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134話 人攫い

「マザリオ!」

「オリベルさん!」


 オリベルがキャッツへ戻ると今にも泣きだしそうな顔でマザリオが駆け寄ってくる。その後ろには申し訳なさそうにしているキャッツの女将さんと主人が立っていた。


「どうしましょう! 私のせいでオルカさんが……」

「面目ねえ。俺が付いていながら」

「大丈夫。そう焦らないで。オルカならそう簡単には死なないから」


 焦る二人を前にオリベルは努めて冷静にそう告げる。オリベルとて離れるまでの死期しか見ていないため、本当に死なないかどうかは分からない。

 ただ、状況を把握するためにオリベルは自分の中にある焦りと不安をかき消していたのである。


「マザリオ、魔法で連絡できるようになったって言ってたよね? それって繋がらないの?」

「はい。繋がらないんです」

「気を失ってる可能性が高いか……取り敢えず詳しく教えてくれ」


 そうしてマザリオはここで会ったことを語り始めるのであった。



 


「……こうっですかっ!?」

「違います。動きが全然雑なままですし、何より身体強化魔法が揺らぎ過ぎです。それではすぐに保てなくなりますよ」


 オルカはマザリオの突き出した拳を軽々と回避すると、マザリオの顔面へくっつきそうになるくらいの距離で掌底を止める。

 動いている相手に対しピタリと寸前で掌底を止めたその動きからは洗練された技術が浮かび上がってくる。

 流麗なオルカの無駄のない所作にマザリオは感嘆し、息を呑む。


「何を止まっているのですか? まだまだこれからですよ」

「は、はい!」


 もうオルカとオリベルの荷物にはならない、そのためにはオルカから施される訓練を余すことなく頭の中に叩き込むつもりでいた。

 しかしそんなマザリオの心とは裏腹に既に体は疲弊してしまい、オルカとの手合わせの途中で地面へと崩れ落ちてしまう。


「限界のようですね。今日は一先ずこんな所にしておきましょうか」


 そうオルカが口にした瞬間であった。

 突然オルカとマザリオの間に二人を分かつようにして強大な魔力が発生したのである。

 それにいち早く気が付いたオルカはすかさずマザリオの下へと駆けだすも、既に何者かがマザリオを包囲しているところであった。


「おっと。そこの黒髪の女には少々止まっておいてもらおうか」


 金髪で如何にも聖なる騎士然としたその男は格好に似合わない紫色の魔力をオルカに向けて放つ。

 マザリオが包囲されているため下手な手出しができないと考えたのかオルカは素直にその魔力を受け入れる。

 ピリリと肌を焼くような感覚が一瞬起こると、体中に鎖のような物が纏わりつき、オルカの行動を封じる。


「な、何なんですかあなた達はっ!」

「そりゃあ俺っち達は賞金首を狩りに来た賞金首狩りに決まって……」

「馬鹿やろ! なに普通に言ってんだよ!」


 筋骨隆々な男に細身で男勝りな口調の女が引っ叩く。

 どうにも仕事が出来そうにも見えない三人組ではあるが、実力は確かなようで話していながらもオルカへの注意は怠らない。


「賞金首狩りが何の用でしょう? 私達は指名手配などされておりませんが?」

「すっとぼけてんじゃねえ。この町に入る時にあたしゃこの目でちゃんと見たんだよ! アンタと金貨200枚の指名手配犯が一緒に歩いているところをね!」

「それを見た姉御が、私達じゃ勝てねえって言いだして隙を探そうと必死だったんだぜ!」

「だから言うなって! ザルム、アンタいつになったら覚えるんだい……と・に・か・く! 良いかい? アンタ達! 人質は貰った! この女を返して欲しければ一人でこの場所に来いと伝えろ!」

「……うむむむぐッ!? う~~」


 マザリオは声を出そうにも口を塞がれているため、うまく出せないで藻掻いている。

 そして、せっかく二人の荷物にならない様にと頑張り始めた矢先にもうこんなことが起きるのかと自己嫌悪に陥る。


「じゃあ言っといてね? 来ないとこの子の命がどうなるかは分かんないよ?」

「少しお待ちください」


 三人の賞金首狩りがマザリオを連れて立ち去ろうとした時、オルカがそれに待ったをかける。


「良いのですか? その子を人質として連れて行って私をこの場に置いて行ってしまえば、この魔法が解けた瞬間にあなた方を殺しに行くことが出来ますよ?」

「え、それは困る。殺す?」

「馬鹿。正面からじゃ勝てないわよ」

「じゃあこっちを殺すか?」

「アンタも馬鹿ね。それじゃあ人質作戦の意味が無いでしょうが」


 オルカの挑戦的な言葉に不穏な会議を始める三人組。そしてようやく考えがまとまったのか、よしっという言葉が聞こえ、女がオルカの方を振り向く。


「決めた。アンタを人質として連れていくわ。じゃあその子は解放して」

「解放しちゃって良いんですかい?」

「良いのよ。だって場所を伝える人が居なくちゃこの作戦の意味が無いでしょうが」

「あそっか」


 そうしてマザリオは解放されるや否やダッシュでオルカの下へと舞い戻る。


「すみません、オルカさん! 私が弱いばっかりに!」

「別に良いですよ。私も知りたいことがありますので」

「知りたいこと?」


 オルカはそれ以上詳しくは語らないままで賞金首狩りの下へと歩いていく。

 そして三人組が立ち去った直後、マザリオはいの一番にオリベルへ連絡するのであった。


『大変です! オルカさんが!』

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