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第45話 怪物の子は怪物

 あの組で試験に合格したのは5人。俺とネイガンとエナイス。それにザケンとよく知らない一人だ。合格人数的に考えて、俺の組が一番レベルが低かった様で一安心。と言いたい所だが……ザケン程度が引っかかってる時点であれなんだよな。


「ふむ……」


 入学式と言えばいいのだろうか。合格者が一堂に集められた講堂の様な場所で、割り振られた席に着席した俺は自然な形で周囲を見渡した。残念ながら、ぱっと見、明確に強いと感じられる人物は10人にも満たない。まあ魔法使い系は判断が難しいので、そこまで含めたらもう少し増える可能性もあるが……


 その中で特に目を引いたのは6人だ。


 実技の際、教官は俺の上に6人いると言っていた。恐らく彼らがそうなのだろう。そのうち4人は俺と大差ない様に思えたが、魔法ありで戦ってもキツそうに感じる人物が2人いる。魔法込みで三位との評価だったので、その2人が1位2位と考えて間違いないだろう。


「始まるな」


 ファンファーレが流れ、一段高いステージの様な場所の奥の扉が開いた。そこから真っ先に現れたのは――


「子供?」


 ――年のころ、12、3歳程の少年だった。


 その姿に、俺の横に座るネイガンが怪訝そうに声を漏らす。彼だけではなく、他の席からもそう言った声が漏れ聞こえて来る。


 扉からは少年に続く様に大人が10人入って来た。その中には試験を受け持っていた戦闘教官の姿があり、他の9人からもそれに近い強さを感じる事から、恐らく彼らがこのアカデミーの指導教官なのだろうと思われる。


「兄貴、あの子供何者なんでしょうね?」


 他の9人を従える形でマイクの様な物の前に立つ少年に、我慢できなくなったのかネイガンが俺に尋ねて来る。


 当然、聞かれても答えようがない。こいつは俺を何だと思っているのか? 聞くなら普通エナイスの方だろうに。まあ彼女は席が離れているが。


「知らん。ただ一つ分かるのは――」


 俺に分かる事があるとすれば、それはただ一つ。それは――


「化け物だって事ぐらいだ」


 そう、少年がこの場における最強と言う事だけである。それもダントツに。


「化け物って……」


「しっ、私語はここまでだ」


 少年が自分用に低く設置されたマイクを握り、口を開いた。


「諸君!よくぞ我が父――ジークフリート陛下の呼びかけに答え、この場に集うてくれた!その勇気と世界を愛する心に、このバルムンク・シグムント感動の念で胸が張り裂けんばかりだ!」


 破竜帝、ジークフリートの息子……化け物の子は化け物と言うべきだろうな。その年齢から考えられない様な高い能力も、破竜帝の息子というだけで納得できてしまうのだから困る。まあここは頼もしい味方が出来たと、素直に喜んでおくとしようか。


 バルムンクの演説、そして次いで教官長からのこれからのカリキュラムが伝えられる。訓練はその大半が自由選択制で、自分に合った教官に指導を受けられるシステムの様だ。ただし魔法を教えてくれる人物は一人だけしかいない様なので、魔法の訓練はその人物を師事するか、用意された魔法書で魔法を覚えて独学でやるかの二択になる。


「私の――」


 それぞれの教官が、自分の得意分野と、教えられる技術についての説明を順番にしていく。それを聞き、正直、戦闘技術に関してはそれ程学ぶべき部分はない様に感じざるを得なかった。まあそれはそれだけ、師匠から学んだ技術が優れていたという事の表れでもある。赤鬼ベゼルなんて御大層な二つ名は、伊達じゃなかった訳だ。


 学ぶべき事が少ないなら、アカデミーに入る意味はない?


 そんな事はないさ。自分と同等かそれ以上の相手との手合わせなんかは、得られるものが多いからな。一人で訓練を続けるより、其方の方が遥かに効率的だ。しかも魔王戦で連携する事を考えるのなら、猶更である。 


 それに、アカデミー生には唯一無二の特典が与えられる。龍陣と呼ばれるものだ。


 ――龍陣。


 魔竜の心臓と呼ばれる、魔竜から取り出された宝玉を加工した物を触媒にした、地脈と呼ばれる大地のエネルギーを吸い上げ展開される魔法陣。それが龍陣である。その効果は中にいる者の潜在能力を引き出すそうだ。


 それを一月に一度受けられるというのが、このアカデミー最大の売りである。訓練とは別に能力を引き出して貰えるなら、受けない手はないだろ? それでなくとも、時間的にどれぐらいの猶予が残っているか分からないんだから。やれる事。得られる利益は全て受けておかないとな。


 魔王に勝つために。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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