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135話 賞金首狩り

「本当に来るんでしょうね! ちょっと遅くない!?」

「そうカリカリしないでネル。きっと来るさ」

「セインはちょっと楽観的すぎるのよ。ああいう極悪人は仲間すら簡単に切り捨てるんだから!」

「へ? ホントですかいネルの姉御」

「もしもの話ね。駄目だよ、ザルムは信じちゃうんだから」


 クラーク獣王国のとある倉庫の中で三人の賞金首狩りが駄弁っている。

 その三人の近くには魔力で拘束されたオルカの姿があった。


「それにしても何も話さないわね。アンタ、生きてるの?」

「……」


 話しかけられてもオルカは無言のままだ。

 話すという行為それ自体が敵に情報を送ることを意味するからである。

 しかしそれにしても泣き言の一つも言わないオルカにネルと呼ばれた女性、ネルガース・ガーレットは困惑していた。

 少なくとも素人ではないだろうと思っていたが、賞金首ですらない彼女の胆力が常人のそれでない事に驚いていた。


「そういえばあの賞金首の事、クーゼウスの奴も狙ってなかったっけ?」

「あー、あのイカレ野郎だろ? それこそ民間人でも邪魔をする奴は殺すっていう闇ギルドの」


 何も話さないオルカから興味を失ったのかそんな会話を始めるネルガース達。

 そこから最近の賞金首狩りの内情について談笑を続けていたそんな時であった。


 空気がひりつく、その表現が最もこの状況を言い表しているだろう。


「現れたね、奴が」


 次の瞬間、倉庫の扉がゆっくりと開き、大きい鎌を背負った白髪の少年と紫髪のオドオドとした様子を見せる少女が姿を見せる。

 オリベルとマザリオであった。


 オリベルはそのまま躊躇うこともせずに一歩一歩とネルガース達の下へと歩いてゆく。


「そこで止まりな。さもないとコイツを殺すよ?」


 そう言われたオリベルは歩みを止め、ジロリと三人を睨みつける。

 そして次の様に述べるのであった。


「誰を殺すって?」

「へ?」


 ネルガースが素っ頓狂な声を出すのも無理はない。

 何故なら、いつの間にか拘束魔法から抜け出していたオルカがその手に持つ剣をネルガースの首に当てがっていたのだから。


「私があなた達に大人しく捕まっていると思っていましたか? 間抜けですね」

「は? えちょっ、セイン!?」

「動かないでください」


 狼狽えるネルガースを前にオルカはただ冷徹に剣を首に当て続ける。


「まさかこの短時間で僕の拘束魔法を解いたって言うのかい?」

「嘘でしょ? 危険度Sの魔獣でも押さえつけられるのに」

「え、捕まった振りだったのですか!?」


 驚きを隠せないでいるネルガース達。

 しかし、オリベルは大して驚いた様子を見せずにオルカの方へと歩いてゆく。


「おかしいと思ったんだ。今から人質になる奴が悠長に『知りたい事がある』なんて捨て台詞を残さないだろ?」

「やろうと思えば別にマザリオを救出して倒す事も出来たのですが、どうせなら賞金首狩りの内情も知っておきたかったので」


 そしてオルカの目論見は見事に成功していた。

 三人からの賞金首狩りの動向。その中には更なるオリベルを標的としている者も居たのである。


「これ以上、私達を付け狙わないと誓うならば命までは取りません。ですが、次もし万が一に敵となるようでしたら覚悟はしておいてください」


 魔力の籠ったオルカの冷淡な言葉は賞金首狩りに臓物を一気に掴まれたような恐怖心を植え付ける。

 オルカの細い剣に当てられたネルガースは足を震わせながら地面に膝をつき、セインは言葉を失い、腰に差していた剣を地面に落とす。


 しかし、この中でただ一人だけ戦意を喪失しなかった者が居た。


「姉御を放せー!」

「馬鹿っ、不用意に動くな」


 ネルガースが焦って叫ぶもザルムには聞こえない。

 練り上げられた身体強化魔法が鍛え上げられた肉体に纏われていく。

 見た目、そして本人の性格からは想像が出来ないほどのきめ細やかな魔力にオルカは少し感嘆の吐息を漏らす。


「……ですが技術の方はまだまだのようですね」


 襲い掛かってきたザルムを容易に地面へと転ばすと、ネルガースへ向けていた剣をザルムへと向け直す。


「さて、約束した通り覚悟してもらいます。まずはあなたから」

「ちょちょっと待って! そいつは馬鹿だけど良い奴なんだよ! それにあんた達からすれば私達なんてカスでしょ? 見逃してくれない?」

「最初は正直脅威にはならないと思っておりましたが、先程の魔力を見てそうは言ってられないと判断いたしました。それでは」

「ちょっと待ってオルカ」


 オルカが剣を突き立てようとしたその時、オリベルから待ったが入る。


「何でしょうか?」

「僕は人を助けるために騎士団を抜けたんだ。殺すために抜けたんじゃない」

「あなたが殺す訳ではありません」

「余計にだよ。君が人を殺すのは見過ごせない」


 そう言うとオリベルはスッと拳を構える。決して大鎌を抜くことはない。何もオルカを傷つけたいわけではないからである。


「この賞金首狩りを野放しにしておけばいずれ私達の脅威となります。それくらいの強さはありますよ?」

「それで命まで奪うのは僕達のエゴって言うんじゃないかな? とんでもない犯罪者ならまだしもさ」


 互いに譲らない二人の言い合い。それをオロオロと見るマザリオ、そして二人の圧に冷や汗を流している三人の賞金首狩りの姿がある。

 そんな時であった。

 凄まじい轟音、そしてその数秒後にオリベル達が居る場所を地面が盛り上がる程の激しい地震が襲ったのである。


「何だ、このとんでもない魔力。二人とも、行こう! 嫌な予感がする」

「「はい」」


 そうしてオリベル達は賞金首狩りはそのままに倉庫から飛び出していくのであった。

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