アイが合図した。

手には何も持たず、腰だけに拳銃を携えたままあたり一面に響き渡るほどの雄叫びを放ち、ボードに飛び乗り外へとはじけ飛んだ。

「マジか」

ルイは愕然とした。

ホバーボードは宙を地面擦れ擦れで滑空し、半ばガンバスにワイヤーで引っ張られるような形で三匹へと距離を詰めた。

「ゴリがよっお前ぶちのめしたるからな!」

「ハッハッハ、腰はよくなったか?ヘルニアのクソ親父がよ!」

「ボケがよ!シネや!」

鬼のような形相をした辰は右手を上半身ごと引き、ファイティングポーズをとった。

「オオオオオオオオオオオォ!!!!」

プロボクサーのような凄まじい速さで、振りかぶることはせず腕の動きのみで凄まじい速さのストレートパンチを

左右に幾度もなく打ち込んだ。

顔面に無数に撃ち込まれるパンチを両脇のアンとテは唖然とした様子で見つめた。目が点になってる。

ゴリはパンチを食らい、頭を大きくのけぞらせたが。ゆっくりと顔を引き上げた。

顔は熊なのでよくわからないが、ニヤニヤしているようだ。

「腰が入ってねーんだよっ、タコがよ!」

ゴリは腕を大きく後ろへ振りかぶり、辰の顔面に目掛けそのコブシを飛ばした。

防御する暇もなく、顔面に直撃した辰は一瞬白目になり、ノックダウンした。

足がボードに固定されていたため宙ぶらりんになっている。

その直後、バスのワイヤーリールが凄い速さで動き出し、辰は一気にガンバスへと引き戻された。

気を失っているためそのままガンバスの後部ハッチの淵に頭をぶつけ、辰は帰還した。

床に仰向けに倒れこみ、頭をぶつけた拍子で目覚めた辰をミサやイルが頬杖をしながら冷ややか目で見つめる。

「こりゃだめだ、アイ、逃げよう」

鼻血を大量に流しながら、辰がAIのアイに泣きついた。

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