6.伯爵のお出かけ
いつものように厨房で朝食の支度をしていると、朝から来客があったらしくなんだかざわざわしていた。
アンに様子をたずねると、アンドリューはまだ出発していないらしい。
二人分の朝食を2階に運ぶ。声をかけたらすぐに下におりてしまおう。
執務室をノックするとドアを開けたのはアンドリューだった。
「おはようございます。隣に朝食を置いておきます」
「おはよう、ちょうど良かった。話があるから一緒に食べよう」
「私は下でいただきました」
「ではお茶だけでも」
今日も逃げられそうにない。
「伯爵とドロシーは治療の為に隣国に旅だったそうだ。パトリックと言う、執事見習いから情報をもらっているから間違いない」
「えっ、伯爵様は病気だったのですか」
「彼みたいな男には自業自得の病気だがね。それで君のことを『帰ったら放り出す』と言ってたらしい」
「エレン様…」
「大丈夫レイモンド、わかってたから。できればすぐ放り出してほしかったけど」
「あいつは君が執務を手伝っているのを知ってたみたいだ。どうせなら収支報告が終わってからと思ったのだろう」
私を働かせて元を取るつもりか、ホントにケチな男だ。
「隣国を往復するなら3週間はかかるはずだ。私はあいつが不在の間にやらなければいけない事が山積みでね。礼はするから引き続きレイモンドを補佐してほしい」
「承知いたしました。どうせ離縁届けの控えを受け取らないと、帰るわけに行きませんから」
手続き上は傷物になる私に次があるとも思えないが、婚姻と離縁の控え一緒に出してもらおう。
それから数日、アンドリューの姿を見かけない。領地に行ってるとレイモンドから説明された。
戻ってくると日中は外出して、夜は執務室に篭っているようだった。それなのに朝食を一緒に取ろうと誘ってくる、いったいいつ寝ているのだろう。
私はお使いの時に街を探検することにした。今後のことを考えるとしばらく働いてから帰りたい。求人の張り紙を探して、住み込みの仕事が見つかるといいのだけれど。一度ベティの店も訪ねてみようか、どこかで働きながら安い代金で代筆業をするのはどうだろう。田舎の学校しか出ていない自分の働き口は、少ない事が身に染みる。




