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105話 人材不足

「今回の依頼は特別でかい仕事になりそうだぜ」

「ウォーロット王国からの依頼なんだってな……ってAランク冒険者以上じゃないと受けられないじゃねえか」

「そう早合点するな。ほら、こっちの依頼書を見てみろよ」


 冒険者ギルド内では連日、とある依頼の内容について大盛り上がりしていた。その理由は、世にも稀な宝石亀と呼ばれる危険度S指定の魔獣が出没したという事もあるが、一番は王国から直接出された依頼という点である。

 通常、王国が冒険者ギルドへと依頼を出すのは珍しい。なぜなら彼等にはウォーロットの騎士団という世界最強の部隊が居るのだからそもそも必要が無いのである。


 ただどうして今回の依頼発注に至ったのか。その理由は無論、人材不足によるものであった。


「うん? 討伐補助?」

「ああ。討伐依頼には参加できねえが、後方援護とかだったらDランクからいけるんだ。報酬も旨いし、やるしかねえぜ?」

「おう、良いぜ!」


 そんな風に冒険者たちが話し合っている最中、一人の女性が宝石亀の討伐補助任務の依頼書に釘付けになっていた。


「討伐補助……これなら私でも」



 ♢



「君達に協力してもらいたいのは宝石亀っていう魔獣の討伐依頼なんだよ」

「宝石亀?」


 情報屋と会った次の日の昼間、いつもと同じ酒場にてオルカとオリベル、そしてベンディス達のパーティが集まり、話し合っていた。

 内容は協力すると言った依頼の内容についてである。


「百年に一度現れるか現れないかっていう超希少な亀の魔獣さ。全身に魔力を吸収する特殊な宝石を纏っているんだ。何でもその宝石は市場で高く売れるらしいけど、その分、危険度もS以上っていうかなりの強敵なんだ。だから君達の協力が必要なのさ」

「なるほど。ただ依頼書を見るに何パーティも参加するのですよね? 私達の協力が必要なようには思えないのですが」

「いやぁ、それがそうでもないんだよ。なあ」


 そう言ってベンディスは隣で飲んでいるパーティの仲間の男に声を掛ける。声を掛けられた男はベンディスの問いかけに同意するように深く頷く。


「Aランク冒険者以上じゃないと討伐任務には参加できない。そしてこの町に来れるAランク以上の冒険者は僕達だけなんだ」


 それは冒険者が擁する高ランク冒険者の数がまだまだ少ないということもあるが、一番は急激な魔獣被害の増加に起因していた。


「最近の魔獣被害は特に熾烈さを増している。ついこの間まで危険度B程度だった種族の魔獣が今じゃ危険度Sに到達する魔力量を保有している」


 魔獣被害の増加により、ただでさえ希少なAランク以上の冒険者達の活動に制限がかかっているのだそう。

 そう言われて二人はここに来るまでの道中で倒した魔獣のことを思い出す。

 その魔獣も本来ならば危険度A程度の筈が魔力測定を行うと軽く危険度Sを超えていた。


 個体によって魔力量も強さも変化するだろうしそんなものかと思っていた二人だが、どうやらそれが各地で起こっているのだという。


「他の高ランク冒険者は他の魔獣被害に向かっていて忙しい。だから危険度Sの魔獣の素材を換金した私達を仲間に引き入れようとした訳ですね」

「そういうことさ」


 ベンディスの言葉にようやく納得するオルカ。冒険者でも何でも無い見ず知らずのオルカにわざわざ協力を募ってきた事でどうも怪しさを拭いきれなかった。

 そのため、未だに追手の罠なのではないかと疑っていたのだ。


「……っと詳細はこのくらいかな。ただ協力者って形だから冒険者ギルドからお金は入らないけど」

「大丈夫ですよ。もう既に対価は得てますから」


 そうして当日の集合場所と時間を知らされて二人は酒場を後にする。


「オリベル。あなたは拠点で待っておいて下さい。聞いていた感じでは人目を浴びそうですし」

「うん、そうするよ。オルカもあの人達も死なないだろうし」


 オルカの顔に刻まれている数字を見てオリベルは頷く。


「……最初は信じていませんでしたが、本当に見えるのですね」

「まあね。嫌な事に」


 そんな二人が日が沈みかかり、人通りの少ない場所をゆっくりと歩いていると、一人の女性が前方から歩いてくる。

 何気ない日常。ただ違うのは妙に深刻な顔をして一枚の紙切れと睨み合っている事だろうか。


 二人と一人は何もなくそのまま通り過ぎる筈であった。この時までは。


 オリベルはオルカと話しながらも少しだけその女性の姿が目に入る。


 普通ならばただの景色として捉えられる筈であったオリベルはしかしとあるものに気が付いてピタリとその足を止める。


「どうしましたか? オリベル」

「……先に帰っておいてくれない? 用事が出来たかも」

「はい?」


 オルカの返事を待たずしてオリベルの姿が消える。オリベルが居なくなっている事に気が付いたオルカは人知れずため息を吐くのであった。

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