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54話 過去

「何だ思ってたより被害は少ないみたいだな」


 リュウゼン、ディオス、クローネ、そしてミネルの四人が任務としてミネルの故郷の村を訪れる。

 ただ、魔獣による被害が思っていたよりも少ないのか村ではそのような焦燥に包まれていることはなくいたってのどかな光景が広がっていた。


 肥沃な土地に包まれ、黄金色の作物が風で靡いている。そんな収穫期真っただ中な村の中を黒い制服を身に纏った四人の騎士が歩いていく。


「ミネルちゃん、それに騎士様も。おはよう」

「ミネル。あんたもとうとう騎士様かい。大きくなったね~。案内は必要かい?」

「いいよ。道は知ってるから」


 すれ違うたびにミネルや他の三人に声を掛けてくる村の人々。

 それに挨拶を交わしながら村の中心部まで歩いていく。目的は村長の家への訪問、そして被害状況の把握であった。


 ミネルが村の案内人となり、村長の家の前へと到着すると、呼び鈴を鳴らす。少しして逞しい体の持ち主の男性が姿を現す。


「よく来たなミネル。まさかお前が騎士となってこの村へ戻ってくるとは思わなんだ」

「私もこんなことで戻ってきたくはなかったけどね。それでお父さん、被害状況は?」

「え、お父さん?」


 ミネルのお父さんという発言に対してディオスが驚いたような声を出す。


「あら? 言ってなかったかしら。私のお父さんがこの村の村長よ」

「へえ、そうなのか。あんまし顔似てねえな」

「ちょっとディオス失礼でしょう」


 クローネがすかさずディオスの頭を小突く。その光景を見て少し呆気にとられた後、ミネルの父親はガハハと豪快に笑った。


「ハッハッハッ! 村の皆からもよく言われる。ミネルも息子も母親似でな。っと、そういや被害状況の把握だったよな。それについて話したいことがあるから中に入ってくれ」


 そう言ってミネルの父が四人を居間へと招き入れる。少し大きめの居間があり、その中に大きな机と八人分の椅子が並べられている。


 そこにミネルの父と対面するように四人で座ると早速話を始める。


「さてと、なにはともあれ取り敢えず挨拶からだな。俺はミネルの父でもありこの村の村長でもあるガルード・ライバーだよろしくな」

「リュウゼンだ、よろしく」

「クローネ・アスティエールです。よろしくお願いします」

「ディオス・ラミネーターだぜ。よろしく」


 一通り初対面の挨拶が終わるとミネルから被害の状況を伝えてくれと促す。

 ミネルは少し嫌な予感がしていた。なぜなら、自身の兄と母の姿が見えないからである。


 もしかしてと促してみるとやはりガルードは少し顔を曇らせる。


「今回の被害者は既に10人程度いる。その中にはミネル、お前の母親も混ざっている」

「やっぱりね。お兄ちゃんは? 姿が見えないけど」

「あいつは魂狩りを追いかけて奴の下へ勝手に行っちまったんだ。まあ強いからそこまで心配はしてないんだが」


 ミネルの兄は村で自警団を務めている。その実力は騎士となったミネルよりも強く、村の皆からも信頼されていた。

 相手は新種の魔獣だ。自警団の力だけでは倒せるか怪しい。だからこそウォーロットの騎士団が呼ばれた。


 それから部屋に案内され、母親の呼吸はないのに脈はあるという不気味な症状を見た後、ミネルはガルードにこう尋ねる。


「お父さん、魔獣が出た場所を教えてくれる?」

「ああ。場所はな……」


 そうしてガルードから魔獣が居る場所、そしてミネルの兄が向かった場所を聞き出すと四人は村を後にする。

 村から出てすぐに小川がある。この先を歩いていけばやがて広大な平野へとたどり着く。

 その平野にて魔獣が居を構えているらしい。


「新種か~、言っても魔力障壁の薄い奴にしか呪いをかけられねえんだろ? 余裕じゃねえか?」

「もう、そうやって油断するから毎回リュウゼンに負けるんですよ」

「ああ? そうだよ」

「てかお前、最近入団したばっかのミネルにも負けてねえか?」

「それはミネルが強いだけだ。俺が弱いわけじゃねえ」


 ミネルの無属性魔法は相手の防御力を無視した攻撃が出来るため、ディオスが土属性魔法で防いだとしても貫通してくらってしまうのだ。

 そのため、手合わせでは毎度のことながらディオスはミネルに敗北を喫していた。


「うん? 人が居るぞ」


 平野に佇む一人の男性。短髪でがっちりとした体型の男性である。その髪の色はミネルと同じくクリーム色の珍しい髪色であった。


「お兄ちゃん!」

「うん? ミネルか」


 ミネルに話しかけられ振り向いた男性の顔はミネルと同じく整った顔である。


「カッコいいわね。お兄さん、この後お食事でもいかが?」

「クローネ。お兄ちゃんが困るからそういうのやめてもらえる?」

「あら、ごめんあそばせ」


 美男子へとここぞとばかりにアピールするクローネをミネルが瞬時に対応する。

 そんなことをしている場合ではないというのもあるが、単純に兄が好きであるという気持ちもある。


「あれが魔獣の住処か? なんか思ってたより小さいな」


 大きな川の真ん中で川底へと根を張って生えている小さな小屋がある。それが新種の魔獣の住処である。


「ディオス、お前の土属性魔法で何とかならねえのか?」

「いやこんだけでかい川を横断できるくらいの土属性魔法なんて俺の魔力じゃ無理だ。せめて空を飛べたら良いんだがな」

「その点は大丈夫。僕があそこまでの道を切り開くから」


 そう言ってミネルの兄、レンオウが川へと手を差し出した瞬間、水面を波打つ風の道が出来上がる。

 そこへレンオウがスッとその風の道へと足を踏み入れるとふわふわと浮かびながら川の上を渡っていく。


「すご。ディオス以上じゃねえか」

「おい、悲しくなるから比べんじゃねえ」

「仕方ないわよ。お兄ちゃんは私よりも強いもの」


 そんなミネルよりも弱いディオスが敵う訳がないと言って余計に煽る。本人には煽る気がないため余計にディオスの眉がピクピクと動く。


「俺たちも行くぞ」


 レンオウの後に続き、四人もその風の道に足を踏み入れるのであった。


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