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22話 一角狼との戦い

 オリベルは二人と離れて森の中をかき分け走っていく。森の中を走ると目的である一角狼はすぐに見つかった。


「五匹か。前の時よりも少ないし僕でも倒せるかな」


 そう呟くとオリベルは一身に白い均一なオーラを纏っていく。一角狼は嗅覚が優れている。もとより奇襲の効果がないことを聞いていたオリベルはそのまま五匹の群れの下へと飛び出す。

 地面を蹴り、近くに居た一匹に勢いよく接近すると構えていた剣を首に目掛けて振りかざす。しかし、すんでのところで横から飛び出してきた一角狼の角に阻まれ刃が弾かれる。

 上手く刃の腹を下から突きあげられたため、万歳をするような格好となってしまう。


「ちっ、流石に狼なだけあって瞬発力はあるか」


 刃を弾かれたオリベルは他の狼からの追撃を免れるために後方へと飛び退がる。オリベルが予想した通り、元居た場所へと残りの三匹の角が空を切る。

 元々は群れを成さないとは思えないほどの連携を発揮した一角狼たちにオリベルは更なる警戒心を持って睨みつける。

 対する一角狼達もオリベルの事を獲物ではなく強敵と認定しその鋭い眼光で睨みつける。


「それにしても頑丈な角だ」


 刃の腹で衝突したとはいえ新入り騎士の中で最も身体強化魔法の強度が高いオリベルですら折れない程の角の強靭さ。危険度Dの魔獣が如何に脅威であるかを思い知らされる。


「ちゃんと狙って斬れば折れる筈だけど」


 精神を研ぎ澄まし、一角狼たちの動きを(つぶさ)に観察する。統率されているというよりかは体系化された一角狼たちの動き。この場に長は居ない。ただ明らかにこの連携を教える上位者が居る動きであった。

 一直線に突進してくるのではなくちゃんと五匹がそれぞれの配置へつき、様子を窺っている。オリベルが真正面から突入すればいつでも囲い込めるようにと。


「一体ずつ確実に仕留めていかないと終わるな、これ」


 オリベルの金の眼が光る。地面が抉れるほどの踏み込み、そこから生み出されるは常人離れした超加速。動体視力に優れている一角狼ですら追いつけない程の速さである。

 次の瞬間には右端の一体の目の前で剣を振りかざすオリベルの姿があった。それに遅れて一角狼も反応するが、それでは間に合わない。


 確実に息の根を止める一撃が振り下ろされ、一体の一角狼の首が斬り落とされる。続けて振り下ろした剣を地面へと突き刺し、それを軸として体を一回転させ、襲い来る他の一角狼たちを蹴り飛ばし怯ませる。


「まだまだ!」


 更に回転した勢いのまま地面へ突き刺した剣を再度構え、もう一体の一角狼を斬りつける。更にもう一体の首を斬り落とす。残るは二体。

 体勢を立て直した一角狼たちから突然仲間を失った焦りから連携が消える。連携があったからこそ危険度D以上の力を発揮していた。

 それが無くなってしまえばただの危険度Dの魔獣だ。オリベルにとってみればさほど脅威ではない。


「はあっ!」


 順番に突進してくる一角狼を切り裂いていく。そこからは呆気なかった。苦戦することなく二体の首を斬り落とし、血の付いた刃を布で拭うとオリベルは一息をつく。


「オルカの言っていた通り戦闘で大事なのは何事にも動じない心だな」


 最後の二体となった途端に連携が崩れ、一体一体が浮いた駒となったのを見て改めて実感する。魔獣討伐はオリベルにとって初めての事だ。

 オルカから指導を受けていなければオリベルもああなっていたかもしれないなと改めて感謝の思いが募ってくる。


「さてと」


 懐から出した火打石で魔獣の遺体を焼却する。魔獣は体が残っていると魔力が残っているためこうして焼却しなければ不死の魔獣となって甦る危険性があるのだ。

 こういう時、火属性魔法を持っている者や亡骸ごと消し飛ばせるオルカが羨ましくなる。


「よし、消えたな」


 焼却し終わった火が完全に消え去ったことを確認するとオリベルはその場を後にする。



 ♢



 一角狼が数十体と並び立つ丘の上で一匹の巨大な二足歩行の狼の魔獣が胡坐をかいて座っている。遠目から見れば獣人のように見えるが、その頭から生える一本の大きな角が魔獣であることを示している。


 一角狼の長であった。


 その二足歩行の一角狼は何かに気が付きゆっくりと立ち上がると、近くに埋まっていた2メートル台の岩を軽々と持ち上げふりかぶり、空へ向かって勢いよく投擲する。


 凄まじい速度で打ち出された岩は見事に上空を飛んでいた怪鳥を打ち落とすことに成功する。それに仲間の一角狼たちが群がり、その岩を投げた一角狼へと持ってくる。


 先程撃ち落とした怪鳥は冒険者たちから難敵として恐れられている危険度Cの魔獣である。

 本来の一角狼では狩ることのできないレベルであったが、この人型の一角狼はそれを軽々と狩っていた。最早、単体で既に危険度Dの魔獣ではないことはだれの目から見ても明らかであった。


 仲間の一角狼が持ってきた怪鳥の肉を一度頬張ると群れの方へポイと投げ捨てる。そうすると他の一角狼たちが群がり、餌にありつく。彼らはこうして長が残す餌を安定的に享受できるがゆえに繁殖力が高まったのだ。


「グオオオオオッ!!!!」


 長が吠える。すると、先程よりもさらに多くの一角狼たちが森の中から飛び出してきた。


 数百にも及ぶであろう一角狼達。その群れを引き連れて長が動き出す。オリベル達が居る森へ向かって。

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