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35話 不自然な木

「たく、おめえら。鍛錬がなってねえぞ」

「面目ねえ」

「油断していたわ」


 リュウゼンが部隊員のディオスとクローネを叱責する。つい先ほど、幻覚を見ていた二人を正気に戻し、元凶であった妖精蝶の進化個体を倒したところである。


「ミネルを迎えにいったらオリベルとオルカのところに向かう。魔力感知からしてミネルは……」


 リュウゼンがそこまで言った時、道の脇から爆発音が聞こえて何かが飛び出してくる。


「噂をすれば何とやらだな」

「ん? アンタたち何してんのよ。探したわよ」


 現れたのは妖精蝶たちを蹂躙した後のミネルであった。向こう側にはつい先ほど倒したのであろう妖精蝶の進化個体の姿が見える。


「お前が勝手に飛び出していったんだろうが」

「ふん! 別に良いでしょ! 私の勝手よ! というかアンタもヒトの事言えないんじゃないの? 新人たちが見当たらないけど?」

「ぐっ、痛いところを……」


 実際二手に分かれて探したほうがオリベルもディオスやクローネも全員を効率的に探し出せるための指示であった。

 しかし、そのせいでオルカとはぐれるという失態を犯しているのも事実である。


「取り敢えずお前も一緒に来い!」

「ハイハーイ」


 妙に痛いところを突かれ、若干ぶっきらぼうな口調になりながらリュウゼンが指示を出す。

 ミネルは暴れて少し満足したのかすんなりと指示に従い、隊列に並ぶ。


「ミネル。そう言えば近くで大きな穴が空いた木を見なかった?」

「そういえばそんなのもあったわね。それだけ妙に光が弱かったから覚えてるわ」


 ミネルの言葉にクローネはやっぱりと頷く。最初はそういう植生なのかと思っていたクローネだが、何度か同じように穴が空いた木を見つけたため不思議に思っていたのだ。


「その穴がどうかしたのか?」

「同じ形の穴が多くて少し気になったのよ」

「ふむ。それは確かに気になるな。()だけに」

「ディオス。つまらん冗談は辞めろ。首を斬りたくなる」

「ごめんって。和ましたかったんだよ」


 そんなこんなで四人が森の中を歩いていると、先程話していた穴の開いた周囲よりも少し背の高い木々が見えてくる。

 今回は、集団で生えそろっており、明らかに何かがあったと思われるものであった。


「クローネの言う通り、何かありそうだな」


 光を失った穴の開いた木をそっと撫でてリュウゼンが呟く。周囲の木々からは感じ取れる魔力の一切が目の前の木から感じ取れないのだ。

 穴が空いている以外は見た目も同じ木だというのにどうしてこうなるのか。まるで力が丸ごと抜けてしまったかのような、そんな暗い木々の間をゆっくりと歩いていく。


「オルカ達の魔力もこっちの方から感じるんだが……不気味だな」


 そしてその暗い木々の通りを抜け、いつも通りの光り輝く木々の下へたどり着く。その輝く木々の根元に足を踏み入れた瞬間、光っていた木々の輝きがより一層増し始める。


「な、なんだこれは?」


 一本、二本と続いて合計で周囲の木全てが輝きを増していく。

 突然輝きを増した木々を前にして四人が警戒した次の瞬間、木の幹が真ん中からパカリと割れ、中から何かがゆっくりと出てくる。

 そのなにかは出てきた後にゆっくりと羽を広げてその姿を露にする。妖精蝶の進化個体であった。

 それもただの進化個体だけではない。その中でも比較的、背の高い木から生れ出た進化個体はどこか他よりも背丈が大きく、魔力量も桁違いである。

 一角狼の時と同じ二段階目の進化個体であった。


「なるほどな、さっきの穴はこいつらが生まれた後だったってことか」

「ただの光る木に見えて妖精蝶が生まれる繭みたいなものだったのね。それに木の背の高さで魔力量が違う気がする」


 四人はこの光輝く森の正体を知る。そして同時にこれらすべての光り輝く木々の中から一斉に妖精蝶たちが生まれるとすると、どれほどの災害が起こり得るかを理解する。


「へえ、楽しくなってきたじゃない!」


 目を輝かせながらミネルが最も魔力量の多い妖精蝶へと突っ込んでいく。そして拳を突き出し、その妖精蝶へと向かって衝撃波を放つ。

 衝撃波が妖精蝶へと激突する瞬間、暴れるような激しい突風が吹き、ミネルの衝撃波と拮抗する。そして無防備となったミネルの両側面から別の進化個体が風の刃を叩きつける。


「だから飛び出すなって言っただろうが」

「ミネル、ダメでしょ。リュウゼンの言う事を聞かないと」


 ミネルを襲う風の刃をリュウゼンとクローネが飛び出してきて間一髪で防ぐ。


「うっさいわね。別に私だけでも何とかなったわよ」


 地面へと降り立ち、二人にそう文句を垂れるミネル。それを見てリュウゼンはハアッと溜息を吐く。


「お前はいつになったら成長するんだ? もう子供じゃあるまいし」

「まあそれがミネルの良いところでもあるんだけどね~」

「そうやってクローネが甘やかすからああなってんじゃねえのか?」

「そう言うディオスこそミネルに対しては甘いじゃない」

「俺は甘いんじゃねえ。相手すんのがめんどくせえだけだ」


 第十部隊おなじみの言い合いが繰り広げられる中で、妖精蝶たちがわらわらと集まってくる。それを見たリュウゼンは黒い焔を身に纏い、剣を構える。


「言い争ってる場合じゃねえ! さっさとこいつらを片付けて二人を探し出すぞ!」

「言われなくても分かってるわよ!」


 四人が妖精蝶に向かって駆ける。それを見た妖精蝶が四方八方から強烈な風の刃を生み出してくるのであった。

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