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もうひとつの夜
だが、その銃にはまだ弾薬が入っていなかった。
そして、声が聞こえる。
死ぬには惜しく、生きても無価値。
幻聴が大きくなってきた。
(弾はどこにあるんだ)
黒い箱をまさぐり、底の板を外した。すると、10発ほどの弾薬が出てきた。
(つまり、これを詰めれば撃てるってことか)
弾を詰めて、彼は夜明けと共に眠りについた。
もう一つの夜。
月が照らされ、人影が見える。
黒髪に紅い一筋のメッシュ。
少女がひとりいた。
「くらくらくら」
特徴的な笑みとともに少女は物思いに耽る。
(銃が欲しい。……人を殺すための銃が)
髪を梳き、紅い毛を掴んだ。
そして、顔を傾けた。
「血が欲しい。銃が欲しい。命が欲しい」
くらくらと笑いながら、少女は呟いた。
女子高校の彼女の名は倉本愛無。勝気な性格である。
自身に人を殺す能力がないことを悔やんでいる。
絶望と血と渇き――。
抑えられない衝動を胸に日々を生きている。
学校では孤立している。
とある屋上で前かがみの姿勢をとっていた。
(もう少しで落ちるな。それもまた一興)
くらくらという少女の声が闇に響いていた。