表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

12.更に思わぬ事態

数日後、執務室で満面の笑みを浮かべたアンドリューが待ち構えていた。物凄く嫌な予感がする。


私が椅子に座ると彼は一通の書類を広げた。

「昨日急ぎで作らせた」

「雇用の書類ですか」

「俺たちの婚姻の受理証明だ。届けにエレンのサインはあったから、俺のサインをして証人は箔がつくようフィリップ王子に書かせた。色々貸しがあるし」

第二王子に簡単にサインさせないでください!

いや、今の問題はそこじゃない。


「俺たち??」

「うん、俺とエレン」

「なんで勝手に婚姻届出しちゃったんですか〜〜」

「だってエレンは自分の意思で伯爵家に嫁いで来たよね」

「あの時とは状況が違います」

「それってあのジェームズならOKで俺だとダメってこと?」

「そんな事言ってません」

「本当の事言って、俺のことが嫌いなのか?」

「ち、違います」

「良かった、まあもう受理されてるから、ダメと言われても夫婦だけどね。ちゃんと毎月伯爵夫人への手当は払うから安心してくれ。俺はこれから領地に向かうから詳しい話は戻ってからにしよう」


嵐のようにアンドリュー様が去り、扉の横に控えていたレイモンドが入ってきた。

「レイ、知っていたわね」 

抗議の眼でレイを睨んだがレイは目を逸らし言った。

「何と申し上げたらいいか。ともかくおめでとうございます、奥様」

返す言葉が見つからず黙り込む。

「アンディ様は苦労してきたのでかなり屈折してますが、エレン様を気に入ってのことですから」

「まさか」

「本当です、アンディ様には心を許せる相手が必要です。ちゃんと話し合ってくださいね」 

「…善処するわ」

話し合いというか、説明してもらわないと気がすまない。


昼に食堂に下りると使用人たちが口々に

「奥様、おめでとうございます」

と声をかけてくる。お辞儀をして行きすぎようとするアンを捕まえる。


「まあエレン様、奥様らしくなさってください」

「そういうのいいから教えて、みんなは前から知っていたの?」

「うん、前の伯爵が川に流されたって聞いた後かな、アンドリュー様が爵位を取り戻してエレン様は伯爵夫人になるから、そのつもりで接するようにって」

「…私は今日初めて聞いたのだけど」

「ええー!そうなの?でもアンドリュー様なら見た目もいいし、仕事もできるし文句ないじゃない。今度はちゃんとした伯爵夫人様よ、おめでとう。二人だけで執務室にいても、邪魔しないようみんなで気をつかっていたのよ」


いや、思い切り邪魔してくれてよかった。

「ただ一緒に仕事してただけ、甘い関係じゃないの」

「アンドリュー様の片思いかな」

「ありえない…」

「エレン様は魅力的よ、自信を持った方がいいわ。それに頭もいいと思う、執務室の書類なんて私には呪文みたいに見えるもの」

慰めるようなアンの言葉に私は力なく微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ