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8.アンドリューの告白

エレンとの食事は予想以上に楽しかった。彼女も楽しめたかどうかは分からない。食事中は切り出せなかったが、あいつが戻る前にエレンにも話しておくべきだと思い、帰宅後部屋に来るよう伝えた。ドアを開けておくのでノックは不要だと言って。


そっと入って来たエレンは緊張した面持ちだ。まだ俺のことを警戒している、最初に脅かし過ぎたのを後悔する。あいつの後妻に入る女なんて伯爵という地位か財産目当ての悪女と決めつけていた。

夜も更けているが、夜着ではなく部屋着で上着も羽織っている。俺を誘惑するつもりがないのが分かって残念だ。近くで見てきたエレンは純真で正直だ。間者と疑ったのは申し訳ないと思っている。


    ◇ ◇ ◇


家族と離れ寄宿舎で暮らしていた12の年、突然両親の訃報が届いた。領地の屋敷が火事になり、逃げ遅れたと言うのだ。思慮深い父と母がそんな簡単に亡くなるなんて信じられない。祖父母は他界し、兄弟はいない。ひとりぼっちになった悲しみで自暴自棄になり、その頃の事はよく覚えていない。


伯爵の家督を継ぐ権利が認められる15の年までは後見人が必要とされる。後見人はいつのまにか遠縁のジェームズという男に決まっていた。男爵らしいが、会ったこともない男だ。どうでもいいとしか考えられず寄宿舎から領地に帰りはしなかった。


1年後領地に残っていたウィリアムからジェームズに伯爵位を乗っ取られたことを知らされた。王都のタウンハウスにあった家印を持ち出されてしまったのだ。

悔しさで体が千切れそうだった。寄宿舎に籠り動こうとしなかった自分にも腹が立った。


俺を廃嫡するとバーフォード家が取りつぶしとなるので、とりあえず生かされている。

ウィリーに今は我慢の時ですと諭された。ウィリーはジェームズに協力的なふりをして、伯爵領を守ってくれている、力をつけて時期を待つのだ。


それからは別人のように社交に時間を費やした。学校では意識して力のある家の友人を選び、卒業後の軍役の間につてを得て王宮の事務官になることができた。ジェームズに警戒されないよう、領地には一切入ってないことを装い、ウィリーやレイと密かに連絡を取り合った。

王宮で5年勤めあげた結果、官僚や一部の王族とも懇意になった、もはや力のない少年ではない。


そして今、敵はのんきに国外にいる。役所や教会に通い必要な書類を揃えることができた。領地ではウィリーが奮闘してくれている。後は家印を不正使用されたという訴えが認められれば決着が着く。王宮議会の書状を持ってあいつの所に踏み込んだら、どんなに驚くだろう、その日が来るのが楽しみだ。



なるべく言葉を選び淡々と伝えたつもりだったが、エレンは真っ青になり震えている。握りしめた拳を見てそれは恐怖ではなく、怒りのせいだと知った。


「アンドリュー様は…一人で…」

エレンはずっと泣けなかった私の代わりに泣いていた。

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