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123話 伝説の獣人

「まさかキャッツの皆に会うなんて運が良かったな」


 獣人の国にてキャッツの面々と会ったオリベル達は彼らの宿屋に泊めてもらうことになった。今回はオリベルだけ別部屋で、オルカとマザリオは同じ部屋となっている。


「まだ油断は出来ないですけれどね。裏切られる可能性も一応考慮しておかないと」

「裏切られる!? 私達、騙されたんですか!?」

「いや、マザリオ。可能性の話ですからね? まだ裏切られると決まったわけではありませんが、一応この額ですので」


 オルカはそう返しながら一枚の紙を机の上に置く。それは最早見慣れていたオリベルの指名手配書である。しかし、その下に書かれていた数字は見覚えの無いものであった。


「金貨二百枚になってるな」

「うわ~凄いですね~。こんな金額、見たことないです」

「この金額ですとそろそろ神殺しが動き出しそうですね」


 今までは国というよりかは軍部が率先して動いていた。しかし、先の第三部隊を導入している様から見るに軍部だけでなく国全体としてオリベルの事を探し始めているのだろう。

 神の力を持った危うい存在、それと同時に仲間になれば猛威を振るうであろう有力な人材。オリベルにはその二つの可能性が見出されているのである。

 だが、オリベルの中には現状国に帰るという選択肢は全くと言っていい程存在していなかった。


「まあ、僕は目的を果たすまで王国に戻るつもりはないけど」

「そうでしょうね。というか今更戻ると言われてもこっちが困ります」

「ですです」


 そんな時であった。部屋の扉をコンコンとノックする音が聞こえる。


「皆さ~ん。ご飯できましたよ!」

「はーい」


 アーリの呼びかけにオリベルが応え、腰を上げる。それに続きオルカとマザリオも席を立ち、食事場所へと向かうのであった。



 ♢



「それでですね~。少し昔の話なんですけど伝説の闘技士が居てですね~。並みいる強者たちをばっさばっさとなぎ倒していったらしいんですよ」

「へえ、それは実に興味深いですね」


 今、オリベル達はアーリたちと共に食事を摂っている最中である。この宿屋はまだ閉店中であり、女将と主人を含む六人で家族の様に机を囲い、話し合っているのである。

 そしてアーリの話の中で出てきた闘技士というのは獣人の国で最も栄えている催しの一つ、闘技大会に出場する戦士たちの事を言っているのである。


「そういえばこの人も昔は闘技士を目指していたんですよ~」

「おい、馬鹿。言うんじゃねえよ、恥ずかしい」

「え~、だってあの時のあなた、カッコよかったじゃないの」


 女将と主人がそう言い合っているのを微笑ましそうに眺めながらオリベルは飯を食らう。こうして人前で堂々とフードを取って食事を摂るのは彼にとって久しぶりの事である。

 そのことに喜びを覚えながら二人の話をにこやかに聞く。


「アーリさん。伝説の闘技士ってどういう人だったのですか?」

「お、気になります~? 気になりますよね! では僭越ながら私、アーリが伝説の闘技士について解説させていただきます!」


 それからアーリによる伝説の闘技士が如何に凄いことをしたのかという談議が始まる。

 伝説の闘技士、バウラス。凛々しいたてがみが特徴的なその獅子の獣人はまだ無名であった時代にそれまで無敗を誇っていた闘技士を一撃で沈めたのだという。

 そしてそれからというもの彼に勝てる者はおろか、攻撃を加えるのすら不可能なまま闘技士たちは次から次へと薙ぎ払われていったのだという。


「成績は好調! まさに天下無双! 獣王様からも是非騎士になってくれとお誘いされるほど順調だったんです! けど……」

「けど?」

「三か月で姿をくらましてしまったんです」


 闘技士は獣王国きっての大人気職業である。そこで無敗の王者ともなれば億万長者にもなれるだろう。しかし、伝説の闘技士バウラスはその地位をかなぐり捨てて姿を消したのだという。


「一説には獣王国では出会えない更なる強敵を求めて旅に出たと言われてます」

「なるほど。手合わせしてみたかったですね」

「オルカって案外戦闘狂だよな」

「そんなことありませんよ? ただ腕を磨きたいだけですので」


 そう言うオルカの瞳には明らかに闘争の意志が灯っている。恐らくオリベルが口にした戦闘狂という言葉は当てはまっていることだろう。


「そんなに強い人が居たんですね~。いいな~。私もそれくらい強かったらよかったのに」

「あら? そこまで言うなら私が強くしてあげますよ、マザリオ」

「へ?」

「そうと決まれば早速明日から訓練ですね。まずは身体強化魔法から……」


 マザリオが要らないことを口走ったと気が付いた時には最早手遅れであった。つらつらとオルカの口から語られていくその訓練内容をマザリオが青白い顔をしながら聞き、他の者が苦笑いを浮かべて時間が過ぎてゆくのであった。

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