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94話 終わりは突然に

「殿下!」


 凶悪な刃に討たれ、その場に倒れたオーディ王子の下へと駆け付けるオリベル。それを見た暗殺者の男は役目を終えたとばかりにその場から離れる。


「任務完了だな。よくやった」

「御意」


 そうして影魔法の男がオーディ王子を指した男をねぎらうと、次に二人の方へと視線を移す。


「俺達の武器には即効性の毒が塗られている。殿下もすぐに死に至ることでしょう。それでは」


 男の言葉通り、オリベルの視界に映し出されているオーディ王子の死へのカウントダウンが刻一刻と刻まれている。

 その時間は最早、一分にも満たない程であった。


「オリベル、すまねえ。油断してた」

「……いえ、まだです」


 次の瞬間、爆発的な力がオリベルから噴き出してくる。それは王城の中だからと制御していたことなどすっかり忘れた全力が。

 その力の波に討たれたある者は気絶し、またある者はその驚異的な力の奔流にしり込みをしたままその場から離れられずにいた。


 かくいう影魔法の男も、遮断魔法の女ももれなくその場から動けずにいた。


「最初からこうしておけば良かったんだ」

「……お前達、ずらかる」

「させない」


 その瞬間、王城の事など一切無視した大出力のオリベルの一撃が全てを刈り取る。オリベルを中心とした無数の黒い斬撃が周囲を切り刻んだのである。

 と同時にオリベルの左手は瀕死のオーディ王子の胸に当てられていた。助けられるかは分からない。だが、それを試さずにはいられないのだ。


再生(リボーン)


 強く優しい光がオーディ王子の身体を包み込んでいく。その間にもオーディ王子の死のカウントダウンが進んでいる。


 10、9、8、7、6……。


 もう手遅れなのか、それとも最初から助ける術はなかったのか、分からないながらにオリベルは必死で不死神の力を発揮していく。

 不死神の力は発揮すればするほどオリベルの意識を奪っていく。精神面でも肉体面でも蝕まれながらオリベルは力を発揮していく。


 3、2、1……。


 カウントダウンが1秒を表示し、間に合わないかと目を瞑ったオリベル。既に周囲には人が集まってきているのを感じ取るが、そんなことは関係ない。

 今までのオリベルにはない、熱い感情が体中を迸っていた。


「助かれえええええ!!」


 そう叫び、最後の力を振り絞った次の瞬間、死へのカウントダウンは1という数字を表示させたまま停止する。そして先程までの死期とは違う、新たな死期がオーディ王子の顔に刻まれていた。


「……良かった、何とか助けられた」


 オリベルはそれを見てホッと胸を撫で下ろすとその場に倒れこむのであった。



 ♢



「何がどうなっている!?」


 オーディ王子の暗殺計画の結果を告げられたアーロン・エイキン軍務副大臣は焦りに焦っていた。なぜなら、暗殺が失敗したはおろか、暗殺者全員が囚われの身となったからである。


「腕が良いと聞いて奴等を雇ったというのに!」


 アーロンにとってオーディ王子が次期国王となる事に酷く危機感を覚えていた。それはオーディ王子が自身の汚職について目を光らせているという情報を入手していたからである。

 今は権力が無く、人を動かす力がそれほど大きくはないために強制捜査にまでは至っていないが、権力を持ってしまえば、いずれ悪事が暴かれてしまう。


 そう、この男は私利私欲のためだけにオーディ王子を暗殺し、第二王子を次期国王にしようと画策していたのである。

 あまつさえ、第二王子に取り入り、傀儡政権を立ち上げることが出来れば、という新たな汚い野望も持ち合わせていた。


 しかしその計画もすべて台無しである。


 そんな時、焦っているアーロンの部屋の扉がノックされる。


「アーロン、話がある」


 その声はアーロンにも聞き覚えのある声であった。そしてその男の“話”の内容について心当たりがあるアーロンはさらに焦る。


「しょ、少々お待ちください!」

「いや待てんな」


 アーロンの言葉も空しく、乱暴に扉が開かれるとそこに立っていたのはウェルネス・ディアーノ軍務大臣、そしてその周りには武器を構えた兵士達の姿があった。


「アーロン。お前にはオーディ殿下殺害未遂及び数々の汚職についての容疑がかけられている。このことに異論はあるか?」

「え、あー、な、何の話ですかな? 私は今まで部屋で休息をとっておりましたのでまだ何があったのか理解しておらず……。オーディ殿下に何かあったのでしょうか?」

「……あまり私を失望させてくれるな」


 その瞬間、ウェルネスの纏う魔力が暴発的に膨れ上がる。その力に気おされたアーロンはヒィッという情けない声を出してその場で尻餅をつく。


「お前は優秀な指揮官であった。だから私は副大臣へと推薦したのだ。だというのにその時からその高い地位に胡坐をかき、あまつさえ権力を乱用し、様々な悪事へと手を出していたのはもう知っている。今回の事件で早まっただけだ」


 そうしてウェルネスは数枚の紙を取り出して、それをアーロンへと見せつける。そしてそれを見たアーロンはすぐに察する。


「これはお前が取引をしていた貴族共のリストだ。お前を泳がせておいたのは汚職を行う貴族すべてをつるし上げるためだったんだよ。だというのに調子に乗って王族を殺すという愚行を重ねるとは。実に残念だ」


 そう告げられたアーロンの顔には最早、抵抗する意思すら見受けられない。それを見たウェルネスが指示を出し、項垂れるアーロンを兵士が乱暴に持ち上げるとそのまま連行していくのであった。

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