23.残念な魔法?(最終話)
アンドリューとエレノーラの結婚式はテッドベル領の小さな教会で行われた。
友人達と親戚と王都からやってきたバーフォード家の使用人も参列してとても賑やかな式だった。
その夜の終わりのない宴席から抜け出して、2人は新郎新婦に用意された部屋に落ち着いた。
「エレン、こんな時に考えごと?」
「思い出したくないけど、2度目だなと思って」
「エレンの純潔は守れたし、俺も命を狙われずに済んだし、不能の魔法を習得しててよかったよ」
「命を?」
「ジェームズに子供ができたら、俺を殺して子供を俺の子と偽って届けて育てるつもりだったみたいだよ」
アンディはさらりととんでもない事を言い出した。
「聞いてない…その魔法、単なる嫌がらせかと思ってた」
「あの時は、あまりエレンを怖がらせたくなくて」
アンディが無事で良かった、エレンは初めて残念としか思えなかった魔法に感謝した。
「あいつらの話をするのは今日で最後にしよう」
だいたい初夜に相応しい話題じゃないしねと耳元で囁かれ、エレンは真っ赤になった。
それから深い口づけをされて、エレンはアンディにすべてを委ねた。
◇ ◇ ◇
数年後、エレンとアンディはエレンの妹リディの結婚式に参列するためテッドベル領に来ていた。4歳の長男レナードと2歳の長女ヴィクトリアも一緒で、大きく建て替えられたテッドベル邸に滞在している。
バーフォード家の執事見習いのパトリックを、手伝いと修行のためテッドベルに派遣したら、リディと恋仲になり婿入りが決まった。レイモンドはまた新しい執事を鍛えなければと嘆いていた。
テッドベル領はずいぶん豊かになった。アンディの拡張した絹織物の工房に絹糸を納めたりと、バーフォード領との取り引きが増えたおかげなので、今回の婚姻は両家に大歓迎だった。
レイモンドもメイドのアンと結婚した、まだ子供がいないのでアンは私の侍女として、レイモンドは家令見習いとして領地と王都の行き来に付き合ってくれている。アンディは2人の結婚祝いに男爵位をプレゼントした。曰く、男爵位くらいなら金でなんとかなる、そうだ。第二王子を名前で呼んでたこともあるが、アンディの謎の部分は知らないままでいると決めた。
アンディの家族を増やしたいという私の野望は着々と実現している。子供たちは本当に可愛いのであと2人くらいほしいと思うが、アンディはお産の度に心配で死にそうになるから2人でも充分だと言われている。
「エレン、夕食の用意ができたそうだ」
アンディが自ら呼びに来てくれた。
「はい、子供たちは?」
「お義母さんが下で本を読み聞かせてくれてる」
「父も母も2人に夢中ね。私は孫を産んだのが一番の親孝行だったみたい、アンディありがとう」
そう言うと、アンディに抱きしめられる。
「エレン、私の妻になってくれてありがとう。家族をくれてありがとう。幸せを教えてくれてありがとう」
「アンディ、愛してる」
「愛してくれてありがとう、俺も愛している、永遠に」
アンディとエレンは手を繋いで階下に降りた。抱きついて来る子供たちと、両親と妹とその婚約者に迎えられる。
その後もう1人家族が増え、バーフォード伯爵夫妻は生涯幸せに暮らしたのだった。
アンドリューは王宮勤務の際、第二王子のスパイ的な仕事をしていた裏設定です。
初投稿作で途中で拙作を投稿していいの?と悩んで中断しましたが、完結が練習と思い直し再開したので、投稿の完結作としては4作目になりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




