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第36話 猫かぶり

「評判は相当悪いって訳か」


 話を聞く限り、ザケン王子はどうしようもない奴の様だ。


「ええ、そりゃもう」


 俺が案内されたのは、10人程が寝泊まりできる大部屋だった。フェイガル王国の一団は全部で10人いるが、その内俺を含めた男7人がこの部屋に通され、エナイス姫を含めた女性3人は別室へと連れていかれている。


 ま、そりゃ男女で部屋を分けるよな。あとエイナスは王族だから、きっと彼女だけは個室を与えられているはず。


 因みに内訳は――


 俺を含めた男7人全員アカデミー候補生で、エイナス以外の女性2人は手続きなどの文官兼、王女の傍仕えだ。


 送り出された候補生の人数は、ぶっちゃけ少ない。その最大の理由は、魔王に王宮を襲撃されたからだ。王宮にいた優れた騎士連中や、援軍に駆け付けた奴らはほぼ殺されてしまっているからな。なので送ろうにも、人が居なくて送り様がないという訳だ。半端な奴らを送っても意味はないし。


 まあぶっちゃけ、その何とか用意した人選も、俺から見たらかなりお粗末なんだが……比較的真面なのは、パワーバカのネイガンと、魔力量の多いエナイスくらいのものだろう。


 ……まさか他の国の奴らもこんなレベルじゃないよな? だとしたら、戦力としてはあまり期待できそうにないと言うのが本音である。


「国がこんな状態でさえなければ、あんな奴に嫁ぐ事も無かったでしょうに……エナイス様が不憫で仕方ありません」


 ネイガンの言葉に、周囲の騎士達も同意する。道中の馬車内で話を聞いた感じ、どうやらエナイスは人気が高い様だった。


 ……可憐で誰にでも優しい、優秀な魔法使いときてるからな。


 俺の知るエナイスとは完全に別物の評価である。どうやら彼女は、普段は相当な猫かぶりをしている様だ。ま、勇者召喚関連の時だけ荒れてたって可能性も否定はしないが。そうとうコストがかかる様だし。


 因みにネイガン達は、魔王がどこから来たのかは一切知らされていない。もし知ってたなら、他国から援助を引き出すために政略結婚させられるエナイスを哀れんだりは決してしなかっただろう。


 まあ別にエナイスだけを悪者にする気はないが、どう考えてもあいつが責任者だった訳だからな。その責任を取らされるのは仕方のない事である。


「調子はどうだ?」


 ネイガン達との話に区切りがついた所で、俺は魔法球を使ってベッチ達に連絡を入れてみた。これは、アカデミーに入る際に出した条件のマジックアイテムである。門弟である彼らを街に残して出て来るのだから、当然の要求と言えるだろう。


「先生!」


魔法球に二人の顔が映る。その元気そうな反応を見る限り、特に変わりない事が伝わってくる。


「元気にやってるみたいだな。お母さんの容体の方はどうだ?」


「お陰で順調に回復して行ってます!先生のお陰です!」


 回復は順調な様だ。アカデミーに入るもう一つの条件として、俺はエナイスから結構な額を受け取っていた。それらは全てベッチの母親の治療費として当てている。


「それは良かった」


 俺はベッチやコニーと他愛ない会話を続ける。帝国の様子だとか、彼らが今日はどんなクエストを熟しただとか、そういった感じの内容だ。


「まああれだ……何か困った事があれば、直ぐに連絡して来いよ」


 国境を超える転移ゲートなんかは出鱈目に高くつくのだが、その辺りもエナイスとは話を付けてある。だから何かあったら、俺は速攻で彼らの元へ駆け付けるつもりだ。


「先生!私達はもう冒険者なんですよ!困った事があったら自分達で解決しますから!」


 俺の言葉に、コニーがニカッと爽やかに笑いながらそう答えた。その顔に、親や家を無くした悲壮感はもうない。まだまだ子供ではあるが、彼女はもう大丈夫だと確信できる笑顔だ。


「ああ、そうだな。まああれだ……コニーはベッチが馬鹿な真似をしないか、しっかり見張っててやってくれ」


「はい!」


「ちぇっ、俺の方が年上なのに」


「そういうのは性格の問題だからな。まあとにかく、二人共決して仕事では無理をしない様に。いいな」


「はい!」


「へいへい」


 会話を終え、俺は魔法球を止める。エネルギーの問題があってそう頻繁には使えないので、緊急の用事が起きない以上、次に使うのはしばらく先の事になるだろう。あまり頻繁に使うと、本当に必要な時に使えなくなってしまうからな。


「さて、それじゃ訓練に行くとするか」


 訓練場は先に案内されていた。魔王襲来がいつになるか分からない以上、暇があるなら訓練しとかないとな。


「お供します」


 俺はネイガンを連れ――他の者たちは休憩する様だ――訓練場へと向かう。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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