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5.アンドリュー・バーフォード

伯爵と顔を合わせる事なくなんとか2週間が過ぎた。

今日はインクと便箋を買いに街へ出かけた。通りがかった教会でバザーをやっていて、カヌレと白いハンカチも買う事ができた。お屋敷の糸を使えるから、久々に刺繍の練習もしたい。


カヌレにはミルクティーがいいかしらと呑気に考えていた私は伯爵邸の前で動けなくなった。

表玄関に馬車が止まっている。伯爵が帰ってきたと思うと気が重くなり、屋敷に入るのが嫌になった。

通用門でウロウロしてると、門番のサムが心配して声をかけてきたので仕方なく帰ることにした。


ロビーの様子を伺い、誰もいない隙に部屋に戻ろうとしたが、柱の陰にいた若い男性に呼び止められた。

「お前は誰だ」

びっくりして男性を見る。

明るい金髪に紫の瞳、長身にフロックコートがよく似合っている。そして虹色のオーラに包まれている。絵に描いたような上級貴族の青年だ。ゆらゆら揺れるオーラに見惚れて返事を忘れた。


「どうした、口が聞けないのか」

冷たい声に体が固くなる。

「私は…」


言葉が続かない。嫁いだとはいえ、妻と認められていない。私って何?

「まさか、新しい使用人か?」

まさかがつくほど伯爵はケチらしい。

「そのようなものです。テッドベル子爵家から参りました、エレノーラと申します」

震える手でなんとかカテーシーをする。

「ああ、あいつの後妻に連れて来られたという…若いな。いくつなんだ?」

あいつ?

「来月18になります」

「そうか、気の毒に」

それは伯爵と私、どちらに向けた言葉なのだろう。

「ここに居るなら、伯爵夫人と名乗ればいいだろう」

「妻とは認められてないと思います、初日に役立たずと言われましたから」

青年はちょっと考え込んでいるようだ。


「色々失礼した、すまない。私はアンドリュー、バーフォード伯爵家の嫡子だ」

態度からそうだとは思ったが、伯爵と似ているところはひとつも無い。そして口調が少し柔らかくなったのは何故だろう。

「ご丁寧にありがとうございます。レイモンドに渡す物があるので失礼いたします」

「私も彼に会いに行くところだ、一緒に行く」

「ご用事でしたら、私は後ほどうかがいます」

「いや、君にききたいこともあるし、同席してくれ」

う〜ん、この流れだと私が無理に後妻に入ったと思われているよね。どうやって父を騙したとか責められるのかしら。泣きたい、逃げたい…


逃げる口実も見つからず、執務室でアンドリューとお茶を飲む事になった。

詰問されるのかと身構えていたが彼の態度は優しく、正直に支度金という名の金で買われるように嫁いできたこと、初日に怒らせてから顔を合わせてないことを説明した。


レイモンドは私の字が綺麗で手順を理解しているので、手紙の清書も書類の記入もとても頼りになると褒めてくれた。

アンドリューは黙ってきいている。そしてこう告げた

「私は伯爵と顔を合わせたくないので明日には立つ、レイモンドへの協力を感謝する」


親子の仲が悪いのもよくある話だ、私はお茶のお礼をいい自分の部屋に戻った。

部屋へ戻るとついアンドリューのことを考えてしまう。彼のような美しい貴族に会うのは初めてだった。

でも父親の後妻というだけで、私はアンドリューには迷惑な存在のはずだ、最初の冷たい言葉を思い返すと悲しくなり夜中々眠れなかった。


他の作品との兼ね合いで、名前をアンドリュー・バーフォードに変更しました。

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