表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

02.新居

 朝日が瞳を刺す。起きる。家主は朝餉の準備を終えていた。出された食事を黙々と食べる。皿洗いをした。手に当たる水が冷たい。これはどうも夢ではない。


「今日は街を案内しますね。入用のものは全部買っちゃいましょう。経費です」


 誇らしげに財布から出した通帳を見せ、これがあれば何でも手に入るんですよ、と語っている。


「それじゃなくてこれですかね」


 悪いとは思いつつ訂正する。黒いクレジットカードがあったので、それを示してやる。


「それかもしれません!」


 街の主の話すことは万事がこの調子だった。商店の名前、通り道、バス停の位置。その度に通りがかりの住民に訂正を受けては悪びれずにいる。情報はうのみにせず客観的な評価を確認する。それを心に書き留めた。


 意外にも、この街には住人がいた。まばらで栄えているとは言えない人気ではあった。しかし地域によっては商店街があったり、商業施設やビルが運営されていた。どれも建てられたばかりに見える。


「まずはあなたの家を決めましょう。どこがいいですか?」


「どこでもいい」


「うーん、できればこの子のために公園とかスーパーとか近い方がいいですね。こことかどうですか?」


 主は男へ聞いているが、自分の中では既に決まっている場所を指さした。


「じゃあそれで」


 男は頓着なく決めた。

 ベッド、布団、家電一式、LEDライト、トイレ用品。商業ビルで一揃え購入する。現物を購入すると店員が奥へ持っていく。即日配送が決まる。夕方までには届く。


 新築のマンションにはコンシェルジュがいた。主が声をかけて空室の鍵を所望するとすぐに出てくる。購入したものが既に到着していたため、マンションの管理スタッフによって部屋に運び込まれた。男はそれを眺めていた。主の指示で流れるように配置が決まっていく。


「では明日から頼みますね。朝に事務所に来てください。服装は自由ですよ、斉木 唯一さん」


 男は自分が名乗っていないことを思い出したが、どうでも良かった。


「あんたは何て呼べばいい」


 主は澤井、と名乗った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ