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火の魔女リアナ  作者: かつおのかたたたき
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4 新たな家族?

お肉のチューリップたべたい。



――――こんこん、とドアを軽くたたく音がする。


「入ってください」


「失礼します」


扉を開けると部屋は明るかった。

蝋燭の火とは種類の違うどちらかというと日の光に似た明るさで埋め尽くされている。

目が明るさに慣れてくると部屋の奥にはその光を掬いあげるように所持している釣目の男がいた。


「―――ご報告です。ウイヴルの子供と思われる瞳を持った者が現れました」


「またですか。それで序列はわかりましたか?」


「はい。私の見る限り、龍素の総量からして1位ではないかと」


「――――厄介ですね……」


手元の光が消え、火魔法で蝋燭に火が灯される。釣目の男はほんの少しだけ肩を落としながら仕事机の椅子に座り、両肘を立てて手を組み、それに額を乗せた。


「――――無駄だとは思いますが、監視を続けてください。そしてこう伝えるのです。『隙あらば殺せ』と」


「了解いたしました。では」


言い終わると同時に報告をしに来た男は瞬時に姿が消えた。


そして隙を見つけてむやみやたらに攻め込むバカがいるかもしれない事実に気づく。まずは情報を集めることを優先しなければ。


「言葉足らずでしたね。訂正しに行きましょうか」


扉を開けようとすると廊下の方から


「今のめっちゃ決まったぞ!めっちゃよかったぞ!」


と聞こえてきた。「攻め込みそうなバカがここにいました」と思いながらも釣目の男は絡みたくないので無視することにして、椅子に座りなおすことにした。


――――「空間移動で部屋から廊下に出るだけなのはとっても格好悪いのではないですか」と一言いいたいところですが、彼の尊厳が保たれませんね。やめておきましょう。


「それにしてもウイヴルですか。欲に走った邪龍が死んで潰えたと思っていたら、自分の魂を世界中…いや世界の外にまでばらまいていたとは。本当に厄介な龍です」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「ついにやってまいりました!都市タリア!!」


門を通るときもひと悶着ありましたが、何とかして入ることができました!

入ってみるとなんだか賑やかな雰囲気で人がたくさん屋台もたくさんおいしいものはたくさん!

もぐもぐもぐ……

久しぶりの食事だなあ。おっと、向こうに見える屋台はもしや!

あっちだあっち!ドゥインさんあっちに串刺しの魚が!!!


「おうおう、元気になったのはいいがあんまり暴れっと背中から落ちるぞ」


「しゅん………」


「りっちゃんてそんなキャラだったっけか?これがりっちゃんってことか」


ドゥインさんは一人で謎の結論に達しているけどリアが元気になったのはお肉を食べることができたからなのです!絶好調です!

え?一人で歩けって?

ちっちっちー、甘いですね。とーーーっても甘い。角砂糖に砂糖をかけたものよりも甘い!

この歩く椅子はとっても便利なのです!


「もの呼ばわりするんじゃねよっと」


「うぉあ?!!」


なんてひどい。乙女を地面に振り落とすなんて……。


「元気なら歩きな」


「しゅん……」


仕方なく自分の足で歩き始めたリアナは改めて都市タリアを見渡す。

外から見えた黒色の円柱は筒状になっていて、中は中心へと向かって階段状に上っていく。そしてその中心の高い位置には大きな二本の巨大な角が聳え立っている。


「あの角おっきいですね!」


「あれは角じゃなくて都市タリアの城だな、んーと『昔この壁に囲まれた地に住む大魔獣は英雄オルゴによって討伐さた。そして人が中に住むことになる際に英雄の偉功を後世に伝承させるため、大魔獣の2本の角を加工して城として使用している』だってよ」


「いつの間にそんなパンフレットもらってるんですか!」


「りっちゃんが骨付き肉に夢中になっていた時だな」


「―――仕方がないじゃないですか…久しぶりの食べ物だったし」


ほんとにペコペコだったんですからね!

お肉食べたら疲れがどっと来てるような……

うぅ……早く休まないと。ってあれ?


「とりあえずとまれそうなところ探すぞ――――――りっちゃん?」


ドゥインは後ろを振り返り、そこにいるはずの赤髪金瞳のフードを被った少女がいなくなっていることに気づく。

そばを離れるにしてもさすがに急すぎる。近くの屋台に目を配らせても食べ物に釘付けになっているリアナの姿はない。


「これは……」


リアナが立っていたと思われるところに一本のナイフが刺さっていた。

これは鍛冶職人が作ったものではない。高度な火水土の魔法の組み合わせで作られたナイフだ。

ドゥインは前にも一度、このナイフを見たことがあった。


―――――まさか、あいつが……やはり生きていたのか?




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




「おかしいなあ」


急に周りが暗くなった。

リアの前を歩いていたドゥインさんの姿がない。周りにあった屋台とかおいしい食べ物の匂いもすべてなくなった。

暗闇で何も見えないせいか、息が苦しくなってきた気がする。でも呼吸はしっかりできている。

何だろう、苦しい。

あ、音だ。自分の体内の音が聞こえる。自分が出した音が体を伝って耳に入ってくる。これがリアに圧迫感を感じさせている。

心臓の音、胃が食べ物を消化する音、筋肉の軋み、呼吸の音、唾をのむ音すべてがリアナの耳に収束する。

気持ち悪い。早くここから出ないと気が持たない。


―――その瞬間暗闇から解放され、部屋が現れる。


「ようこそお嬢様。いや、はじめまして、強欲の龍ウイヴルの第1子であるリアナ・ラドラお姉様。私はあなたの弟にあたるニバリー・ラドラと申します」


明らかにリアナより年上に見える長身痩躯で前髪の赤い男が薄く笑いかける。





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