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41話 国王のお願い

 グラゼルに連れられて馬車に乗り、王都へとやってきたオリベル。王都へ到着すると一息をつく間もなく城へと連れていかれる。

 道中でオリベルはグラゼルから何故呼ばれたのかという話を聞いていた。

 曰く、グラゼルが不死神の武器適合者として国王に推薦したからであると。

 不死神の武器の適合者を募っていることに関してはオリベルも第十部隊の訓練場の掲示板に貼られていた紙とクローネからの説明で何となく知ってはいた。

 だがまさか自分がその立場になるとは思ってすらいなかったのだ。なぜなら属性魔法すら使えない者が魔力の塊のような神の武器を扱えるとは思えなかったからである。


「そう言えばグラゼルさんって神の武器の適合者なんですよね?」

「うん、そうだよ」


 元々、オリベルは神の武器に適合できるわけがないと思い込んでいたがゆえに志願する気が毛頭なかった。

 しかし、グラゼルに適合者になり得ると言われてから実は密かに興味を抱いていたのだ。

 それというのもオルカの死期を覆したグラゼルが神の武器の適合者だと聞いていたからである。


 妖精女王との一件を終えた後、オリベルはなぜ死期を変えることが出来たのかと考え続けていた。一つは死期が見えるオリベルの存在が居ること。

 しかしそれだけでは死期を変えることが出来ないのは父の時で理解している。


 次にオリベルの頭に浮かんできたのはグラゼルの存在であった。特にその手に持つ神の武器だ。


 たとえ類稀なる才能を持ち、凄まじい力を持つものという条件で良いのであればステラの近くにオリベルが居る時点で死期は変わっているはずである。

 ステラにはなくてグラゼルにはあるものは何か。それは明らかに神の武器であった。


「僕も適合者になれますかね」

「それはやってみないと分からないな。でも僕はいけると思うんだけどね~。君の魔力、不死神に似てるし」

「不死神に似てる……ですか。まだ属性魔法を習得できていないので全然想像つきませんけど」

「それが不思議なんだよね~。何で習得できてないんだろ。こんなにはっきり魔力の性質が分かるのに」


 グラゼルが不思議そうに首を傾げる。


「まあでも属性魔法が使えるかどうかじゃなくて大事なのは神との相性だからね。あんまり気にしなくて良いと思うよ」


 その言葉にオリベルは安心する。実際に適合しているグラゼルが言うのだからこれほど信頼できるものはない。


 そんなことを話しながら城の中を歩いていると、目的の場所に到着する。両開きの扉をグラゼルがノックする。


「陛下。グラゼルです。オリベル君をお連れしました」

「入ってくれ」


 扉を開けてグラゼルが入っていく。それに続き、オリベルも中に入る。中には大きな机が置かれており、その机の周りには椅子が並べられている。


「こんなところで済まないな、騎士オリベルよ。私がこの国の王、アーサー・フォン・ウォーロットだ。よろしく頼む」

「ウォーロット騎士団、第十部隊隊員のオリベルです。よろしくお願いします」


 威厳のある国王の前でオリベルは出来る限り無礼のないように気を付けながら挨拶をする。

 この辺の作法は誰からも習っていなかったため少し緊張していたのだろう。オリベルはそのまま勢いよく頭を下げる。


「ハハッ、オリベル君。そんな畏まらなくて良いんだよ。別に公の場所じゃないんだし」

「お主は砕けすぎだがな。まあ別に今更気にしないが……まあそういう訳だオリベル。座ってくれ」

「はい!」


 オリベルは国王に促されるまま着席する。

 この部屋はいつもは隊長達と国王が会議する場所として使われている部屋だが、こういう国王からの大事な相談事というのも執り行われていた。


「それで早速本題に入りたいのだが、オリベルよ。其方の魔力が不死神の魔力と融和性が高いとグラゼルから聞いた。そして団員の中では最も適合性が高いと」


 一呼吸を置きながら更に国王は続ける。


「ただ神の武器へ適合するというのはかなりの代償を払う恐れがあるものだ。無理にとは言わぬ。不死神の武器との適合、やってみてはくれないか?」


 神の武器と適合するかしないかはほとんど賭けに近い。そしてもし適合できなかった場合、オリベルは多大な代償を支払う事となってしまう。

 それがゆえに国王は命令にはならないよう言葉を選びながらオリベルへと語りかける。


「もちろん、私から頼んでいることだ。適合できなかった時には出来る限り君へサポートするつもりだ。どうだ?」

「やります」

「うむ、そうだよな。無理にとは言わないのだ。普通、こんなに大事なことをこの場だけで決めるなんてできる筈が……うん? 今何と言った?」

「やります。僕も挑戦してみたかったので」


 オリベルの中ではステラを死期という運命から救い出せるかもしれないという思いがあるため、断る理由がないのだがそれが国王やグラゼルにとっては意外であった。


「オリベル君? ちょっと決断早すぎじゃない?」

「そうだぞ。下手をすれば人生を狂わせてしまうかもしれぬ大事な決断なのだぞ。しっかりと時間を取ってだな」

「大丈夫です。どうせ挑戦するつもりなら今やっても後でやるにしても変わりませんので」


 とにかく早く自分の力にしたい。そして早くステラを助けられるほどの力を手に入れたい。その一心のオリベルは逆に考え直すように言ってきた二人の言葉を拒否する。

 二人とも少しの間はオリベルの決断の早さに驚いてはいたが、徐々に落ち着きを取り戻す。


「少々意外であったが本人がやる気であるならば頼んでいる手前、止める理由もないな。グラゼル、ついて来てくれ。今から不死神の武器の下へ行く」

「承知いたしました」


 そうしてオリベル達はその部屋を後にするのであった。

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