06.他人事
この街に純人間は少ない。準人間は多数いる。
わざわざあなたは人間ですか?など聞いたりしないので確かでないが。商店街や街中では明らかに人力では無理な施工や運搬を行っているものが散見される。それを当たり前のようにして通り過ぎる人々。いままで澤井に世話を頼まれたのも妖怪や物の怪であった。都市は相変わらずがらんとして人口密度が低い。が、最低限の生活ができるくらいには人手がある。
ものの資料によると、日本の行方不明者は年間数千人だ。
澤井に言ってみたことがある。もしかして、この街に連れてこられているのでは。行方不明者の何割かでもこの街が飲み込んでいるなら、これだけの発展もうなずける。
「そんなことしませんよ、いても年間1人くらいです。それもちゃんとここを選んで踏み入った人だけですよ、失礼な」
ぷんぷんと怒っている。
「じゃあどうして人がいなくなっているんだ」
「知りませんよ。人間が分からないことを全部ウチのせいにされても困ります」
「他人事だな」
「人の事なので」
「神隠しに縋りたい気持ちは分かりますよ。それなら人間は誰も悪くないですからね。でもちゃーんと、人間のせいでいなくなっています。安心してくださいね!」
澤井は満面の笑みで請け負った。