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52話 新手

「オリベル、ミネルさん。あれを見てください!」


 土人形たちを切り伏せていた最中、突如としてオルカが上空を指さしながら叫ぶ。何だろうと軽い気持ちで顔を向けたオリベルはその光景に驚愕する。

 なぜならそこには巨大な天空城が浮かび上がっていたからである。


「あれが魂狩りの本拠地ね。ただあそこまで行くのには私の力が必要かしら?」


 現状、ミネル以外に上空を飛び回る力を備え持っている者は居ない。したがって、ジャンプでは届き得ないほどに高い場所に存在するその城へとたどり着くにはミネルの力が必要であった。

 しかし、その城の周りには土人形と同じように魂狩りから魂を与えられた翼を持った魔獣たちがうようよ存在している。


「二人は下の魔獣を狩っててもらえる? 私一人であの城に乗り込むわ」

「一人で勝てるのですか? 以前取り逃がしたのでしょう?」

「うっさいわね。前の私じゃないんだから大丈夫に決まってるでしょう!」


 そう言うとミネルが空へと駆けだす。こうなったミネルは止めることが出来ないのは妖精蝶での任務で二人は理解している。


 それにミネルほどの実力者であれば一度取り逃がしたとはいえ勝てるだろうという思いもあり、二人は特に強く引き留めることなく下の魔獣を蹴散らすことに専念する。


「戦闘狂じゃなくなっても根っこの部分は同じですね」

「まあ仕方ないな。僕達じゃあそこまでたどり着けないし」


 上空で魔獣を蹴散らしながら城へと向かっているミネルの姿を見て二人はそう呟くと、また土人形狩りへと移行する。


 土人形の力は火属性、水属性など様々な属性魔法を扱う。更には驚異的な膂力も持ち寄り、それ単体だけで言えば危険度Bくらいある。

 危険度Bといえばオリベルが最初勝てなかった一角狼の一段階目の進化個体と同程度の力である。


 しかし、不死神の鎌を持ち、あの頃よりも成長したオリベルなら容易く屠ることが出来ていた。黒い斬撃が土人形を蝕んでいく。

 そうしてある程度土人形を倒していたその時、突如上空から何かがオリベルの頭をめがけて降ってくる。間一髪で避けるとその正体を見定める。


 土人形とは背格好の異なる人型の魔獣。明らかに纏っている魔力量が桁違いに多い。


「新手か」


 見るとオリベルのところだけでなくオルカのところにも降ってきているらしいその翼の生えた人型の魔獣は空間へと手を伸ばすとその魔力を以て何もない空間から巨大な黒い剣を作り出す。

 その剣を一振り振るえば、地面が抉れるほどに強烈な一撃が放たれる。それを間一髪で回避すると、そのまま首筋めがけて大鎌を振るう。


 刹那、空気が張り裂けるほどの金属音が鳴り響き、その衝撃波で地面が砕ける。


「強いな」


 黒い腕甲に包まれた右腕に強化されたオリベルの一撃をも阻む力。先程までの土人形とは大きな違いがあった。


 魔力の扱いに長けた魂が込められた人形。体は金属のような素材でできており、かなり頑丈にできている。

 その無機質な人形からは嘆きの声すら発されない。あるのは完全なる無であった。


 硬化した金属質の体とは裏腹に鞭のようにしなる四肢を振り回しながらオリベルの鎌と交える。オリベルもその弾力のある攻撃の数々を大鎌一本で防ぎきっていく。


 一対一の戦いならばオリベルに分がある。研ぎ澄まされた先読みの力で相手の剣劇の合間を縫って大鎌を振るう。

 黒い斬撃を伴った大鎌は金属の体に直撃すると、一気に斬り伏せる。


「まだ倒れないか」


 体が抉られながらも僅かにまだ倒れ切っていない人形を見つめてそう呟く。危険度は優にAを超えているだろう。下手をすれば危険度Sにも届き得る。

 そんな時、突如としてオリベルの目の前が凄まじい爆発が起こり、先程まで戦っていた人形が消し飛ばされる。


「オリベル」

「オルカか。どうした?」

「魔獣たちの動きに少し違和感がありませんか? 私達の方向へ進行してくる個体と全く別の方向へと進行している個体がいる気がします」

「……確かにそんな気がするな」


 魔力感知を周囲へと広げると確かにオルカの言うとおりであることを確認する。まるでどこかへと引き付けられているかのような、そんな動きは確かに不思議であった。


「誰かが迷い込んだのかもしれないな。オルカは引き続きここら辺の魔獣を倒しておいてくれ。僕が見てくるよ」

「頼みました」


 オルカから離れ、土人形を斬り伏せながら土人形たちが目指している方向をめがけて走っていく。

 しばらく走ると、前方にかなりの数の金属の体で出来た翼の生えた魔獣が降り立っており、その真ん中から誰かの声が聞こえてくる。


「くそ! 何だよこいつら! 全然効かねえ!」

「この声はもしかして」


 声の主に気が付いたオリベルはすぐさま魔獣の集団に駆け寄ると、そのまま鎌を縦に振るい、声の主までの道を作りだす。


「レオン! こんなところで何をしてるんだ!」


 今にも連れていかれそうになっているレオンに怒鳴りつける。村からここまでついて来てしまっていたのだ。死期が見えているだけにオリベルの焦りは最高潮に達していた。


「今助ける!」


 レオンの下へと駆け寄ろうとするオリベル。しかし、二人の間に数体の金属の体を持つ人形が阻む。

 一方はすさまじい風を纏った拳で、もう一方は炎を纏った拳で同時にオリベルに向けて放たれる。

 オリベルは体を捩ってすれすれのところで回避すると、カウンターの如く鎌を走らせて二体の人形を斬りつける。


「た、助けて……」


 途中で声が途切れたレオン。次の瞬間には翼の生えた人形によって空へと運ばれていた。目的は恐らくあの宙に浮かんでいる大きな城であろう。


「待て!」


 オリベルが飛び上がろうとするも別の人形が行く手を阻む。その対処をしているうちにレオンを運んだ人形は既にオリベルの手の届かないところまで飛翔しているのであった。


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