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51話 魂狩り

「ミネルさん。今回の魔獣について何か知っているのですか?」


 村を離れ、魔獣が潜伏していると考えられる荒野を駆けながらオルカが尋ねる。これまでの言動と突然、やる気を取り戻したミネルの様子に違和感を抱いていたのだ。


「あんまり言いたくないし思い出したくもないことだけど、昔私達の部隊が取り逃がした魔獣なのよ。今回の呪いはその時の魔獣が掛けた呪いと同じなのよ」


 そう告げるミネルの顔にはどこか陰りが見える。呪いをかけた魔獣を取り逃がしたという事はどういうことを意味するのかをすぐに理解した二人は場の空気を察して口を噤む。


「ていうかそんな話してる暇ないわ。早く魔獣を倒さないとあの母親死ぬわよ。あの症状になるっていう事は末期だから」


 オリベルは死期を見ているから分かる。あの母親の死期は今日で間違いない。だからこそ、ミネルの言っていることが正しいのだと判断することが出来た。


「あなた達に一応、情報を共有しておくわ。魔獣の名は『魂狩り』。危険度Sに指定されてるけどあれからかなりの時間が経過しているからもしかしたらそれ以上に強くなってるかもしれないわ。そしてその力は生きる者の魂を奪って新たな生命体を生み出す力ね」

「生きる者の魂を奪う……そんな神様みたいな魔法があるのですか」

「奴は特別だから。ある日突然現れた謎の魔獣よ。他に同一種を見たことはないわ。もしかすると神に覚醒するかもしれないくらい強いかも」


 神になるかもしれない、そう言い切るミネルの目には普段であれば強敵を前にして漲るはずの闘志はない。代わりに哀愁の漂った瞳で遠くの方を見つめている。


「呪いって言うのは魂を奪われたってことか」

「そうね。厳密に言えば魂は生きているけれど先に体が死んじゃう、みたいな感じかしら。なんにせよ早くしなきゃいけないのは変わりないけど」


 それからミネルから魂狩りの情報が詳細に話されていく。魂狩りの見た目は基本、人間と同じ見た目をしているらしい。なぜなら、魂を奪った人間の体を使って行動しているからだとのこと。

 そして戦闘力に関しては当時のミネル、リュウゼン、ディオスの三人パーティで挑んで取り逃がしてしまったという。


「他人の体を使っているから無暗に強力な攻撃できないのが難点ですね」

「そう。まあでもいざとなればぶっ飛ばすけどね。今度は絶対に逃がさない」


 そう言って駆けている三人の耳にふと人間のうめき声のような物が聞こえてくる。


「早速居た。魂狩りの被害者たちよ」


 見ると前方に土で出来た巨大な人形のような物が至る所に存在し、その口から助けてくれ、死にたくないなど様々な言葉が紡がれていた。


「この土人形が魂狩りが魂を奪って作り出した化け物ね。こいつらを破壊してやれば元の持ち主のところへ魂が戻るはず。片付けるわよ」

「了解です」

「了解」


 ミネルの指示に従って三人が同時に駆け出す。ミネルは無属性魔法を、オルカは爆発魔法を、そうしてオリベルは不死神の黒い鎌を握りしめ、飛び掛かっていく。


「はあっ!」


 土人形がその鈍重な動きを以て拳を振り下ろす。それに対して同化により右腕に黒い不死神の鎧を纏わせたオリベルが勢いに任せて大鎌を振るう。


 大鎌から放たれた黒い斬撃はいとも容易く巨大な土人形の体を切り裂き、破壊する。


 破壊された土人形はその後、糸の切れた操り人形のようにピクリとも動かなくなり、やがてサアッとただの土となって地面へと帰る。


 続けてオリベルは次の土人形へと狙いを定めて走る。その瞬間、オリベルを巨大な火の玉が襲い掛かる。土人形から放たれた火属性魔法であった。


 それをオリベルは軽々と避けるとその刃を振るう。

 すると土人形の体はやはり真っ二つに分かたれるが、その手応えにオリベルは違和感を抱く。


「さっきと硬さが違う? それに火属性魔法を使ってきたな」


 先程破壊した土人形からは一切の魔力を感じられなかったのに対して、今倒した土人形からは魔力を感じられた。


「もしかして魂によって強さが変わるのか?」


 魔力操作が出来ないのならば先の様に簡単に倒せる。しかし、巧みに魔力を操作できる魂が込められているのだとすれば厄介になるであろうことが容易に想像できた。


「にしてもこの鎌、切れ味が凄いな」


 初めての実戦での運用。鎌という特殊な造形な上にまだ使い慣れず、十分に発揮できているとは言えないとはいえそれでも以前まで使用していた剣とは比較にならないほどによく切れる。

 かなりの硬度の魔力障壁を持っていた土人形ですら容易に斬ることが出来た。


「まあ、まだまだ居るけど」


 先程までは見当たらなかった荒野に続々と現れる巨大な土人形たちの群れ。その一つ一つから苦痛のうめき声が聞こえてくる。


「早く解放しないと」


 そう言ってオリベルは再度鎌を振るうのであった。


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