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102話 尾行者

 オルカが角を曲がれば怪しげな人物も間を置いて同じく角を曲がる。その数は一人ではない。そして全員が男の様である。

 そんな風にして人気のない所へと進んでいくオルカを尾行していく怪しげな男達。


「へへっ、馬鹿な奴だぜ。自分からわざわざ人気の無い所まで来るなんてよ」

「馬鹿なのはあなた達の方です」

「「「ッ!?」」」


 そんな時、突然後ろからそんな声が男達へと投げ掛けられる。

 驚いて後ろを振り向くとそこには先程まで自分達が尾行していたはずのオルカの姿があった。


「誰ですか? 私に何か用事でも?」

「へへへっ、自分から来てくれんなら話は早え。さっき渡された伝票を寄越しな」


 そう言ってオルカに向かって、いきなり武器を取り出す男達。

 大方、先程のオルカと受付のギルド員とのやり取りを耳にして奪いにきたのであろう。

 そしてその言葉を聞いたオルカはというとどこか納得したかの様な表情を浮かべていた。


「追っ手にしては杜撰だとは思いましたが、ただの素人ならば納得ですね」

「追っ手?」

「ああ、あなたには関係のない事です」

「生意気な奴だな。良いからさっさと伝票を寄越せ! 大人しく出すってんなら見逃してやっても良いぜ?」

「いやいや待てよ。こんな上玉だぜ? このまま手放すのは勿体ねえ」

「何もこのまま手放すなんざ言ってねえ。殺さずにおいてやるってだけだ。俺達のアジトでゆっくり可愛がってやるのさ」

「ケケケッ、そりゃ良い案だぜ。最近、任務も上手くいかなかったしちょうど良い憂さ晴らしに……」


 男が言い終わる前にその男の顔が突如爆発する。その爆発が直撃した男はそのまま泡を吹いてその場に倒れ込んでしまう。


「気持ち悪い事をよくもまあ恥ずかしげもなくツラツラと言い連ねられるものですね。吐き気がします」


 オルカがそう告げた瞬間、またもや男共の頭付近で爆発が生じ、さらに三人分の被害を出す。

 この冒険者達は考えなかったのであろうか。あれほどの大金を稼ぐというのがそれに見合った実力者である事を意味すると。


 ただ顔を知らないという理由と見た目から、オルカが危険度S程度の魔獣を倒したわけではなく、他の者が倒した者をただ換金しに来た使いと思い込んだのである。

 まあ、あながち他人が倒したものを持ってきているという点は間違いでもないのだが。


「……な、何なんだお前は」

「あなた方に伝える義理はありません」


 そう言うと残りの男の頭も爆破する。ただ力は抑えているため、全員死んではない。

 その代わり顔の全てに火傷が出来てはいるが、命がある事に越した事はないだろう。


 それもオルカの慈悲による物ではなく、ただ単に頭が爆散する様を目の前で見るのが不愉快だったからにすぎないが。


「……あなたもお仲間ですか? そこに隠れているのは分かってますよ」


 男達を片付け終わった後、虚空に向かってそう呼びかけるオルカ。

 一見誰もいない様に見え、実際に何の返事もなかったのだが、何故かオルカは続けて戦闘モードのまま近くにある裏路地に手を向ける。


「お仲間ですね。それでは……」

「すまないすまない。別に怪しい者じゃない」


 そう言うとオルカが手を向けた先から一人の男が現れる。

 栗色の短髪に白銀の鎧で身を纏った背の高い男。騎士のような出立ちのその男が両手を上げながらオルカの前へと歩いてきたのである。


「最初の問いかけに応えず出て来なかった時点で十分怪しいですけれど?」

「すまない。まさか本当にバレているとは思わなくてね。てっきりブラフかと思ったんだ」

「本当にバレているとは思わない? そんなに魔力を出しっ放しでよくそんな事が言えますね」

「え、君、魔力だけで分かるの? そりゃ凄いな」


 そう言われて一瞬自分の事を舐め腐っているのかと思ったオルカだが、すぐに魔力感知というものがあまり一般的ではない事を思い出す。

 騎士団では当たり前のように使われてはいるが、そもそも騎士団に入る事自体が並大抵のものではないのだ。

 普通の価値観ならば寧ろいまオルカの目の前の男の方が正しいのだ。


「いやね、そこの奴等がギルド内でよからぬ事を企んでいるのがたまたま聞こえてね。それで奴等を尾けていたらたまたまここに来たってだけなんだ」

「それは分かりましたが、では何故私が襲われそうになった時に出て来なかったのでしょうか? その頃から居たのは気付いていますよ?」

「マジか、そこまで気付いてたのか。いや本当は最初助けるつもりでいたんだよ? でもさ君が強いって途中で分かったから、どれだけ強いのか確かめたくなっちゃったんだよ。それについてはすまなかった」


 平謝りする男にどこか胡散臭さを感じるオルカ。しかしこれ以上相手にするのが時間の無駄だと悟ったのか男に対して背を向けて歩きだす。


「本当に悪いと思っているのでしたらそこに落ちているでかい有機物をブタ箱にでも叩き込んでおいてください。それでは」

「あっ、ちょっと待ってくれ。君に話したいことが……」

「すみませんが、あなたの素性が知れない限りこれ以上情報を渡すわけにはいきませんので」


 男の呼びかけにオルカは歩みを止めないまま、そう告げる。その後ろ姿はもう関わらないでほしいという意思の表れであった。

 そんなオルカの態度を見てもなお諦めきれないのか男は再度こう声を掛ける。


「Aランク冒険者のパーティには興味ないかい?」


 その言葉でオルカは足を止める。その様子を見ていけると判断したのか男は更に言葉を続ける。


「単刀直入に言おう。危険度S指定の魔獣を倒した君の力が僕達のパーティに欲しいのさ」


 突然のパーティ勧誘である。冒険者は依頼をこなすために他の冒険者たちと組むことが多い。それを固定のメンバーで構成するというのがパーティという仕組みである。

 そしてパーティ自体にもランク付けという物があり、Aランクパーティともなるとかなり発言力も強くなる。


 男の言葉に一瞬黙り込み、少し思考したのちにオルカはくるりと男の方へと振り返り、こう告げる。


「パーティに加入する気はありません。その代わり、協力という形でしたら条件次第で引き受けましょう」

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