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22.バーフォード伯爵領

「ドロシーは過去にバーフォードのメイドをしていた。昔のカントリーハウスの放火についても自供したそうだ」

帰宅したアンドリューが疲れた様子で話しだす、エレンは息をのんだ。

「今回の9件の誘拐と放火の罪だけで極刑だ、ヤケになったのだろう」

「……」

「火を付けたのはジェームズだと言ってるらしいが…ジェームズも一生出れないだろう」


エレンはアンディを抱きしめる。

「結婚式を控えているのに、こんな話題ですまない」

エレンは首を振った。 

「まず、バーフォード領に行きましょう。ご両親のお墓とウィリアムさんに直接報告して、それから新しい生活を始めましょう」

「君が居てくれて良かった」

アンディはエレンの肩に顔を(うず)めてしばらく動かなかった。


   ◇ ◇ ◇


馬車で2日かけて、バーフォード伯爵領に到着した。

レイの父でもある家令のウィリアムにとても嬉しそうに迎えられて、エレンはほっとした。伯爵領の屋敷はとても簡素で驚きを隠せなかった。

「あの火事の後、使用人はほとんど解雇してしまって、私とウィリーが執務を行うことだけに使っていたんだ。エレンと私たちの子供のために新しいカントリーハウスを建てようと思ってる」

「アンディ様の興した事業も順調です、領民の雇用にもなるので立派な邸を建ててください」

2人の間で話は進んでいるようだった。


アンディの両親の墓は丘の中腹にあった。名も知らぬ白い小さな花が咲き乱れ、とても美しい丘だった。アンディの母が好きだったというリンドウの花を供えて祈った。アンディは犯人の逮捕を伝えると、エレンを紹介した。

「エレンは私が失くした物を持っていて、惜しみなく与えてくれます。一緒なら必ず幸せになれます、どうか見守っていてください」

アンディが悲しい過去に失くした物を、一つ一つ埋めて行けたらとエレンは願った。


その夜通いの料理人が張り切って料理をつくり、アンディとエレンはとても満足していた。

寛いでいると、ウィリアムがお茶のお替りを持ってきた。

「お2人に話があります」

ウィリーはテーブルに2つの鍵の束を置いた。この屋敷には鍵の数ほどの部屋はない、ウィリーが話し出す。


「あの頃私は執事のラリーが勝手に書類を持ち出している事に気づいていました。それで王都に行く日にマスターキーを預けずに持って出ました。あの日にラリーにマスターキーを預けておいたら、旦那様と奥様は助かっていたのではないか。今でも、後悔しております。その贖罪とバーフォード家の為にお使えしてきましたが、職を辞して罪を償いたいと思います」


「ウィリアム…」

アンディは今の屋敷の鍵を手に取った。

「使用人達は自分が逃げるのが精一杯だったと証言したのだったな、意識のない者を運んで逃げるのは無理だったろう。不運な…要因が色々重なって父と母は亡くなった。それは犯人のせいで俺やウィリーのせいではない、俺はこれから幸せになりたい、その手助けをしてくれないか」


そう言って鍵をウィリアムに渡す。

「古い鍵は墓のそばに埋める、ウィリーにはこの鍵と新しい屋敷の鍵を預かってほしい」

「しかし…」

「ずっとアンディを支えてくださったこと感謝しております。私はまだまだ力が足りません、どうかレイモンドと共に引き続き私たちを助けてください」

「…はい」

ウィリアムは泣いていた。彼も今日まで泣くことが許されなかったのだ。

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