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11.雇用契約

エレンと入れ違いにレイモンドがアンドリューの部屋に入ってきた。

「アンディ様」

「どうした、レイ?」

「エレン様は顔色が悪かったですよ。純真な女性を苛めないでください」

「苛めるつもりはない、感謝しているからね。エレンの実家には充分な援助をする予定だ」

「それならいいですが…」

「ただもっと甘えて欲しいとは思ってる」

「エレン様は駆け引きには向かないと思いますが」

「分かっている」


    ◇ ◇ ◇


ベッドに横になってこれからの事を考える。アンドリュー様は希望を叶えると言ってくれたが、彼も私もジェームズの被害者だし後見人の義務も消えた、甘える訳にはいかないだろう。

ただこのまま帰ってもテッドベル家の窮状は変わらない、王都の働き口を相談してみよう。そう決めると、私はやっと眠りに落ちた。


食堂で料理人の作った朝食をとり、執務室でメイドがいれたお茶を飲む。レイモンドがメイドを下がらせたので私は話を切り出した。

「考えたのですが、王都で働いて貯金ができてからテッドベル家に帰りたいと思います。バーフォード家で働いていた事にして、紹介状を書いていただけないでしょうか?家庭教師かメイドの職につけるように。それから、フローラの店で作った服を何着かいただけたら…」


「それだけ?」

アンドリューの口調は不機嫌だ、まずかった?

「もっと頼ってくれてもいいのに、エレンはまだ俺のことを信用してないのだね」

「信用してないわけではないです、伯爵家と無関係なのにこれ以上甘えられないかと。すみません、服はいいです」

「服は贈り物だと言ったはずだ。全部君の物、売ろうと自由だ」

考えていることは見透かされていたようだ。


「働きたいという希望はわかった。俺が君を雇いたいと思う。仕事は今までと変わらない、前金も払おう」

その場で書いた小切手を渡され、額をみて固まった。

「こんなに多すぎます」

「今は慎重に動きたいので、執務に知らない人間を入れられない、エレンの協力が必要だ。ジェームズもバーフォード家の名前を使い迷惑をかけている。慰謝料と思い受け取って、テッドベル家に送ればいい」

「…ありがとうございます」

これだけあれば妹のドレスを仕立て、牧場の柵を直して、領地に種芋を配ることもできる。アンドリューが神さまに見えて来た。


「今の部屋はそのまま使ってくれ。下に移られると俺が不便になる」

伯爵夫人用の部屋から使用人部屋に移ろうと思っているのもお見通しのようだ。私にとってアンドリューは謎だが、向こうは私の考えていることが全て分かるようでなんだか悔しい。


「俺はこれから王宮に行く、遅くなるだろうから夕食は不要と伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

小切手を送る手筈に気を取られていた私は、楽しそうに私を見つめるアンドリューの視線に気がついていなかった。

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