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第2話 情報収集

「なるほどなるほど……」


 異世界の町並みは、なんとなく中世を思わせる作りだった。建物はレンガや石造りがメインで、そこに木造の建物も混じっている感じだ。道は一応舗装されており、田舎道よりはよっぽどしっかりしている。


 俺は町を歩いて見て回り、露店商と客のやり取りから金銭の大まかな価値を。そして看板などから文字を学ぶ。


 それがある程度済んだら、途中で公園っぽい場所で見かけた金に困ってそうな酔っ払いの爺さんに金を握らせる。この世界の情報を聞くために。見るだけで全部を知るってのは、流石に天才の俺でも無理があるからな。


 因みに話の相手をこの爺さんに選んだのは、俺が変な質問をしても問題にならないと判断したからだ。どう見ても、信用や横のつながりの無さそうな人物だからな。この爺さんが俺の失言を吹聴したとしても、きっと周囲は真面に耳を傾けもしないだろう。


「へぇ、爺さん冒険者だったのか」


 この世界には魔族や魔物がおり、小説なんかで定番の冒険者も、普通に都市生活の中に組み込まれている様だった。そして爺さんは元冒険者で、若い頃は鳴らしていたのと事。


 まあ本人談なので、本当かどうかはかなり怪しい所だが。召喚された際に周りにいた奴らの様な特殊な雰囲気を、この爺さんからは一切感じないし。


「おうよ。赤鬼ベゼルっつったら、冒険者界隈じゃ知らない奴の居ない冒険者だったんだぞ」


 赤鬼は二つ名だろう。‟赤”鬼なのは、髪の色が赤のためだろうと思われる。


「いいか、ワシの若い頃は――」


 爺さんの武勇伝が始まる。俺は黙ってその話に耳を傾けていたが、気になる単語が出たので少し口を挟んだ。


「へぇ、爺さんは魔法が使えるのか」


 爺さん曰く。武芸だけでなく、冒険者時代は魔法も達者だったとの事。


「俺のいた僻地じゃ、魔法を使える奴はいなかったんだよなぁ……」


 因みに俺の設定は、ド田舎から出て来た田舎者だ。常識を全く知らないのはそのためだと、爺さんには最初に説明してある。


「どえらい田舎だったんだな」


 生まれ育った場所に魔法を使える奴がいなかった。そんな俺の言葉に、爺さんは特に引っかかった様子を見せない。口から出まかせではあったが、納得してるって事は、まあそう言う場所もあり得るって事なのだろう。


「なあ爺さん。魔法ってどうやったら使えるようになるんだ?」


「なんだ、魔法を覚えたいのか?言っとくが、魔法は資質がないと使えないぞ。いいか、魔法ってのはな――」


 爺さんの魔法談議が始まる。まあ談義って程ではない気もするが、纏めるとこうだ――


 魔法はある一定量以上魔力がないと、発動させる事が出来ない。そして魔力を伸ばすには、魔法を使って魔力を消費する必要があるとの事。そのため、基礎の魔法を扱う魔力を生まれつき持ち合わせていないと魔力の量が増やせず、魔法はどう足掻いても扱えないそうだ。


 ――つまり、魔法が使えるかどうかは生まれ持った資質次第という訳である。


 そして肝心の魔法の習得方法だが、こっちは単に魔法を構築する陣を覚えるだけでいいらしい。そして頭の中でそれを描いて、そこに魔力を込めれば魔法は発現するそうだ。


 尤も、脳内で思い描いた陣に少しでも不備があると魔法が発動しなかったり。しても、思った効果が得られなかったりするそうだ。なので魔法には魔力だけでは無く、記憶力や集中力なんかも重要となってくるとの事。


「記憶力が重要って事は……」


「おいおい、舐めて貰っちゃ困る。老いたとはいえ、この赤鬼ベゼル。今でも魔法ぐらいお手のもんよ」


 俺の言いたい事に気付いたのか、爺さんが自分の胸をドンと叩いて偉ぶる。


「赤鬼の名は伊達じゃないってか。もしよかったら何か魔法を見せてくれよ」


 この世界に召喚された身ではあるが、その際の魔法は見ていない。気づいたらあそこに立っていたからな。なので爺さんが今でも魔法を使えるんなら、せっかくなので実物を見させて貰う。


「そうだな……まあ見せてやってもいいんだが……」


 爺さんが俺の持つ革袋にチラリと視線を向ける。どうやら、魔法が見たいなら追加料金を寄越せと言いたい様だ。


「やれやれ、元冒険者にしては商売上手だな」


「ワシぐらい優秀だと、なんでもござれだ」


 俺は肩を竦めつつ、爺さんに追加の金を渡す。


「あんまどぎついのを使うと警邏(けいら)の奴らが駆け付けちまうから、基礎の魔法を使うぞ。よーく見てろ」


 俺は爺さんに注視する。魔法と言う現象をしっかりと脳裏に収めるために。


「クリエイトウォーター」


 爺さんが魔法を発動させると、その右掌の中から水が沸き出して来た。手品ではない。まごう事無く種も仕掛けも無い魔法だ。


 ……面白い。


 爺さんの魔法を見て、一つはっきりした事がある。それは俺にも魔法が使えると言う事だ。


 生まれた世界が違うからあれかと思ってたんだが……


 爺さんの魔法を目の当たりにした事で、俺の直感は見事に魔力を捉える事に成功していた。正に天才……っと、自画自賛は置いといて。そしてその感覚は、俺の中に同じものがあると伝えていた。しかも俺の中の魔力は、先ほど爺さんが放った魔法を余裕で発動できる量と来ている。


 なので、俺も魔法陣さえ覚えれば魔法が使えると言う事だ。


「どうだ?」


「魔法は初めて見るから、凄いの一言だよ」


「そうだろうそうだろう」


「魔法陣はどうやって覚えればいいんだ?」


「魔法を覚えたいなら魔法ギルドだな。金を払えば、一般閲覧可能な物なら見せてくれるぞ」


「魔法ギルドか……一度行ってみるよ」


 その後、一時間程爺さんから色々聞いた所で俺は話しを切り上げた。とりあえず、聞きたい事はほとんど聞けたからな。


「色々教えてくれて助かったよ、爺さん。全部田舎者には貴重な情報だった」


「こんな話でいいなら、いつでも聞きに来るといい。もちろん、ちいとばかし心づけは頂くがな」


 爺さんが親指と人差し指で輪を作り、小汚い顔を歪めて笑う。そうそう用があるとは思えないが、年よりの知恵とは馬鹿にならない物だ。何か知りたい事があったらまた声をかけるとしよう。


 爺さんと別れた後、俺はまっすぐ魔法ギルドへと向かう。

 魔法を覚える為に。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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