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140話 理外の存在

 リュウゼン、ミネルが宙を舞う。それを補助するかのようにディオスとクローネが魔法を放つ。


黒焔剣(こくえんけん)!」

双竜衝波(そうりゅうしょうは)!」


 魔力を吸収しながら強大化していく黒い焔と両手から放たれる凄まじい衝撃波が土属性魔法と闇属性魔法によって妨害されている鬼の巨人へと迫りゆく。

 その反対側には巨大な鎌を持った少年と細身の剣を握った少女の姿がある。


「座標指定」


 少女がそう呟き、手をかざすと鬼の巨人の体全体に渡って爆発の兆しが植え付けられていく。


「チェイン、エクスプロード」


 そう言って少女が手を下した瞬間、壮絶な爆発が巻き起こってゆく。至る所で起こった爆発はどんな攻撃も効かぬ鉄壁の防御を打ち砕いていく。


「ナイスだオルカ」


 次にオリベルが大鎌を持ち、宙を舞う。その体は真っ白で均質な魔力に覆われている。

 呻く鬼の巨人がその進行を妨害しようといかなる魔法や拳を放とうとすべて見切って突入していく。


天牙黒閃(てんがこくせん)!」


 大鎌から放たれた絶対的な強さを誇る黒き斬撃、そしてウォーロットの騎士団上位部隊における最強の矛である二人の攻撃が同時に鬼の巨人へと降りそそぐ。


 そして次の瞬間。


 空気が爆ぜたかのような轟音を奏でながら鬼の巨人の体が爆発に飲み込まれてゆく。


「オリベル、成長したな」

「いえ。まだまだこの程度じゃないです」

「へえ、生意気になったじゃない。前は純粋だったのに」


 オリベルとリュウゼンそしてミネル。かつての同胞達は互いに違う使命を抱きながら戦場で交差する。


「油断するな? まだ奴は死んでねえ」


 リュウゼンが言うよう、爆煙から姿を現した鬼の巨人は怯んではいるもののまだまだ倒れそうではない。

 その周囲に8種類もの色の違った球体から無数にレーザーが射出されていき、その全てがこちらに降り注いでくる。


 オリベルがひらりとそのレーザーのうちの一つを回避すると、地面に深さが分からないほどの風穴を開ける。

 一つでこの威力だ。それが無数に打ち下ろされる戦場はまさに惨状。

 それらを軽々と回避していくのは流石と言ったところであろう。全員が卓越した身体能力の持ち主なのである。


「オリベル! 強くなったなぁ!」

「何もしなかったわけじゃありませんからね」


 退団してからというものオリベルは鍛錬に鍛錬を重ね、更に不死神の力への親和性を高めていた。

 その一撃はさることながら推定危険度SSの宝石亀すらもその攻撃を防御しきれなかったほどである。


「オーディ殿下。離れていた方が良いのでは?」

「大丈夫さ。俺は未来予知で避けられるからな」


 オーディ王太子はクローネの言葉にそう返す。そして大鎌を振るいながら宙を舞う白髪の少年の姿を見つめる。


「神の力をかなり引き出せるようになったみたいだな。はてさて、お前の未来はいつも白紙だから見応えがあるよ」


 鬼の巨人が大きく拳を振るうことによって生み出された衝撃波がオリベル、そしてリュウゼンとミネルに襲い掛かる。

 それらを各々が回避することなく、技を以てして防ぎきる。


「く~、効くぜこれ」

「あら? 大した力じゃなかったけど?」

「強がんなよ。お前の両手が痛いって悲鳴を上げてるぜ?」

「馬鹿じゃないの」

「隊長に向かって馬鹿とはなんだ馬鹿とは」

「隊長とはいっても同期でしょ。あ~嫌だわ。すぐに肩書でパワハラしてくる男なんて」


 リュウゼンとミネルの小競り合いが戦場の緊張感を緩和する。彼等のやり取りからしてまだ気持ちに余裕が残っているのだろう。

 軽口をたたき合っている姿を見てオリベルは微笑ましそうに眺める。


「オリベル、油断しないで。来るわよ」


 オルカからそう告げられ振り返ると、そこでは鬼の巨人が巨大な焔の剣を作り出しそれを構えているのが目に入る。

 そして数瞬後、振り下ろされた焔の剣から生み出されたのは炎の海。

 触れるだけですべてが燃え尽きるような凄まじい猛攻にオリベルは大鎌を振るい、対抗する。


「炎なら得意分野だぜ!」


 対するリュウゼンは炎から逆に魔力を吸い取りながら自身の大きな黒い焔を作りだし、反撃する。


「おっりゃあああ!」


 ミネルは空を蹴り、衝撃波で鬼の巨人の顔元まで走り昇ると、拳を打ち放つ。

 しかし拳から打ち出された衝撃波は鬼の巨人による頭突きでかき消されてしまう。


「そんな……私の全力がただの頭突きなんかで」


 ミネルの攻撃が弱い訳ではない。ただ鬼の巨人の膂力が強いだけである。


 そうして次に炎の海を吸い込んで肥大化した巨大な黒焔が鬼の巨人に襲い掛かる。

 触れればその者の魔力を奪いながら更に威力を増していく、特別製の炎。

 鬼の巨人とて魔力を持つ存在である以上、触れるとただでは済まない。かと言って魔力を使った攻撃でかき消そうとするとさらに大きくなる恐れがある。

 はてさてどうするか。そう、単純にその黒焔に向かい拳を振るうのである。


 それも魔力を一切纏う事なく。


 身体強化をするまでもなく拳を振るうだけで衝撃波を生み出し、強大化した黒焔ですらもかき消してしまう。


「ちっ、あっちの技は食らえば一瞬でおっ()ぬってのにこっちの攻撃が一切効かねえのってのは厄介だな」

「そんな感想言ってる暇あったら体を動かしなさい。来るわよ」


 そしてひっきりなしに撃ちだされる無数の魔法群。これらをすべて回避しきり、攻撃してもなお鬼の巨人の体力が削れる様子は見えない。

 底が見えない鬼の巨人の魔力量。持久戦ともなればオリベル達が不利になるのは目に見えている。


「同化するか」


 オリベルの身体が不死神の姿で纏われていく。しかし、白い魔力はまだ健在である。


「おっ、全身同化できるようになったのか」

「まだ表層だけで中身はまだまだですけどね」


 リュウゼンの言葉にそれだけ返すとオリベルは凄まじい速度で走り出す。

 度々鬼の巨人から攻撃が打ち出されるが、ビクともしない程強固な身体強化魔法で覆われているオリベルには効く由もない。

 そして舞い上がるとオリベルはその手に持つ大鎌を大きく振るう。


 刹那、白い光が世界を覆う。


 そして生み出されたるは極絶の一撃。


 深々と鬼の巨人へ最初に刻まれたのはオリベルによるものであった。


 グオオオオオ……。


「どっちもバケモンみたいな力しやがって」

「私も負けてらんないわね!」


 神VS神の激突を見た者の反応はさまざまである。しかし、どの反応も両者の力が理外の域にあることは共通しているのであった。

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